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危険な魔物

 と、ゴゴゴゴと言う音がなり始める。


「うん? おや? ピコ。培養槽の中を満たしてた培養液が排出されているんだが」


 カルマが水槽を見て言った。たしかに培養液が排出されていっている。


「あら、間違えてしまいましたわね。こちらかしら」


 ピ、ピピピ、ピと言う電子音と共に、ロットの後ろのボックスがカチリと開錠される音。


「お、やったか?」


 ロットが意気揚々と装備品ボックスに手を伸ばそうとした瞬間のことであった。

 辺りに響くガラスが割れる音。ロットが振り返ると、なんと培養槽を叩き割って試験体が出てきている。


「バイオモンスターが息を吹き返しただと!」


 カルマがバイオモンスターと間合いを取った。しかし、バイオモンスターはその尻尾を振るい、カルマを攻撃する。ドカッと言う強烈な音。


「ぐぅっ!」


 カルマは壁際まで弾き飛ばされたようだ。ヴヴヴヴと言う音と共にサイコバリアが消える。規定回数攻撃を防いだが、その耐久力がカルマの精神力を超えてしまったのだ。


「カルマ! くそっ、この化け物め!」

「近づくな! 固まっていては危険だ!」


 カルマが手で駆け寄ろうとしたロットを静止する。

 バイオモンスターは出入り口付近をふさいだ。触手を振り回してあたりの機器を破壊している。確実に人間に対して殺意を出だしているようだ。元々、バイオモンスターは人に悪意、敵意、殺意を見せる。この化け物も例外ではないようだ。


「なんてことですの! カルマ、倒せますこと?」


 カルマにはサイコバリアは無い。だが武器を持っているのはカルマだけだ。

 カルマが懸命にサイコダガーを振り回すが、バイオモンスターの間合いに踏み込めないようだ。


「ぐがぁぁぁぁぁぁ!」


 バイオモンスターの咆哮。うなる豪腕。触手の鞭がカルマを捉える! ドカッと言う音と共に、カルマが壁に叩きつけられる。壊れた機器の破片でカルマが傷だらけになった。


「きゃあああああ!」


 ピコの悲鳴。それは危機的状況。戦えるカルマが敗北した。


「く、くそっ! そうだ。鎮圧用の装備品を使えば・・・・・・」


 ロットは冷静になり、背後の装備品ボックスを開ける。・・・・・・中には一丁のハンドガンのようなもの、サイコショットがあった。危険を記すマークが描かれた封を引き剥がす。取り出したのは切り札のサイコショット。ロットが銃のグリップを握ると音声が流れた。


「生体認証登録開始・・・・・・ユーザー登録完了。本サイコショットは対バイオモンスター用試作試験品。出力は対人用の比ではありません。細心の注意の元で使用してください」


 音声出力は途切れた。キュィイイイインと言う音が鳴る。稼動開始したようだ。


「このっ、化け物っ! 私が相手になりますわ! こちらに掛かってきなさい!」


 ピコがバイオモンスターにそこらのモノを投げつけて自分にヘイトを向けさせた。カルマが危険だったので、自ら囮になったのだ。だが、それでは彼女が危ない。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!」


 バイオモンスターがピコを目掛けて突進していく。


「させるかよ、くらえー!」


 ロットがトリガーを引いた。瞬間、強烈な光線が銃身から放たれる。強烈なレーザー光がバイオモンスターを直撃し、魔物を向こう側の壁へと叩きつける。強烈な衝撃と熱量がモンスターを一撃で粉砕した。まさに圧倒。大火力。バイオモンスターは息絶えた。


「た、助かりましたわ。そうだ。カルマは・・・・・・」


 ピコがカルマの倒れた場所を見る。


「い、生きているよぉ。怪我を負ってしまったようだ」

「カルマ、立てるか?」


 ロットがカルマに肩を貸す。カルマはぼろぼろの姿になっていた。切り傷、裂傷が見られる。それが研究所の汚れに汚染されて、より一層ひどい見た目になっている。


「カルマが大怪我を負ってしまいましたわ! なんてことですの!」


 ピコがひどく狼狽している。


「僕は大丈夫だ。それより早くここを出よう」


 カルマは手ひどい怪我を負っているが、それでも冷静さは崩さない。将来は消防士にと、緊急時でも冷静を失わないように教育が施されているからだった。

 三人は急いで研究所を脱出する。帰り道も下水道を通る。降りる時と昇る時はロットがカルマを背負って移動した。

 マンホールからピコが脱出し、続いてロット達が顔を出す。そして慌てて蓋を閉めた。

 辺りは既に夕方を過ぎて暗くなっていた。


「ロット、救急車を呼びましょう!」


 ピコの提案。彼女の提案は現実的だった。カルマの怪我はひどい。


「騒ぎになってしまうな・・・・・・ロット。僕の背負い鞄を預かっていてくれ。戦利品を取り上げられてしまうかもしれない。研究所に侵入していた事は黙っていよう」

「おいおい。こんな時にそんな心配かよ!」


 流石のロットもカルマに呆れる。知恵がよく回っているから大丈夫だろう、ロットはそう感じた。いつものカルマと変わらない。


「もうしばらく待てば救急車両がやってきますわ!」


 ピコはレスキューを携帯用通信機器で呼んだようだ。


「バイオモンスターを恐れて身をすくませた僕の敗因のせいだ。もっとしっかりしていたらこんなことには・・・・・・」


 カルマが悔しそうに呟いた。彼は学生間では闘錬にて最強。それだけにどんな相手だろうが何とかなるという慢心もあった。しかし、実際は未知の化け物相手にやられてしまったのだ。彼はそれを己の情けなさと悔やんだ。


「あんな化け物相手では仕方ありませんわ」


 ピコが友人をフォローする。

 彼らは目的の物を手に入れたが、ひどい冒険となってしまった。

 やがて救急車両が到着する。カルマは急いで搬送された。その時にロット達は事情を聞かれるのだが、マンホールの蓋が開いていてそこからカルマが落ちたという話をでっち上げてやり過ごした。実際にマンホールの蓋はサイコダガーで壊していたので、その作り話は一旦信じられたのだった。

その日の出来事がさらなる冒険の出来事になるとは、その時点では誰もが思ってもいなかった。


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