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愛しの侯爵様は、究極の尽くし型ロボットでした  作者: 矢間カオル


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100話 外伝『あなたの腕の中で38』結婚式

アデルが王宮で暮らし始めて三ケ月後に、エドワードが訪ねてきた。


久しぶりに見るエドワードは、少しやつれたように見えた。


だが、その青い瞳は、アデルを一目見た瞬間にキラキラと輝きを取り戻す。


「アデル、庭園を散歩しないか? 二人きりになりたい。」


エドワードに誘われて、二人は王宮内にある庭園を散歩することにした。


アデルは久しぶりの二人きりの時間に胸が躍り、嬉しそうにエドワードの腕に手を回した。


「アデル、婚約の準備で忙しく、なかなか会いに来れなくてすまなかった。」


「いえ、エドはとても忙しいのにこうして会いに来てくれて、私はとても嬉しいのです。」


「ああ、俺もアデルに会える日を、どんなに待ち望んだことか・・・。」


「もう、二度と会えないと思っていたのに、こうやってと王子と王女して会えるようになったのですから、不思議なものですね。」


「二度と会えないとは?」


「私は、あの日、あなたの腕の中で最後の幸せを噛み締めたら、あなたのもとを去るつもりでした。その思い出だけで生きて行こうと考えていたのです。でも、あの時の決死の覚悟が、最後の幸せでなく、幸せの始まりになったのです。」


「あのときは、俺もずいぶんと焦ってしまったが、アデルが王女だとわかったのだから、本当に良かったと思うよ。これには、ビクターに感謝だな。」


「ふふっ、本当に。ビクターお兄様に感謝してもしきれませんわ。」


二人は目を合わせて笑いあった。。


「ところで、私、今でも思うのです。もし、バラの痣が奴隷の証拠だったら、今頃どうなっていたのだろうって・・・。」


そのことは、エドワードも何度も考えたことだった。


もし、あの痣が王女の証でなかったら・・・。


「アデルは何も心配することはないんだ。俺は王になる男だ。俺の手を使って、何としてでも結婚しただろう。」


「まあ、そんなことができるのですか? 法律を変えるとか?」


「ああ、それもありだな。」


「でも、奴隷商人は他国の人間ですよ。」


「俺にできないことはない。アデルと結婚するためなら、他国にだって手を広げるさ。」


「まあ、それはすごいですね。他国の法律も変えるだなんて・・・。」


アデルのエドワードを見つめる目は、尊敬する眼差しに変わり、エドワードはそれを何となく、こそばゆく感じるのだった。


「この話はここまでにしよう。今日は大事な話をしたくて来たのだから・・・。」


「大事な話って?」


「アデル、婚約は両国間で正式に整ったよ。結婚式は一年後だ。だが、俺から再度プロポーズをさせてほしい。」


そう言うとエドワードは、アデルの前に跪いた。


庭園の中でも、花が咲き乱れてもっとも美しいとされるその場所で、エドワードはアデルの手をとった。


「アデル、私はあなたの医師としての仕事を奪ってしまうことになる。だが、これからは、国の医師として私と共に働いてほしい。私の国が健康で豊かで、民が幸せに暮らせるように、私と共に尽力してほしいのだ。アデル、愛しています。私と結婚してくれますか?」


真剣な眼差して見つめてくるエドワードに、ポーっとなりながらも、国の医師として共に働いて欲しいと言う言葉に、アデルは感動を覚えた。


この人は、私を本当に必要としてくれるのだ。


愛しているという言葉だけでなく、人として必要とされることが、アデルにはこの上なく嬉しかった。


断る理由など、もうどこにも存在しない。


「はい。謹んでその申し出をお受けいたします。私はあなたと結婚します。」


「ああ、アデル。我妻よ。」


エドワードはポケットから小箱を取り出し、アデルの指に婚約指輪をはめた。


エドワードと同じ瞳の色のサファイヤの宝石が、光に反射して眩しくキラリと光る。


「アデル、愛している。」


エドワードはアデルを抱き締め、その唇に唇を重ねた。


庭に咲く色とりどりの花々が、二人を祝福するように風に揺れているのだった。




一年後、アデルとエドワードは皆の祝福を受ける中、盛大な結婚式を挙げた。


結婚式を祝おうと、神殿の周りには大勢の人々が押しかけ、二人を祝った。


神殿に来れない人々も祝いたい気持ちは同じで、ハウエルズとノースロップの両国民の平民たちの間でも、それはそれは賑やかなお祭りが催されたのである。


パレードも無事に済み、やっと本日最後の催しの披露宴の開始を待つだけになった。


アデルは純白のウエディングドレスから金色の刺繍が入った白いドレスに、エドワードは水色のアクセントをあしらった白いスーツに着替え、控室で待機していた。


「アデル、疲れただろう?」


「ふふっ、さすがに疲れました。でも、皆さんに祝福されて、私は幸せです。」


「ああ、俺もだ。国民の一人一人の祝福が、俺に力を注ぎこんでいるようだった。」


「ふふっ、エドらしいですね。」


「アデル、きれいだよ。」


エドワードがうっとりとアデルを見ていると、控室のドアがノックされた。


「兄上、僕です。レオナルドです。」


「ああ、レオか。入っていいぞ。」


宴会用にめかし込んだレオナルドが、婚約者のフィオナとともに入って来た。


アデルがレオナルドと直接面と向かって会うのは、「あなたはフィオナ嬢から兄上を奪った」と謗られてから初めてのことである。


「兄上、義姉上、本日はおめでとうございます。今日は義姉上に祝福と謝罪をしに来たのです。」


言い終ると、レオナルドは真摯な瞳でアデルを見つめた。


「義姉上、あの時は本当に失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした。」


そして深く頭を下げた。


これだけで、レオナルドの思いはアデルに十分に伝わった。


「レオナルド様、どうぞ頭をお上げください。私は怒っていませんから。謝罪は受け入れましたから、もうそのことは忘れてください。」


「ありがとうございます。」


頭を上げると、レオナルドはにっこり微笑み、隣にいるフィオナを紹介する。


「義姉上のお陰で、僕は愛するフィオナと婚約することができました。このお礼も伝えたかったのです。こちらが僕の婚約者であるフィオナ・ラードナー侯爵令嬢です。」


「ええ。存じ上げております。フィオナ様とは、一度病院でお会いしましたね。」


病院前で倒れたフィオナを、アデルは介抱したことがある。


あのときも水色の髪色とピンクの瞳がとても可愛らしく、それでいてとても美しいと思ったのだが、今日の宴会用の青いドレスもよく似合っていて、まるで天使が舞い降りたような美しさだと思う。


「まあ、覚えていてくださったのですね。」


「はい・・・。」


忘れるはずがない。


あのとき、フィオナは婚約者を奪ったアデルの手を握り、こう言ったのだ。


―私は、あなたの幸せを願っています― と・・・。


「私の気持ちはあの時と少しも変わっておりませんわ。今もあなたの幸せを願っています。どうぞ末永くお幸せになってくださいませ。」


二人の会話をレオナルドは満足そうに聞いていた。


「フィオナは本当に心が清く優しい人なのです。僕は、そんなフィオナと婚約ができて心から喜びを噛み締めています。兄上、今の僕なら、愛する人と一緒になれることが、どんなに幸せなことなのかわかります。」


エドワードは、可愛い弟に優しく微笑んだ。


「ああ、そうだな。お互いに愛する人と一緒に幸せになろう。」


「殿下、そろそろお時間です。」ドアの外で護衛をしていたフレッドの声がした。


四人は人々が待つ披露宴会場に向かうのだった。





外伝


結婚式から一ケ月たったある朝の話。


昨夜の愛の営みで疲れて熟睡しているアデルの隣で、エドワードは一人起き上がった。


昨夜も十分に愛したはずなのに、まだ足りない。


もっともっと愛しいアデルを抱いていたいと思う。


起き上がったはずみで毛布がはがれて、アデルの尻の上のバラの痣が隠されることなく現れた。


いつ見ても綺麗なバラの色と形をしているその痣を、エドワードは愛おし気に見つめた。


アデルがまだノースロップの王宮で暮らしていたころ、アデルに尋ねられたことを思い出す。


もし、バラの痣が奴隷の証拠だったら今頃どうなっていたのだろうか?とアデルは尋ねた。


俺は国王になる男だから、何としてでも結婚しただろうと答えたら・・・


ふふっ、アデルは法律を変えると思い込んでしまった。


しかも、他国の法律まで・・・


あれ以来、もしもの話をすることはなくなったが、アデルは本当に心の優しい女性だと思う。


そして俺のことを、実はわかっていない。


自分が優しいから、俺のことも優しい男だと思っているのだろう。


法律を変える?


そんなことに頼っていたら、いったい何年かかることか・・・。


俺なら、俺の情報網を駆使して、あの日伯爵領に泊まった奴隷商人を地の果てまでも探し出し、それに関わった全員を、人知れず闇に葬るまでのこと。


そんな簡単なことも思いつかないなんて、やっぱりアデルはお人好しで優しい。


まあ、結局のところ、情報網を駆使するまでもなかったが・・・。


エドワードは、眠るアデルのバラの痣をそっとなでた。


「ん、ああん・・・」


アデルがビクっと反応し、小さく艶めいた声を出す。


「エド? もう起きてたの?」


「ああ、ずっとアデルを見ていた。」


「えっ?そ、そんな・・・、私も起きます。」


恥ずかしそうに顔を赤らめるアデルの表情が、エドワードの男心をくすぐる。


「アデル、まだ朝は早い。もう少しこのままでいよう。」


エドワードは起き上がりかけたアデルの身体に覆いかぶさり、唇から首筋、敏感な部分へと唇を這わせる。


結局この朝も、アデルはエドワードの深い愛の中に引きずり込まれるのであった。






『あなたの腕の中で』を読み終わったローズは、しばらくぼーっと読後の幸福感に酔いしれていた。


身分の差が二人を隔ててしまったけれども、ヒーローの深い愛がヒロインを離さない。


ロマンチックな内容にため息が出る。


ああ、誰かこのお話の感動を語り合える人はいないかしら・・・。



この後、同じく恋愛小説オタクの友に巡り合えることになるのだが、それはまだ少し先の話である。



外伝を読んでくださいましてありがとうございます。

次話からは外伝『転生極悪令嬢メリッサの場合』が始まります。このお話は、『あなたの腕の中で』に転生したメリッサのお話です。どうぞ引き続きお楽しみください。

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