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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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47話 洞窟

フランツは、勝ち誇ったような笑みを漏らしながら脳内シュミレーションを終え、意気揚々と馬車のドアを開けた。


「ヒッ・・・」


フランツは目を瞠り、声にならない叫びを上げる。


「な、なぜ・・・?」


ジェフの二つの青い目が、ギロリとフランツを睨んでいる。


「やあ、フランツ、花の美しい庭園に行くんじゃなかったのかい? 催眠香まで用意して・・・。」


右手に催眠香の甘い香りが漂う香炉を持って、ジェフが問う。


「ウッ・・・」


言葉を失ったフランツを睨みながら、ジェフはゆっくりと馬車を降りた。


「ローズはどこだ?」


俺がジェフを運ぶ予定だったが、この際だ、ジェフが自分の足で中に入ればいいんだ。


「ロ、ローズは、・・・こ、この洞窟の中にいる。」


フランツは洞窟を指さした。


ジェフがローズのところまで行ってから、爆薬を投げ込めばいい・・・


ところが、指さす手首をガシッとジェフに掴まれた。


「ウッ・・・」


振りほどこうにも、ジェフの力はすこぶる強く、振りほどくことができない。


「お前も一緒に来るんだ。」


フランツは、半ば引きずられるようにして、一緒に洞窟の中に入って行く。


こうなったら、ジェフが俺の腕を離した隙に逃げて、爆破させるしかない・・・


フランツは諦めて、ジェフと一緒に洞窟の奥へと進んでいく。


洞窟の一番奥は光が届かず、灯りがなければ人間には暗くて何も見えないが、ジェフにははっきり見えている。


その場所には、まだ目覚めぬローズが地面に寝かされていた。


ジェフはフランツを離し、手足を縛られているローズを抱き上げた。


今だ!


フランツは、洞窟の出口目がけて走り出した。




ちょうどその頃、メリッサは自室でお茶を飲みながら、女神像が装飾されている豪奢な時計を見ていた。


国一番の腕利きの時計職人に作らせた時計は、一秒の狂いもなく時を刻んでいる。


「もうそろそろね。・・・バカなフランツ・・・、あなた一人でやり遂げるなら、こんなことしなかったのだけれど・・・、私に関わらせたあなたがいけないのよ。」




フランツは暗い中を闇雲に走り、何度も転びながら出口を目指した。


だが、もうすぐ出口だと思った瞬間、火が点いた爆薬が投げ込まれた。


えっ? 


それが何なのか瞬時に判断したフランツは、慌てて地面に伏した。


ドッカ―ン!


爆音が響き、ガラガラと土砂が音を立てて崩れだす。


フランツはすぐに起き上がろうとしたのだが、ドンと鈍い音とともに、猛烈な激痛が下半身を襲った。


「うわー!!」


フランツは思わず大きな叫び声を上げた。


激痛の原因は、天井から落ちてきた大きな岩の塊だった。


腰から足にかけて重くのしかかった岩のせいで、フランツは身動きがとれなくなってしまった。


「ううっ、助けてくれー」


叫んでみても、誰からの返事もない。


一方、ジェフはローズを抱き上げたまま、出口へと向かっていた。


爆発音と共に、上からバラバラと崩れた土砂が落ちてくるが、土砂や岩の塊は、レーザービームを目から発射し、ぶつかる前に粉々に砕きながら、前に進んだ。


出口近くで、動けなくなったフランツを見つけた。


フランツはジェフの足音に気付き、手を伸ばす。


「ジェ、ジェフリー、助けてくれ。お願いだ。助けてくれー!」


泣いて縋って助けを乞うが、ジェフはフランツを冷たい視線で一瞥しただけで、無言で通り過ぎていく。


天井からはバラバラと土砂と岩が崩れ落ち、フランツの身体を覆っていく。


「ジェ、ジェフリー、俺が悪かった。お願いだから助けてくれえ。」


ジェフの背中に叫んでも、ジェフは振り返ることもしない。


洞窟の入り口は落ちてきた土砂や岩で塞がれていたが、ジェフはレーザービームで破壊し、人が一人通れる穴を開けて、ローズと共に洞窟から出た。


その後もガラガラと崩れる音が続き、結局ジェフが開けた穴も塞がれてしまった。


ジェフは乗って来た馬車にローズを乗せて王城へと急いだ。


連絡を受けた騎士たちが、洞窟からフランツを救い出したが、残念ながら、フランツは既に帰らぬ人となっていた。




この事件は全てフランツの自作自演で、ジェフに対する嫉妬の末の凶行であると判断された。


フランツの死という彼のシナリオにはない結末を迎えてしまったが、おそらく慌てたフランツが爆薬の扱いを誤ってしまったのだろうと結論づけられた。


フランツの父親であるオルトマン伯爵の処遇について貴族会議で話し合われたが、息子の愚かな行為をオルトマン伯爵はまったく知らなかったことを強調。


罪は息子にあり、肝心の息子が死んでしまったことを考慮し、オルトマン伯爵の爵位剥奪はなく、多額の罰金刑だけで済むことになった。


この貴族会議で、シャロン侯爵の意見が通ったことは言うまでもない。




フランツの葬儀はひっそりと行われた。


幼馴染のメリッサも葬儀に参列し、墓石に花を手向けた。


愚かなフランツ・・・、結局、あなたの思う事は何一つ成されずに、あなただけが死んでしまったのね・・・。


まあいいわ。私が関わっているってことは、もう誰も知らないのだから・・・。


数少ない参列者の中に、エリオットもいた。


フランツと一緒にアーサーの友人に選ばれた一人である。


子どもの頃から、二人はアーサーと一緒に遊んだ仲間だった。


「ううっ、フランツ・・・、何でこんなことを・・・。」


エリオットの黒い瞳から大粒の涙が零れ落ちる。


「涙をお拭きなさい。」


メリッサが、自分のハンカチをエリオットに差し出した。


「ああ、メリッサ、ありがとう。」


「とても残念なことだけど、フランツがしたことは許されることではないわね。」


「メリッサ・・・。」


冷たく言い放つメリッサを、エリオットは何とも言えない悲し気な目で見ていた。




それから数日後、王城では、ジェフとアーサーがお互いの情報を共有するために、護衛騎士のジョンとケイレブを交えて話し合いをしていた。


「暴走馬に使われていたのは王の実だと思われます。おそらく、あの実の成分に馬を興奮させる効果があるのでしょう。そして、あの馬に王の実を食べさせたのはフランツでした。」


「やはりそうか・・・。」


「それからフランツが爆薬の使い方を誤ったことになっていますが、それが事実かどうかはわかりません。」


「それはどういう?」


「爆発する瞬間を私が直接見たわけではないのですが、洞窟から出た際に、逃げる男を見たのです。爆破したのは、その男である可能性も考えられます。」


ローズを抱えて洞窟の外に出たジェフは、一瞬ではあるが、逃げる男の横顔を見た。


その男は、すぐに茂みに隠れて見えなくなってしまったが、画像は保存している。


「では、次は私が・・・」


手を上げたのはジョンである。


ジョンはゴールドクラウンに何度も通い、その度に酒を注文し、酒に異常が無いか確かめていた。


「昨日、出された酒が、いつもと違うように感じたので、こっそりと持って帰りました。」


ジョンは小さな水筒に入れた酒を、皆の前でグラスに注いだ。


「少し飲んだだけなのですが、何となく、気が大きくなったと言うか・・・、次は勝てると、変な自信が湧いてきたのです。そこをぐっと我慢して少ししか賭けませんでしたが、もっとたくさん飲んでいたら、あの誘惑に勝てたかどうか・・・。」


ジョンが酒の効力を皆に聞かせている間、ジェフはグラスに入った酒を目で分析していた。


―分析完了:異物混入有りー


「では、少しいただけますか?」


次にジェフは、ほん少し酒を口に含んだ。


―酒の成分分析中・・・分析完了:成分の中にあの男と同じ薬物反応有り― 


「思った通り、この中には、王の実の成分が含まれているようです。この酒は大きな証拠となるでしょう。ですが、我々が王の実の証拠を掴んだことはまだ秘密にしておいた方が良いと思います。」


「ああ、そうだな。公になってしまったら、おそらくシャロン侯爵はオルトマン伯爵を切るだけで、自分は知らぬ存ぜぬを貫き通すだろうから。」


そのとき、ドアをノックする音がした。


「ああ、間に合ったようだな。入っていいぞ。」


アーサーの声で、ノックをしていた者が中に入って来た。


「殿下、ただいま戻りました。」


入ってきたのは、シュド王国に捜査に行かせたトリーだった。

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