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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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109話 外伝『転生極悪令嬢メリッサの場合9』新聞報道

驚くフィオナの手を握ったまま、レオナルドはさらに続ける。


「私と結婚すれば、王妃の身分に縛られることもなく、あなたの愛する領地を補佐することができます。それから、私が成人すると、一つ領地が与えられることになっています。その領地も自然豊かで素晴らしい場所です。あなたと一緒なら、領民を幸せにできると思います。一緒に領地を治めましょう。」


レオナルドからの真剣なプロポーズを受け、フィオナは天にも昇るような気持になった。


ああ、神様、これが私へのご褒美なのですね。


今までずっと欲に溺れないようにしてきました。


領民の幸せを願ってきました。


エドワードの幸せも、アデルの幸せも願いました。


だから、だから、この幸せが訪れたのですね・・・。


神様、感謝します!


フィオナは神様に感謝をささげた後、レオナルドに握られた手にもう一方の手を添えた。


「レオナルド様、ありがとうございます。私も、図書館で、殿下にお会いできることを本当は楽しみにしていたのですよ。」


「ほ、本当ですか?」


フィオナを見るレオナルドの瞳が喜びに輝いた。


「では、すぐに父上に話をして、この話を進めてもらいます。後日、正式にお伺いいたしますので、それまでどうか待っていてください。」


レオナルドは嵐のようにやってきて、嵐のように去って行った。




レオナルドが去った後、ラードナー侯爵が応接室に入って来た。


「レオナルド殿下が来たようだが、いったい何の話だったのだね?」


「お父様、私、レオナルド殿下からプロポーズされました。このお話、お受けしようと思います。」


「そうかそうか・・・。結局お前の思うようになったのだな。」


その言葉にフィオナは首を傾げた。


「思うようになった・・・とは?」


「ん? お前は以前、結婚のことは十九歳になればはっきりすると言っていたではないか。ちょうど、レオナルド殿下がアカデミーを卒業して、お妃選びが始まる頃だ。それを考えてのことだったのだろう? だから兄弟どちらでも良いように、陛下には話をつけておいた。ははっ、結局、卒業を待つまでもなかったようだが・・・。」


侯爵はニコニコしながらそう言うと、嬉しそうにフィオナの頭を撫でた。




それからしばらくすると、王家から正式な婚約の申し入れが届いた。


それに伴い、フィオナはエドワードと正式に婚約を解消し、レオナルドと婚約関係を結んだ。


このニュースは、大いに世間を賑わした。


五歳から長い間王太子の婚約者であったフィオナには、他の男性との浮いた噂など微塵もなかった。


それなのに、突然婚約者の弟と電撃婚約をしたのだから、貴族平民関係なく、国中誰もの注目の的になったのである。


新聞に二人の婚約がでかでかと報じられ、『アカデミーが育んだ世紀のラブロマンス』だの『権力よりも愛を選んだ麗しき令嬢』だの、『政略結婚に屈しなかった勇気ある侯爵令嬢の物語』などと、大見出しが踊っていた。


とりわけ民衆には『政略結婚に屈しなかった勇気ある侯爵令嬢の物語』という見出しが大いに受けて、フィオナとレオナルドをモデルにした同名の演劇まで上演されるようになっていた。


この演劇は評判が良く、連日客が押し寄せては皆感動に浸っていた。


噂を聞いたフィオナもどうしても見たくなり、変装をしてルリアとこっそり見に行った。


かなり現実からかけ離れた内容であったが、ドラマチックに演出された恋物語に、観客は涙を流し喜び感動して、最後は拍手喝さいの渦の中でフィナーレを迎えた。


それはまるで自分に送られた称賛のような気持ちになり、フィオナは演劇を見終わった後、大きな満足感を覚えた。


メリッサの最後は、世間から極悪令嬢と罵られ、掃除婦の老婆にまで馬鹿にされる始末だった。


それが今では、人々から感動の拍手が送られるほどの人気者になっているのである。


これも全て、欲に溺れず他人の幸せを願ってきた結果なのだ。


ああ、私は何て幸せなのだろう・・・。


演劇を見た後、幸せに浸りながら自室でくつろいでいると、レオナルドが会いに来た。


レオナルドは、このところ、アカデミーの帰りに侯爵邸に寄ってから帰ることが増えた。


今日は何やら重い顔つきをしている。


「何か心配ごとでもあるのですか?」


フィオナの問いに、レオナルドが困ったように答えた。


「あなたのことをモデルにした演劇が大流行りですが、もし、嫌なら今すぐに公演を中止させますが?」


今日見てきた演劇のことを言っているのね。


中止だなんて、考えたこともないわ。


「なぜそのようなことを?」


「あなたは目立つことを好まず、そしてとても奥ゆかしい女性だ。だから民衆に面白おかしく語られることを嫌がっているのではないかと思ったのです。」


まあ、余計なお世話だわ。


あんなに私のことが感動的に描かれているのに・・・、嫌がるはずがないじゃない!


でも、こんなこと、彼には言えないわね。


「まあ、私のことを心配してくださったのですね。私は大丈夫ですよ。民が喜んでくれるのならそれで良いと思っています。」


「ああ、あなたは本当に心優しい人なのですね。」


レオナルドの瞳が明るく輝き、愛おしそうにフィオナを見つめた。


うふふっ、やっぱり本当のことを話さなくて良かった・・・とフィオナは思った。




フィオナとレオナルドの婚約の話題は、連日王都を賑やかせていたが、新たなニュースが人々の間に広がった。


隣国ノースロップ王国の、亡くなっていたと思われていた王女が見つかったと言うのだ。


しかも十八年間もハウエルズ王国の男爵家で育てられていたと言うのだから、その驚きで皆の注目度はますます高まった。


そのニュースは、フィオナも知るところとなった。


新聞を読めば、その王女がアデルだと言うことがわかる。


今まで一度しか会ったことがないアデル。


だが、八歳のときにメリッサの記憶を思い出してからは、ずっと心に引っかかっていた女性だった。


十年後にはエドワードが彼女と出会い、恋に落ちる女性。


結末がどうなるのか、数ページしか読んでいなかったからわからなかったけれど、結局、予想通りエドワードはフィオナとの婚約を解消した。


真面目なエドワードのことだから、おそらくもう結婚の準備を始めているのだろう。


新聞を読みながら、フィオナはこれで良かったのだと思った。


メリッサのように王太子妃に執着したところで、王女と侯爵令嬢とでは雲泥の差だ。


どちらにしても、フィオナには勝ち目はなかったのだと・・・。


王太子妃に執着したら、その先にあるのは、やはり惨めな最後だったのだろう。


でも、今までの努力の結果、フィオナはレオナルドと結婚できるようになった。


いずれは王妃に次ぐ、この国で二番目に地位の高い女性になるのだ。


それで十分ではないか・・・。


それにしても・・・


男爵令嬢が、実は隣国の王女だったなんて・・・


よく似た話があるものね・・・。




それからしばらくすると、エドワードと隣国の王女が婚約したというニュースが報じられた。


世間的には、フィオナがエドワードとの婚約を断り、レオナルドとの愛を貫いたという話になっている。


だから世間の大方は、婚約者を失った王太子が友好国の王女と婚約するという、よくある政略結婚だと思っている。


エドワードとアデルがそこに行きつくまでに、どれほどの苦労をしたのか知っているのは、二人を除けば、いつも一緒に行動していた護衛のフレッドとカイルぐらいである。


王太子の婚約報道が世間を賑わせている最中、レオナルドがフィオナに会いに来た。


いつもの軽い逢瀬だと思っていたのだが、まさかこの後に、恐ろしい事実を突きつけられることになるとは、フィオナは思いもしなかった。


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