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実技の授業

 グラウンドに並ぶ生徒達。この授業では男女別となる。

 赤い体操服に着替えたガーベット女史が校庭に出てくる。


「お前達。準備は出来ているか? 準備体操は十分か? きちんとやらなければ怪我をするぞ!」


 ガーベット女史が生徒を並べて号令を掛けた。


「先生、今日は何をやるんです?」


 ロットが挙手して質問した。


「ロット。お前は座学を寝ていたが、闘錬の授業だけはやる気があるな。今日は模擬戦闘を行う。各自トレーニング用のサイコダガーを手に取れ!」


 ガーベット女史の命令で、生徒達はかごから小さい筒を手に取った。


「へへっ、この授業だけは楽しみなんだ!」


 ロットがサイコダガーに念を送ると、ヴォゥンという音と共に青い刃が現われた。精神エネルギーに同調する武器の一つだった。


「お前達、サイコバリアを万全に張れる状態だな? 出来ない者はいるか? いるなら今日は見学だ。それでは二人一組になるがいい」


 ガーベット女史がそう言うと、ヴヴヴンと言う音と共に生徒達の体が青い光で包まれる。これまた精神エネルギーに同調して張られるバリアだった。あらゆる衝撃等から人体を守る。強烈な一撃か同じ精神エネルギーの武器による攻撃以外では傷はつかない。


「おい、カルマ。俺と組もうぜ!」


 ロットがペアを申し出る。相手はクラス最強の男。修練目的ならば申し分ないだろう。


「いいよ。やろうか。手加減はしないよ」


 カルマがヴンとサイコダガーを振るった。


「先にサイコバリアを壊された者が負けだ。それでは闘技始め!」


 ガーベット女史の号令で一斉にバトルが始まった。あちらこちらでサイコダガーが振るわれる。実戦形式での鍛錬のようだ。そう、闘錬とは戦う技術。サイコダガーやサイコバリアを十二分に生かして体術で相手に勝る闘技。バイオモンスターが闊歩するこの世界では、自分の身を守る為の手段として必須の科目だった。


「いくぜ、カルマ! 俺の攻撃受けてみろ!」


 ロットがすばやい突きを繰り出す。一撃の重みではなく、小回りが利くサイコダガーの利点を生かして、確実に相手のサイコバリアにダメージを与えようという作戦なのだ。


「ふっ、甘いな、ロット! 僕を相手にそんな直線的な攻撃でどうにかなると思っているのかい?」


 カルマはすばやく避け、或いはサイコダガーではじき返す。完全にロットの動きを見切っていた。

 カルマが上段蹴りを放つ。それは当然ロットのサイコバリアに阻まれるが、カルマ自身のサイコバリアと衝突される事で衝撃波が生まれる。


「ぐわっ!」


 ロットがよろめいた。完全にバランスを崩している。軸足がぶれて咄嗟の動きが取れなくなっていた。


「そこだっ!」


 隙を逃すカルマではない。すかさず鋭い一撃がロットを襲う。

 ガツッ!

 カルマの一撃がロットのサイコバリアを直撃する。


「くそっ、そう簡単にやられるか!」


 一撃ではロットのサイコバリアは破れなかったようだ。細かく振動を繰り返して、障壁は維持されたままとなっている。が、しかしロットはよろめいて地面に膝をついた。


「ふふっ、君のサイコバリアはサイコダガーの攻撃を2回は受け止められる。が、それはすなわち後一撃で壊れるという事。僕のバリアは3回まで攻撃を受け止められる。もう勝負はついたかな?」


 カルマが余裕の笑みを浮かべた。彼の足運びには慢心が無い。ロットがどんな踏み込みで攻撃を繰り出そうが、即座にあらゆる方向へと避けられるように動いていた。


「そうだな、俺の負けだな・・・・・・」


 そう言いながらロットは空いた手で地面の砂を掴み、カルマに向けて投げかける。

 砂がサイコバリアに干渉して弾かれるが、カルマの視界が阻害された。


「うわっ!」


 カルマは驚き動きが止まる。そこにすかさずロットのサイコダガーの突きが繰り出される。

 ガガッ!

 サイコダガーはサイコバリアに弾かれたが、サイコバリアにダメージを与えたようだ。


「何て、俺が言うとでも思ったか、カルマ!」


 ロットが胸を張って言い放つ。


「きたない! 奇襲不意討ちだまし討ち。なんでもありかよ!」


 さすがにカルマが抗議する。


「おいおい、これは実戦形式の試合なんだぜ。使える手は何でも使わなければ、手加減しているみたいでだめだろうよ!」

「そうかい、それならこれならどうだ!」


 カルマからの反撃。それはサイコダガーの投擲! サイコダガーはロットのサイコバリアに突き刺さり、サイコバリアは砕け散った。


「あっ、やられた! だがよ、相手は丸腰。これならサイコダガーがある俺のほうが有利じゃないか!」


 ロットが負け惜しみを言う。これで負けるというのは納得がいかないようだった。


「試合は先にサイコバリアが破られた方が負けなんだ。ルールの上では君が負けさ!」


 たしかにガーベット女史はそのように言っていた。ならばロットの負けとなる。


「納得いかねぇぜ! これが実戦だったら俺はまだ負けちゃいねぇだろう!」

「君はサイコバリアを破られても負けを認めないのかい? さすがに僕は実戦でもサイコバリアを破壊されたら負けを認めるよ。死にたくないもの」


 サイコバリアは命を守る力。一日数回は人をあらゆる攻撃から守る力場。寝て起きればバリアに受けたダメージは回復する優れものだ。それゆえにそのバリアが破られた時、人はもっとも攻撃に無防備になる。それは死が隣に舞い降りるという意味なのだから。


「よし、それまで! それでは相手を変えて、もう一戦始めるぞ。各自、新たにペアを組め!」


 ガーベット女史の号令が掛かった。こうして授業は続けられる。


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