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悪事の誘い

 闘錬の授業が終わり、お昼休みの時間となった。学生達は購買から食べ物を買うなり、弁当を持参するなり色々な方法で昼食をとる。ロット達はと言うと・・・・・・。

 おのおの生徒達が昼休みを過ごす中、教室の片隅で机を並べてロットとカルマとピコが座る。


「おまたせー! 今日のお昼は豪華チーズ入りハムサンドパンですのよ!」


 ピコがテーブルの上にランチボックスを並べた。彼女は実家のパン屋の手伝いをするのだが、自作のパンの感想を聞くために学校に持ってくるようになったのだ。


「おおっ、いいねぇ! うちの羊乳を用いたやつだな!」


 ロットが大はしゃぎしている。牧場をやっているロットとパン屋のピコの実家のつながりは強い。


「そうなんですのよ。ロットのおうちのチーズは最高ですわ!」


 ピコも上機嫌だ。家同士のコラボ作品がいまここに。


「僕もご相伴にあずかれて何よりだよ」


 カルマが三人分の飲み物を置いた。そうして始まるランチタイム。三人がパンを頬張る。


「うん、おいしい! こうやって豊かな食卓にあずかれるのも、小麦農家や酪農家達の仕事のおかげですわね」


 ピコが感激している。彼女は食べる事にも幸福を見出す。


「うちの羊達は毛から洋服まで作られているんだぜ!」


 ロットが誇らしげに語った。


「なんだよ。君は酪農家にはなりたくないんじゃなかったのかい?」


 カルマが痛いところを突いた。


「そ、それはそれだ。俺はガーダーになりたいんだよ!」


 ロットが慌てて取り繕った。


「ガーダーを目指せるのは学徒の間だけですものね。私はパン屋を目指しますけれど」

「ピコは迷いが無いよね。今日もおいしいパンをご馳走さま」


 カルマがさらりと礼を言う。


「今日も、あ、ありがとよ!」


 ロットがつられて慌ててぎこちない礼を言った。


「どういたしまして、ですわ」


 そういうとピコは空になったランチボックスに蓋をした。その表情はとても満足そうである。彼女は自分の作るパンで人を幸せに出来たならばどれだけ幸せだろうかと言う信条で生きている。

 三人はとても仲が良かった。それは学校を卒業してからもそのような関係は続くのだろうと誰しもが思っていた。だが、運命はそのようには引かれていなかったようだ。運命の歯車は動き出す。その始まりの歯車とはカオス理論、あるいはバタフライ効果でいうところの、蝶の羽ばたきが別のところで竜巻を起こすという話かのように、一見してはわからない繋がりの形をしているのだった。



 ある休日の出来事。それはいつもの様に三人が揃って街角でぶらぶらしていた時の事。


「あー、退屈だぜぇ。こんな田舎町じゃなんもありゃしねぇよぉ」


 ぼやいているのはロットだった。彼の言うとおり、彼らの町は壁際の辺境の町。娯楽の類は無かった。


「へぇ。それなら一つ、面白い所の話を聞いたんだよ。行って見るかい?」


 カルマがもったいぶって話し出す。


「面白いところ? なんでございますの?」


 ピコが早速興味を持った。彼女もなんだかんだと退屈しているようだ。


「そうだぜ。なにがあるってんだよ」


 ロットも興味深々に聞きたいそぶりだった。


「実はな。町外れの壁際に、古い研究施設の跡地があるだろう? そこではバイオモンスターが研究されていたらしい」

「なんだって? バイオモンスターへの過干渉は禁忌とされているじゃないか!」


 ロットが思わず声を上げた。カルマの話にピコも驚く。


「ところがこの街の外れでかつて禁断の研究がされていたと言う。その研究所は神の怒りを買って滅ぼされたらしい。立ち入り禁止区画。そこに出入り口がわからないコンクリートの壁で囲まれた一角があるらしいが、そこにはバイオモンスターに関する秘密が今も放棄されて残っているらしい。なんでも、バイオモンスターを駆逐できる可能性が残されているとか、そんな噂だ」

「どこでそんな話を仕入れて来るんだよ。それにバイオモンスターの禁忌に近づけば、また神の怒りを買うかも知れねぇだろう」


 ロットが身震いした。この世界の神とはこの塔の世界の全てを管理する者。怒りを買えば、その階層ごと滅ぼされかねない。


「そうなんだがね。なんとその研究所では研究対象の魔物が脱走した時のために、サイコソードやサイコショットが配備されていたんだとか。今も装備品が研究施設にあるかもってやつさ! こいつ狙いで行って見ないか?」


 サイコソードやサイコショット。それは特別な職員や身分の者だけに配備される特殊兵装。サイコダガーとは威力が段違いだった。ロット達には遠い世界の話でしかないアイテム。それが廃棄された研究所にはあるという。


「サイコショット・・・・・・一度この手にしてみたい・・・・・・俄然興味がわいてきたぜ!」


 ロットは特殊兵装に興味を惹かれたようだ。えらばれし者の武器、興味がないわけではなさそうだ。


「あ、危ないですわよ。もしかしたらバイオモンスターの生き残りがいるかもしれませんし!」


 ピコは乗り気ではないようだった。


「なら置いていくぜ。カルマ、行こうぜ」

「お、お待ちなさい。誰が行かないと言いましたかしら。私も行きますわ。あなた達だけでは不安ですもの」


 ピコはなんだかんだ言って付き合いはよかった。


「じゃあ、家から父さんの使っていたサイコダガーを持ち出してくるよ。必要になるかも知れないだろう。ロット、ピコ。1時間後にまたここに集合だ」


 カルマがそう言って自宅へ向けて駆け出していった。残された二人も一旦自宅へ帰るようだ。


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