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死んでも貫く。それの何がどう悪い? 学歴主義は屁の河童。

これは、天才外科医、若林蛍とそのチームの転生物語である。

「人が生きること」を真摯に向き合うチームの物語。

 一、何故?


 入念に手を洗い、手術室に入る前に、黒髪の女は言った。

「若林先生。この術式。成功させたら医学界の革新ですよ? うちの院長はもちろん外科部長も

「余計な口は利かないこと。私の精神を乱すっていう意味かしら?」

茶髪の女がそう言った。

「申し訳ございませんでした。」

「あなた、飛沫感染は知っている? オペ前のカンファレンスで決まった事を、最初から最後まで完遂するのが私たちの任務。洗浄のし直し。私達全員ね。アナタ、医学ヴァージンならここに入らないで。」

「申し訳ございません。若林先生。他の先生では

「院長だろうが、東だろうが知らないわ。アンタ、東北だっけ? 京? 恥を知れ。プライドだけの愚か者がおおいクズの集まりよね。院長にあてがわれる度に腹が立つ。要らない。偏差値までのゴミ。邪魔なだけ。はずれなさい。」

若林が部屋を出て、全身の洗浄をやり直した。

 彼女のやり方。東北の医学部あがりの女を排除した。信用できるメンバーに代えてやりなおす。

 若林蛍。手術前に洗浄をやり直して、人間も細菌もできる限り可能性を根絶し、患部の映像と手話だけでチームに指示するのが彼女のやり方。日本のペーパーテスト偏差値だけのトップ有名総合大学の阿呆な医学部など、医学において処女や童貞と変わらないから必要ない。先輩や先生に従ってきただけの全く使い物にならない、完全な頭の腐った人間だと判断していたからだ。

 若林蛍は、三流大学医学部出身だが、国境なき医師団で叩きあげた、海外で凄まじい数の難しい症例を成功し、ペーパーテストだけの高学歴は使わない。彼女のチームの成功に寄りすがりたいゴミを彼女は排除する。無名有名構わず精鋭が残る。

 

 彼女はいつものたたき上げの実力者を揃えて、チームに、手話で指示する。

「では、術式を始める。メス。」

外国人看護師も助手も的確に手話で回答する。

 全ての3帝大をはじいたおかげで、難病患者の外科手術は上手くいった。

院長や海外の閲覧者は大絶賛して彼女たちのチームを「ベスト!」「ハラショー!」「ブラック・ジャック! No! ブラック・クウィーン!」と絶賛する。

 日本医学の名門大学出身の若手全員は、完全勘違いで、それを推した同類の院長は憎たらしく若林を見た。何せ、世界的な難病を世界初で成功させたのだ。


 1週間もしないまま、彼女は世界中に引っ張りだこだった。「チーム・クウィーン」。

それはそれは、日本の偏差値だけの、功績を出せない名ばかりの馬鹿は嫉妬した。彼女達のチームはいつもの事で相手にしなかった。


 ある日、また難病の手術が舞い込んできて、チーム・クウィーンが臨む。若林は無影灯に照らされた患部を見てメスを入れようとした時、意識が遠のいた。

 京の大学卒の留年卒業生の縮れ毛がメスを握って若林を背後から刺した。


 遠のく意識の中、若林は死を感じた。


 二、おや?

 若林は目が覚めて、状況に驚いた。

「どこ? ここ。」

天蓋のあるベッドの上。場所がわからないが、どうやら、中世欧風の装飾。

夜で、ろくに灯りのない、暗い部屋の中にいる。


 ドアが開く音がして振り返る。

「お嬢様!!お目覚めなれましたか!?」

ブロンドのショートカットのメイド服の少女が、三つ又の燭台を持って駆けつけてくる。

彼女はベッドのサイドテーブルに燭台を置いてから若林に抱きつく。

 若林は驚いた。見たこともない環境。このブロンドの少女は誰なのか? お嬢様とはどういう意味だ?

「クレアお嬢様! 忌まわしき事故から、2日間もお眠り続けて!ロギス様、アンダルシア様も食事も喉を通らずにいらっしゃって!!我々メイドも!」


 若林は状況を解析するが、何が何なんだが、詳細までがわからない。

とにかく落ち着く事にして、記憶の上では、メスを持っていたはずの右手でブロンドのメイドの髪を撫でた。

「えぇ。やっと起きられたわ。2日も眠っていたのね。ロギス様もアンダルシア様もなんて?」

ブロンドの少女は、若林、もとい、クレアを見てきょとんとしていた。

「お嬢様? 御記憶がございませんの?」

 なりたてのクレアはポリポリと頬を掻いて、そっぽ向いて考えた。

 どうしよう。この子の名前もわからないし、言ってる事を必死に合わせたが、どうも違うようだ。

ロギスとアンダルシアは、クレアと言われた自分の両親らしいと推測して、疑いの目を向けるこの少女になんというか。

 暗い部屋の肖像画などがうっすら見える。ブロンドの凛々しい男と、白銀の長髪の美女。その間にいるブロンドの幼子。多分、この娘が、この意味不明な自分の立場なんだろう。


 若林として一芝居うった。

「あぁ。」と言って、おでこを押さえてベッドに身を預けようとする。

「お嬢様!!」

「ごめん。まだちょっと頭がフラフラしてるの。えっと・・・ルシア? お父様とお母様に伝えて。私は目覚めたと。」

ブロンドの少女がぶんぶん首を振って涙した。

「はい!! ロギス様もアンダルシア様も、カイダル様もすぐに御呼びします!! 失礼させていただきます!!」

ブロンドのメイド少女は燭台を持って走って部屋を出て行った。


 クレアになったらしい若林は、ベッドを出て、高級な絹のローブを羽織り、月に照らされ視認できる姿見の前にたった。

 驚くしかなかった。自分は茶髪でもない。ブロンドの長髪の長身で蒼い瞳。

窓から見えるのは小さい光が灯る、外見だけでは中世の城下町。

「何なんだ? これは。私がクレア? 誰だそれは? ここは一体・・・」


 三、クレアの理解が及ばない新しい現実

 月下の夜。

クレアは部屋の中で、自分の、この世界のはずの状況を整理する。

若林の頃から知っているドイツ語によく似ている文字はよく見られた。という事は、勝手に想像するに、ここは中世ドイツという事か。

 クレアは「はぁ。」と大きなため息をついて、頭を抱えて絹のベッドに戻った。

「どういうことだ。全く理解が及ばない。

 とにかく私は、ここではクレア。クレア・ヘンドリクセンというらしい。何故こうなった? いや、その解は今得る事はできない。あのブロンドのメイドが戻ってくるだろう。ロギス、アンダルシア。私のこの世界の両親か。そして、彼女はルシアでよかったらしい。

 まったくあてずっぽうだから、愛称か本名か不安だったけど。」

 クレアは酒でも欲しい気分だった。

だが、一応は病人の身。そんな事はできない。ひたすら頭を巡らせて、来るであろうロギスとアンダルシア、カイダルという人間を待つしかない。話を合わせることばかり考えた。

「いつ以来だろうな。忘れてた。患者の言葉を聞かずに、その気持ちを読み取るのは。」


 ノックされた。

クレアは「はい?」と応えてシーツをまとってベッドに寝転んだ。

 バタン!

クレアは驚いた。銀髪の長身の女が駆け寄ってくる。クレアを抱きしめた。

「クレア!!クレア!本当に!本当に良かった!!」

「お、お母様。すみません。ずっと寝てて。」

「何言ってるのよ!!死んじゃったかと思ったのに!」

号泣する銀髪の美女を見て、クレアは戸惑った。ブロンドの精悍な顔立ちの男が歩み寄る。

「クレア。私も本当にすまない。馬車に轢かれたと聞いて、カイダル先生にお願いした。この国一番の名医だから。そんな先生から、嫌なことを聞いた時は悩んだものだった。でも、生きててくれてありがとう。クレア。」

 クレアは、号泣するロギスとアンダルシア、涙ぐむルシアを見て、これ以上、現段階で理解しようとは思わなかった。


 だが、クレアは気になった。

カイダルという国一番らしい、名医は冷たい目で自分を見ていた。

「本当に。神の奇跡です。もう2度と。いえ。言葉が過ぎました。」

「カイダル! 縁起でもない事を言うな!」

ロギスが叱責し、カイダルは「申し訳ございませんでした。」と繰りかえすのみだった。

 クレアは、カイダルが腹に一物を抱えている事を、容易に想像した。クレアは状況を整理した。「榎本裕司。あのクソジジイ。絶対何か企んでいる。外科部長でも、実力はクズで、部下に大事な部分を進めさせて、ただメスを平行に動かすだけで、全部自分の成果にする。

 人間性が最低最悪。榎本裕司はいつ誰に殺されてもおかしくないクズ中のクズだ。榎本裕司という技術部のトップだ。オナニー人事とオナニー人事しかしない。


















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