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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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14話 外伝『フローラの心臓3』喧嘩別れ

ドルトンの妻になることは、フローラにとって貧乏からの脱却で、家族にとってもこの上ない幸せになるのだろう・・・とは思うのだが、余りにも話が旨すぎる。


自分の父親よりも年上に見えるお金持ちの男性が、会ったばかりの小娘にここまで言うのだろうか?


それに奥様と別れると簡単に言うが、あの奥様が、とてもじゃないが、はいそうですかと簡単に別れるとは思えない。


そう思うと、余裕のある笑顔でこちらを見ているドルトンのことが、なんだか胡散臭く思えてくる。


それに、恋人のジルのことを考えると、このままドルトンの申し出に頷いてはいけないような気がする。


フローラは、ジルとの楽しい思い出を心に浮かべる。


昼休みに、公園で一緒に食べたランチ。


目の前に並べられた料理みたいに豪華じゃないけれど、ジルと一緒に食べると、楽しさと幸せのスパイスを効かせてとっても美味しかった。


二日毎に一番安い花を買いに来てくれるジルを、どれだけ楽しみに待っていたことか・・・。


会えたその日は、心がふわっと温かくなって、ああ、幸せって思う・・・。


私を幸せにしてくれるのは、ドルトン様? ジル? どっち?


ドルトンは、フローラが頷くのを待っていたが、なかなかフローラが色よい返事をしないので、少し積極的な行動に出た。


フローラの手を握り、その手を優しく撫でた。


「えっ?」


フローラは慌てて手を引っ込めようとしたのだが、ドルトンの握る力は思ったより強くて手を引っ込めることができない。


「ド、ドルトン様・・・」


「フローラさん、私のこの気持ちをわかっていただけないのですか? 私はあなたを愛しています・・・」


「で、でも・・・」


ドルトンは、フローラの手を撫でながら残念そうな顔をする。


「今日もまた、良い返事をいただけないようですね。いいでしょう。また次の機会にあなたの心をつかめるように努力します。」


次の機会? 


また会う気なの?


フローラは、手を握られ撫でられたとき、実は気持ち悪くてぞっとした。


愛していると言われたその言葉さえも、気持ち悪いと感じてしまった。


だめだ、私、この人とは上手く付き合えない!


「ド、ドルトン様、申し訳ございませんが、私には好きな人がいるのです。だから、このお話はなかったことにしてください。それでは失礼いたします。お料理ご馳走様でした。」


フローラは勢いよく立ち上がり、ぺこりとお辞儀をすると、逃げるように去っていった。


逃げる背中を、ドルトンがキッと睨みつけていたことは知る由もなかった。




フローラがドルトンから逃げ帰るより少し前、ジルがレストランに現れた。


レストランの店主が包丁を注文していたので、それを届けに来たのだ。


包丁を渡し、代金が支払われるのを待つ間、ふと客席を見ると、フローラがいた。


向かいに座っているのはドルトンだ。


何故、また二人は会ってるんだ?


ジルの胸に不安と怒りが湧いてくる。


二人は真剣に見つめ合い、何やら大切な話をしているようだ。


「私は妻と別れるつもりです。 前にも言ったように、お母さんと弟の世話もしますから、フローラさん、私のそばにいてくれませんか?」


えっ? なんだそれ? 


フローラにプロポーズしているのか? 


フローラ、断るよな。絶対に断るよな・・・。


だが、フローラは断らず、何も言わずにじっと考えている。


嘘だろ?


ドルトンが、フローラの手を握り撫で始めた。


おい、フローラ、そんな奴、突き放してしまえ!


だが、フローラは手を振り払わず撫でられたままだ。


店主が「ほれ、代金だよ。」とお金をジルに渡す。


店主を見て「あ、ありがとうございます・・・」と言ったものの、ジルは視線をすぐに二人に戻した。


「私はあなたを愛しています。」


ドルトンがフローラを愛してるだって? 


フ、フローラ!


フローラと叫びたくなる思いを、ジルは必至で押さえたが、心の中ではフローラの名前を叫びまくっていた。


フローラ!フローラ!フローラ!


そして、これ以上直視できなくて、レストランから走って逃げた。


フローラ、俺を愛してくれているんじゃなかったのか?


あんな奴のプロポーズを受けるのか? 


そりゃあいつは金持ちだし、俺より数倍も大人だ。


フローラの家族だって幸せにできるだろう。


でも、でも、俺だってフローラのことを幸せにしたいんだ。


「あんたがフローラの邪魔をしないか心配だよ。」


ジルの脳裏に花屋の店主の言葉が過ぎる。


ああ、フローラ・・・俺はお前のために、この愛を諦めるしかないのか・・・


ふらふらと亡霊のような足取りで、目に涙を湛えながらジルは職場に戻った。


そして、その夜、ジルはフローラを訪ねた。


突然の訪問に、驚いてフローラはジルを出迎えた。


「まあ、ジル、夜にいったいどうしたの?散らかってるけど、中に入って。」


「いや、外で話そう。」


これから話す内容を、フローラの家族に知られたいとは思わない。


それだけ、ジルにとっては深刻な内容だ。


「わかったわ。」


フローラは外に出てドアを閉めた。


ジルの何かを思いつめたような顔を見て、フローラもただごとではないと感じる。


「フ、フ、フローラ・・・、お、俺と・・・別れよう!」


思いもしなかったジルの言葉に、フローラは頭が真っ白になり、心臓がわしづかみされたように苦しくなる。


少し遅れて、ドキドキと激しい鼓動が襲ってきた。


「ジ、ジル、あなた何言ってるの? ど、どうしてそんなこと言うのよ?」


ジルの顔は、苦しそうに歪んでいる。


「フローラは、あいつと結婚するんだろ? だったら、俺と一日でも早く別れた方がいい。」


「はあ?」


あいつって、ドルトン様のこと? 私はちゃんと断ったのに・・・


「私がドルトン様と結婚するわけないじゃない。」


「口では何とでも言えるよな。フローラは申し込まれたとき、断らなかったじゃないか。」


「そ、それは・・・」


確かに、そばにいて欲しいと頼まれたとき、迷ってしまったことは事実だ。


一瞬だが、ジルとドルトン様を天秤にかけた・・・。


「それに、あいつに手を握られたとき、振り払わなかったじゃないか。」


「ち、ちが・・・」


「あいつに手を撫でられても、黙ってじっとしてた・・・」


「だからそれは・・」


「俺なんかより、あいつの方がいいんだ!だったら、俺たち別れた方が良いに決まってるだろ!」


「もう、さっきから何よ。私が言おうとすると遮ってばかり。人の話をちゃんと聞けないなんて、まるで子どもだわ!」


「ああ、子どもで悪かったね。俺はあいつみたいに大人じゃない。フローラも、俺みたいな貧乏な子どもより、あいつみたいな金持ちの大人の方が良いよな。」


「酷い、何でもかんでも勝手に決めつけて!私はちゃんと断ったわよ。それなのに・・・もういいわ、今日は帰って。ジルと話なんてしたくない。」


「ああ、わかったよ。もう帰る!」


ふん!と二人は怒りを抑えることもせず、フローラはバタンとドアを閉めて家の中に入り、ジルはそのまま家に帰った。




だが、家に帰るとジルは激しい後悔に襲われた。


どうしてあんなこと言ってしまったんだ・・・


フローラは結婚するわけないって言ったのに・・・


余裕のあるあいつの顔と、フローラの手を握っている姿が頭の中に浮かんでしまって、ついカッとなってしまった・・・


ちゃんと断ったって言ってたのに・・・


どうしてもっと優しく話を聞いてやれなかったんだ?  


はあ・・・




フローラもカッカと怒り露わに家の中に入ったが、激しい後悔に襲われた。


ジルの話から考えると・・・


きっと最後の断るところを聞いていなかったのだろう。


私が一瞬でも迷ったところを見て、手を握られても振り払わなかったのを見たら・・・


ジルでなくても誤解して当然だ・・・。


それに、とっても酷い言葉で傷つけてしまった・・・。


もっと違う言葉で誤解を解くこともできたのに・・・


はあ・・




明日、仕事場に行く前にフローラに会って、謝ろう。そして、ちゃんと彼女の気持ちを聞こう・・・


明日、お店に行く前にジルに会いに行こう。そして言い過ぎたって謝ろう。


翌朝、ジルもフローラも早く家を出て、お互いの家に向かって歩き出した。

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