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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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24話 次の依頼

メリッサのことを聞かれたローズは、嫌なことを思い出し、少しむっとした表情になった。


「俺が入場する前に、一悶着があったと聞いているが・・・」


殿下はそんなことまで知っているとは・・・


それなら、思ったことを全部話してしまおう!


ローズがそう思って口を開きかけたとき・・・


「最悪ですね。」


ジェフが、はっきりと言い切った。


えっ? そこまで言う?


腹が立ったのは本当だけど、あの美貌にあの身分、仮にも婚約者候補第一位のメリッサですよ・・・。


ローズは、ハラハラしながらジェフを見る。


だが、アーサーはどことなく嬉しそうだ。


「して、その根拠は?」


「取り巻きの三人に、ローズをいじめるように仕向けました。」


「ほう・・・。」


アーサーは少し驚いたような顔をしたが、これには、ローズも驚いた。


取り巻き三人にいちゃもんをつけられたのは事実だが、メリッサが裏で糸を引いているとは思ってもいなかったのだ。


メリッサのような大物が、自分のような小物を相手にするとは思っていなかったからなのだが・・・。


「だが、メリッサが仕向けた証拠はあるのか?」


「私がこの目で見たのです。メリッサは、取り巻きに、あの子に身分のほどをわからせてやりなさい、と言ったのです。」


そのとき、ジェフはローズのために飲み物を取りに行っていたのだが、その間も会場内の情報収集は続けられている。


ジェフの入力した情報の中に、メリッサが取り巻きに話をしている動画が含まれていた。


その画像を拡大し、口の動きを見れば一目瞭然、何を話しているのか百パーセントわかるのだ。


「なんと、そなたは遠くからでも人の話を聞くことができるのか?」


「聞いたのではありません。唇の動きで何を話しているのかわかります。」


「それはすごいな。」


アーサーは、いたく感心したようである。


「ローズ嬢はどうなのだ?」


ローズにも矛先が回ってきたので、ローズはここぞとばかりに思ったことを口にする。


「私は、メリッサ嬢に無視されました。私が挨拶をしようとしたら遮られるし、ジェフだけに笑顔を見せて、隣にいる私のことは眼中になかったようでした。人によってあんなに態度を変えるような人・・・、未来の王妃にふさわしくありませんわ!」


ちょっと言い過ぎたかも・・・と思ったが、自分は姿を見せずに汚れ役だけ他人に押し付けるような人には、これくらいがちょうど良いかも・・・と思い直す。


アーサーはローズの話を聞き、ふふっと笑みを浮かべている。


そして、ぼそりと呟いた。


「未来の王妃にふさわしくない・・・か・・・。」


ローズは声を出さずにうんうんと頷くのだった。


「第三候補のカロリーヌについてはどう思ったのだ?」


その問いにジェフが先に答える。


「おそらく殿下に興味を持っていないように見受けられます。」


「それも表情解析の結果か?」


「そうです。八十パーセントの確立です。」


「私は、彼女と話をしてみて、殿下に興味がないと言うよりも、結婚そのものに興味がないように思いました。舞踏会にも、父に言われて渋々来たのだと言ってましたから・・・。」


「そうか。二人とも貴重な意見をありがとう。」


ええっ? 殿下がありがとうって言った。


やっぱりこの人、いい人なのかも・・・


初対面が最悪だったローズにとって、アーサーのことを思い直す一言であった。


「実はもう一つ、頼みたいことがあるのだが、それも聞いてもらえるだろうか。」


アーサーの立場なら、こちらの都合を聞かなくても、命令をすれば済むことなのだが、わざわざ都合を聞いて来ることを考えると、今の方がアーサーの本来の姿なのかもしれない・・・。


ローズのアーサーに対する好感度はさらに上がる。


「私はローズさえ良ければ・・・」とジェフが答え、ローズも「もちろんですわ。」と答えた。


アーサーが依頼事項を簡単に説明し終わると、今回の面談は終了となった。


「最後に、こちらからもお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」


帰り際にジェフがアーサーに問う。


「何かな?」


「よろしければ、王城の庭の散策をお許しいただきたいのです。」


「ああ、許可しよう。警備兵にも伝えておくから、ゆっくり散策してから帰りたまえ。」




馬車から見るだけだった王城の庭園は、間近で見ると、花の一つ一つが生き生きとしていて、呼吸をすると甘い花の香りに満たされる。


ローズは、夢見ていたジェフと一緒に庭園の小道を歩くことが実現できて、自分はとっても幸せだと思った。


こんなに美しい庭園の小道を、愛する人と指を絡めて恋人繋ぎで歩いているなんて、まるで小説の中の一ページのようだとも思う。


「ねえ、ジェフ。庭を歩くことをお願いしてくれてありがとう。とっても嬉しかったの。」


「ローズが喜んでくれることが、俺にとっての最大の喜びだからね。」


ジェフは、いつも私の気持ちを最優先してくれる・・・。


ふふっ・・・


ローズはふと思い出し笑いをした。


「ローズ、どうして笑ってるの?」


「さっき、ジェフがメリッサのことを最悪だって言ってたでしょ。ちょっとそれを思い出しちゃって・・・。」


「ローズに危害を加える者は、誰だって最悪だよ。」


「私・・・挨拶を遮られたとき、腹が立って・・・、メリッサのこと、怒ってたのよ。ジェフも同じ気持ちだったんだなって思うと嬉しくてつい・・・」


―腹が立つ?・・・怒る?・・・ローズは同調を求めている―


「ああ、俺もあのとき、メリッサに腹が立って怒ってたんだ。」


「ジェフ、私のために怒ってくれて・・・ありがとう。」


ローズは、ジェフににっこりと微笑んだ。




翌日、アーサーに依頼された用事を実行するために、ジェフとローズは馬車で王城に向かった。


しかし、行先は、いつもの王宮ではなく、物資倉庫である。


倉庫の前で馬車を降りると、既に三人の使用人が小麦粉などの物資を荷馬車に積み込んでいる最中だった。


黒髪の使用人が顔を上げ、二人を見て言った。


「約束した時間にぴったりだな。」


ローズは、その使用人の顔を見て驚いた。


「で、で、殿下?!」


アーサーは慌てて唇にひとさし指を立てる。


「しっ、今、俺は使用人に扮しているんだから、殿下と呼ばないで・・・」


銀髪を黒いカツラで隠しているが、顔は紛れもなくアーサーである。


「わかりました。では、何とお呼びすればよろしいのですか?」


「アールと呼んでくれ。俺は使用人だから敬称はなしだ。」


「わかりました。アール・・・ですね。」


納得はしたものの、王族を呼び捨てにするなんて、なんだかとても悪いことをしているような気になって、どうもローズは落ち着かない。


「アール、私は何をすればよろしいですか?」


ジェフは全く動じることはなく、あっさりとアール呼びを完成している。


さすがだわ!ジェフ・・・


ローズは、ジェフに感心するのだった。


ジェフの問いに、アーサーは倉庫の奥を指さした。


「奥の部屋に使用人の服を置いているから、それに着替えてくれ。それから、荷物を積むのを手伝ってくれれば良い。」


昨日、アーサーに、物資を届けたい場所があるから、ジェフは力仕事を、ローズは見学希望の令嬢として来てほしいと依頼されたのだが、どこへ行くのかは聞かされていない。


とりあえず、ジェフは動きやすい服装で来たのだが、まさか使用人の服装に着替えるとは思っていなかったから驚きである。


馬車に乗り込むと、やっとアーサーは今から行く場所は、孤児院だと教えてくれた。


その孤児院は、アーサーの祖母である王太后が、私費を投じて始めた福祉事業である。


王太后の趣旨に賛同する貴族からの寄付金も、その運営費に充てられているのだが、三年前に、長年運営を任せてきた伯爵が不正をしていたことが発覚。


子どもたちの食費や医療費を減らして、その分私腹を肥やしていたのだ。


信頼していた伯爵に裏切られていたことを知った王太后は、ショックでしばらく体調を崩して寝込んでしまった。


新しく運営を任せる者には、誠実だと評判の男爵を選んだのだが、万が一にもまた不正が行われる可能性は否定できない。


そこで、王太后を安心させるために、アーサーが名乗りを上げたのだった。


「俺は尊敬する祖母を、これ以上悲しませたくなくてね。王族として視察をしても、おそらく表面を取り繕って不正は隠されてしまう。だから、物資を運ぶ際に、こうやって平民の使用人に変装して、視察をしているってわけさ。」


一緒に物資を積んでいた二人はアーサーの護衛騎士で、今、馬車と荷馬車の御者を務めていることも付け加える。


「それから、ジェフとローズ嬢の役割は、ジェフは使用人の一人で俺たちと一緒に行動を、ローズ嬢は孤児院に興味があり、寄付を考えている貴族令嬢だと思って行動して欲しい。」


「わかりました。・・・ア、ア、アール・・・」


アールと呼ぶことに、まだ慣れないローズであった。


話を聞いているうちに、馬車は孤児院に着いた。


洒落たデザインの鉄格子で作られた門扉越しに見る孤児院は、王族が直接関わっていると言うだけあって、建物は立派で清潔感があり、園庭も雑草が刈り取られ、花壇には花が植えられ、十分な手入れが施されている。


園庭には、子どもたちと一緒に遊びながら、見守り、世話をしている女性がいる。


ローズは、その女性の一人に見覚えがあった。


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