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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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45話 真相

ジェフが生き返った翌日は、王都はそのニュースで持ち切りで、ほとんどの人が喜びの声を上げていたのだが、地団駄踏んで悔しがっている男もいた。


その男フランツは、オルトマン伯爵家の自室で、イライラしながら部屋の中をぐるぐると落ち着きなく歩き回っていた。


そばにいてイライラをぶつけられてはたまらないと、メイドはお茶を置くと、さっさと部屋を出て行く。


フランツは、メイドのその態度も気に入らない。


まるで馬鹿にされたように感じて、さらにイライラをつのらせる。


「くそっ、何故死なない! 上手く行ったと思ったのに・・・。」




話は馬の品評会の前日に遡る。


一度目の殺害計画が失敗したフランツは、次の手段に馬を選んだ。


ローズとスザンヌが、馬の品評会に行く情報は掴んでいた。


ならば、その場を利用してやる。


馬で殺せるかどうかなんてわからないが、大ケガぐらいは負わせられるんじゃないか?


フランツの心の中に、メリッサになじられた言葉が引っかかっていた。


「ほんの少しのけがも負わせられないなんて、あなた、やる気はあるの?」


嫌なことは人にやらせて、自分はいつも綺麗なまま。


それなのに、人の失敗は馬鹿にする。


最低なヤツだと思うのに、結局はメリッサの言いなりになる自分が嫌になる。


ふん、今度は馬鹿になんてさせない。


フランツは王の実を仕込んだニンジンを用意し、自分のカバンに入れた。




王の実が王の実と呼ばれているのは、王様の気分を味わえるからというのが通説なのだが、実は本当の理由は別のところにある。


ただ、それは今の世に伝わっていないだけなのだ。


昔、まだこの大陸の南部が覇権争いで乱れていたころ、シュド王国の王が頭角を現し、長い戦乱の末、南部を統一した。


戦いに勝利するために、王は、当時誰にも知られていなかった王の実を使った。


シュド王国の極限られた場所でしか育たないその実の効果を、王は偶然知ることとなり、戦争に利用することにしたのだ。


王は戦の前に、兵士たちに王の実を食べさせて、恐れを知らぬ勇猛果敢な戦士を作り上げた。


だが、それだけでなく、獣にも王の実を食べさせた。


獣に一定以上の王の実を食べさせると、興奮し、わき目もふらずに一直線に走りだす。


その勢いは王の実の効力が切れるか、もしくは何かにぶつかって死ぬまで続くのである。


王は、牛や豚に王の実を食べさせ、敵陣を攻めさせた。


隙間なく大量に放たれた牛や豚が、怒り狂ったようにまっすぐに、全速力で走って攻めてくる。


恐れをなして逃げ惑う敵兵を、次は王の実を食べた兵士が襲う。


この戦法は功を奏し、やがて南部はシュド王国に統一された。


だが王は、自分以外の者が王の実を使うことを禁止した。


そして、獣を使う戦法を真似されないように、文献にはその事実は記さず、子孫にも伝えなかった。


時が流れ、現在では、王の子孫でさえ獣に対する効果は知らない。


だが、当時、王の実の管理を任された一族の、ごく少数の子孫のみが、その事実を知っているのである。




翌日、フランツは馬の品評会に到着すると、まずスザンヌを探した。


ジェフとローズが楽し気に馬に乗っているのを見たが、肝心のスザンヌがいない。


しばらくすると、スザンヌが戻って来た。


どうやら一人で乗馬を楽しんできたようだ。


疲れたのか二人は木陰に座り、休憩をしている。


ちょうど馬が繋がれている場所からは、二人の後姿が見える。


この馬なら、まっすぐに走れば二人にぶつかる。


今がチャンスだ!


ニンジンを食べさせるのが大人の男だと目立ってしまう。


ここは、子どもに任せる方が良い。


フランツは、用意されたニンジンを取りに来た男の子に、自分が持って来たニンジンを渡した。


「ぼうや。このニンジンを、あの馬に食べさせてあげなよ。」


男の子は喜んでニンジンを受け取り、言われたとおりに馬に食べさせた。


効果が出るのは五分後。


フランツは遠く離れた場所で、時計を見ながらその時を待つ。


「ヒヒヒーン!!」


馬が興奮して大きな鳴き声を発した。


そばにいた子どもたちが驚いて馬から離れた瞬間、馬は勢いよく走りだす。


繋がれた杭を引き倒し、杭から綱が外れて自由になった馬は、ますます速度を上げて一直線に走る。


やった! あいつらにぶつかる!


と思った瞬間、スザンヌはローズに突き飛ばされ、ローズはジェフに庇われて、そのまま馬は走り抜け、最後は大木にぶつかって倒れた。


「チッ・・・、またあいつが邪魔しやがった・・・。」


悔しい思いで倒れたジェフを遠くから見ていたら、様子がおかしい。


起き上がらない。


すこしの間の後、ローズの叫び声が聞こえた。


もしかして、ジェフリーが・・・死んだ?


ジェフの周りに多くの人が寄って来て、口々にジェフの死を告げている。


やった! 二人にけがを負わせることはできなかったが、目の上のたんこぶだったジェフリーを消すことができた。


あいつがいなくなっただけで、ずいぶんと仕事がやりやすくなる。


もう邪魔するヤツはいない、そう思っていたのに・・・。




「チクショー、何で死なない? あいつは不死身か?」


フランツはテーブルの上に置かれていたティーカップを持つと、思いっきり壁にぶつけた。


ガチャンと激しい音と共に、お茶と陶磁器の破片が辺り一面に飛び散る。


「フランツ、荒れてるわね。また失敗したんだもの。当然よね。」


メリッサが部屋の中に入って来た。


「それにしても、お茶に当たるなんて最低だわ。」


「うるさい! それもこれも、お前のせいだろ!」


フランツが、珍しくメリッサにぶつけた暴言に、彼女は不快感を露わにする。


「どうして私のせいになるのよ。すべてはあなたが計画した事なのに・・・。とばっちりもいいところだわ!」


フランツは言い返そうと思ったが、言い返す言葉が見つからない。


メリッサの言い分が、確かであることに変わりはないのだから・・・。


「ふふっ、あなた、いつもジェフリーに邪魔されているわね。まずはジェフリーに焦点を当てた方がいいんじゃない?」


「それはそうだが・・・」


「ねえ、フランツ。絶対に失敗しない方法を教えてあげましょうか?」


メリッサが意地悪い笑みを浮かべる。


「はあ? 失敗しない方法? フン、そんな方法があるのなら、教えて欲しいもんだね。」


半ばやけくそ気味に言うフランツに、メリッサはいたって真面目に囁く。


「本当に聞きたい? でも、私から聞きたいのなら、覚悟が必要よ。」


「はあ? 何をもったいぶって・・・、今までだって覚悟を決めてやってきたんだ。何を今さら・・・。」


「そう。じゃあ、教えてあげる。」


メリッサの目が、蛇のようにギラギラと光る。


「殺そうと思うからダメなのよ。殺せば、必ず誰がやったか調べられる。でも、突然消えてしまったら? 行方不明になって、事故かどうかもわからず、生きているのか死んでいるのかさえもわからない状態で、犯人を捜せる?」


「メリッサ・・・、いったい何を言って・・・」


「フランツ、耳を貸して・・・」


メリッサは周りに誰もいないことを確認してから、フランツにある方法を教えた。

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