表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/110

19話 王の約束

マチスは一人目の妻と死別してから、傷が癒えるまで長い間独身を通していたが、グローリー侯爵家の継承者は必要で、妻の死から十年後の三十六歳の年に、十八歳年下の伯爵令嬢と結婚した。


だが、なかなか子宝に恵まれず、十二年後に、やっと待望の男子が生まれたのである。


ちょうどウイリアムの妃も、同じ頃に男子を出産。


ウイリアムの方から、是非とも、グローリー侯爵家の息子を、我が息子の遊び相手にと嘱望されたのだ。


尊敬する師の子どもが、遊び相手となり親友となり、ひいては将来の王の片腕となってもらえれば、どれほど素晴らしいことだろうとウイリアムは思ってのことだったのだが・・・。


残念なことに、マチスの息子ジェフリーは、子どもの頃から病気を繰り返し、とても王宮に連れて行くどころではなかった。


それ故、二十年前の約束は、自然と立ち消えたままになっている。


「先生のご子息は、病気が治ったそうですね。悪党を倒したと新聞に載っているのも読みましたよ。」


「はい。お陰様で、今ではぴんぴんしております。」


「では、二十年前の約束、実現してもよろしいですか? 先生のご子息に、私の息子の友人になってもらいたいのです。」


ウイリアムは期待を込めた目でマチスを見るが、マチスはウイリアムとは違って渋い顔のままだ。


「王太子殿下には、既に立派なご友人がおられるのでは? 子どもならいざ知らず、今から友人にと言われても、殿下が困惑するのではありませんか?」


マチスの問いに、ウイリアムの表情が曇る。


「息子アーサーには友人がいるにはいるのですが・・・、私から見て、どうやら人間関係が上手くいってないように見えるのです。心を割って話し合える友人がいないというか・・・。ですが、先生が育てたご子息なら、アーサーも上手く付き合えるのではないかと思うのです。」


なんとも勝手な先入観だとは思うが、国王と言えども、子を持つ親なのだ。


息子の心配は尽きないのだろう。


「わかりました。我が愚息に話してみましょう。仮に、友人になれなくても、きっと何かお役に立つことはあるでしょう。私が言うのもなんですが、息子ジェフリーは非常に優秀なのです。ははは、こういうのを親バカと言うのでしょうね。」




屋敷に戻ったマチスは、早速、ジェフを書斎に呼んだ。


「ジェフ、国王からの伝言なのだが・・・。ジェフに王太子殿下の友人になって欲しいそうじゃ。それで、三日後に殿下と会う場を設けるそうなのだが、行ってくれるよな。」


王太子の友人になれるという滅多にないチャンスを目の前にすれば、まずほとんどの人間は、驚き目を輝かせて喜ぶか、恐れ多いと尻込みするのだろう。


だが、ジェフは淡々と、マチスが思わぬ反応を示した。


「まずは、ローズの許可が必要です。」


尽くし型ロボットは、不正利用を防止するために、管理者の許可なく他者が用意したイベントに参加できないようにプログラミングされている。


管理者から遠く離れることも、しかりである。


「いや、いくらローズを愛しているとはいえ、別にローズの許可が必要なことではないじゃろう?」


困惑するマチスに、ジェフは相変わらず淡々と答える。


「お父さんは管理者ではありません。ローズの許可が必要なのです。」


「ふむ・・・、つまり私よりも、ローズの方が大切だと言いたいのじゃな・・・。まあ、それも仕方がないか・・・。お前の愛はそれほど深いのじゃな。では、ローズの許可をもらっておいで。」


ジェフは仕事を手早く済ませると、早速ローズに会いに行った。


ローズは、愛するジェフが毎日飽きもせずに会いに来てくれることが嬉しくてしかたがない。


今日はこれと言ってすることがなかったので、お茶を飲みながら楽しくおしゃべりすることにした。


「ローズ、王太子殿下と三日後に会うことになったんだけど、王宮に行ってもいい?」


「まあ、王太子殿下と? すごいじゃない。でも、どうして?」


「国王陛下が、俺に殿下の友人になって欲しいそうだ。」


「まあ、お友達に?」


ローズは目を丸くして驚いたが、王族にまで望まれるジェフのことを誇りに思うと同時に、ジェフが遠くに行ってしまいそうで、少し寂しさも感じる。


「すごいじゃない。殿下のお友達になるのね・・・。あっ、でも・・・、王宮に行くのに、私の許可なんて必要ないのよ。」


「そう言うわけにはいかないよ。ローズは俺の管理者だからね。」


「また、訳のわからないこと言ってる・・・。でも・・・、王宮かぁ・・・」


ローズは、王宮内に入ったことがほとんどない。


十六歳の年に、王室主催の舞踏会でデビュタントを果たしてから、訪れたのは二回ほどだ。


元カレのオルソンが、王室主催の舞踏会なんて堅苦しくて行きたくないというのがその理由だった。


王宮には三回しか行ったことがなかったが、門から王宮までの庭がとても美しく整備されていて、季節の花が生き生きと咲き乱れていたことを思い出す。


そして、その庭をジェフと一緒に腕を組んで歩いている姿を、うっとりと想像する・・・。


ジェフは、じっとローズの表情を見ている。


―ローズの表情解析中・・・解析完了:ローズは王宮に行きたいと思っている―


「ローズも、一緒に行こう!」


「ええっ? 駄目よ。友人になりたいのはジェフで、私じゃないわ。」


ローズは、ジェフに自分の心を見透かされて驚いたが、やはりここは我慢するべきだと思う。


―ローズの今までの行動分析中・・・完了:ローズは頼まれると弱い、人のために動くことを好む、可愛いのが好き―


「ねえ、ローズ、俺・・・、王宮なんて行ったことがなくて不安なんだ。一緒に行ってくれるととても心強いし、助かるんだけど・・・ダメかな?」


最後は子犬のように甘えた声を出す。


ズッキューン!


ああ、もう、ジェフ、心臓に悪いです。


その顔でその態度・・・はあ・・・


ローズの顔がポッと赤くなり、つい、言ってしまった。


「わかりました。私が案内してあげる。」


「やったぁ!ローズありがとう!」


ジェフは最後に、少年のような可愛い締めくくりの言葉も忘れない。




ローズを連れて行くと言っても、それは国王の許可がないと実現不可能だ。


ジェフは、ローズも一緒に行けるように、マチスに頼むことになる。


「お父さん、王太子殿下に会いに行きます。ですが、ローズも一緒に連れて行きたいのですが良いですか?」


マチスはおや? と不思議そうな顔をする。


ローズは夢見がちな娘ではあるが、常識は兼ね備えている。


一緒に行きたいなどと言うだろうか?


「それは、ローズが一緒に行きたいと言ったのかね?」


「いえ、違います。私が誘いました。ローズは断りましたが、王宮に一人で行くのは不安だから一緒に行って欲しいと、私が頼んだのです。」


「ふむ・・・なるほど・・・。それもそうじゃな。お前はまだ一度も王宮に行ったことがないし、作法についても不慣れだ。不安になるのも無理はない。国王に婚約者も一緒に行って良いか私から聞いておこう。」




結局、国王ウイリアムはジェフとローズの訪問を許可し、三日後、二人は王宮に向かった。


馬車に揺られている間も、ローズはドキドキして落ち着かない。


私が案内してあげるとは言ったものの、王城内にローズは三回しか入ったことがなく、王族と面と向かって話したことは一度もない。


昨夜からドキドキして眠れぬ夜を過ごしていた。


思い描いていた美しい庭をゆっくりと見る余裕はなく、馬車は王宮の入り口で止まったので、庭を歩くこともなかった。


王宮に着くと、事前に連絡を受けているメイドが、こちらにどうぞと案内してくれる。


案内してくれるメイドは、メイド服を着ていても、服そのものも上質で、所作にも気品が漂っている。


おそらく王宮勤めのメイドであれば、ローズよりもはるかに位が高い貴族令嬢なのだろう。


そう考えただけでも、廊下を歩くローズの足取りはぎこちなくなる。


案内された場所は、王族がプライベートで使用する応接室だった。


部屋の椅子に座るように言われてふかふかのソファに座っていると、メイドはこれまた優雅な所作でお茶を淹れてくれる。


「熱いうちに、どうぞお召し上がりください。」


メイドの言葉に一口飲んでみたが、緊張して香りも味もわからない。


ジェフはどうなのかと思って見ると、いつもと変わらない態度でお茶を飲み、しかも、お茶の感想を余裕で口にする。


「ふむ、この茶葉は南特産のサウザレーヌリーフですね。香りも味も深い味わいがある。美味しいお茶をありがとうございます。」


そばに付いているメイドがの顔が、ポッと赤くなった。


そうだ忘れていた。


ジェフはものすごいイケメンなのだ。


この顔で、こんな風に褒められたら、誰もが赤くなって当然だ。


「あ、あの・・・、ほ、本当に美味しいお茶ですね。あ、ありがとうございます。」


ローズも、ジェフのように余裕があるところを見せたくて、感謝の言葉を述べてみたが、残念ながら、少し言葉が詰まってしまった。


お茶を飲み、ようやくローズの緊張が少しほぐれたところで、王太子アーサーが現れた。


少し癖のある美しい銀髪に、深い紫色の瞳を持ち、均整のとれた目鼻立ちがとても美しい。


だが、何故かその美しい紫色の瞳には、敵意が微かに感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ