反抗作戦会議3
「ちょっと待った、どうやって縄張り持ちと野良を見分けるんだ?」
康生から質問の手が挙がる。
「お答えします。異変時に皆さんのスマホに魔物召喚アプリというアプリがインストールされているはずです。今までにそれを開いたことがある方は既にご存知だと思いますが、そのアプリには5つの項目が表示されています」
アナライズ、マップ、使役、召喚、機能拡張の5つだ。
このアプリ自体誰が送りつけてきたものか分からないが、この状況では使える物は使うしかない。アプリの調査については後回しだ。
「現在使用できる項目はアナライズとマップだけですが、皆さんの方も同じでしょうか」
各々が自分のスマホを確認し頷く。
「これは…やはりそうか…」
安田がなにやら独り言を呟いているが、無視して説明を続ける。
「アナライズをタップすると、今まで自分が視認した魔物が一覧で表示されるようになります。詳細な能力などの情報は分かりませんが、魔物のレベルが表示されています。ゲームでよくある魔物の強さの目安ですね」
「それはおかしいんじゃないか?俺のアナライズではオルトロスがレベル15でゴブリンが50になってるぞ。オルトロスは神話級の魔物だぞ。雑魚ゴブリンの方が強いわけがないだろう」
安田が話の腰を折る。まあ予想できた反応ではある。
「たしかにゲームではその通りですね。しかし、現実の魔物は強さの基準が違うと考えています。その基準とは、おそらく知名度です」
「どゆこと?善訓クン」
新悟が合いの手をいれる。
「皆さん、とりあえずアナライズ画面の右下にある共有ボタンをタップして下さい」
皆がスマホを操作するとアナライズ画面に皆のデータが共有される。
「色々試してみたのですが、共有ボタンをタップすると近くの魔物召喚アプリに情報が送られるようなのです。ちなみに他支部とは共有できませんでした。距離が離れているとダメみたいです」
「なるほど、これは便利だなぁ」
康生が頷く。
「他支部の報告によると高レベルの魔物は総じて日本で知名度の高い妖怪や悪霊、鬼などでした。逆によくゲームでボス扱いされているような魔物は一般的には知名度が低いためかレベルが低いようです。根拠としては弱いかもしれませんが、そのような傾向があるのは間違いありません」
安田から反論は無い。ある程度納得してくれたようだ。
「話を戻します。皆さん次はマップを開いて下さい。マップ上に点と赤いエリアがいくつか表示されていると思います」
「点が魔物です。タップするとその魔物のアナライズ画面が表示されます。そして、エリアの中心に高レベルの魔物が表示されていることから、おそらく赤いエリアが縄張りを示していると推定します」
「つまりこの情報から予測すると、安田さん達が遭遇したオルトロスの周囲にはエリアが表示されていないので、コレは野良だと考えられます」
「いや、でもあいつは人を何人も殺してたぞ?野良は腹が減ってない時はあまり人に関心がないんじゃないのか?」
「では、安田さんと佐藤さんは何故生き延びられているんでしょうか。確か遭遇時に発砲したとお聞きしましたが。私達より遥かに強い魔物を攻撃してタダで済むとは到底思えませんが」
「それは…あの時は必死だったからよく覚えてない…」
「先輩。私は後ろで見てましたが、先輩が発砲した後魔物が急に興味を無くしたようにそっぽをむいたように見えましたよ。私達はその隙に逃げたのでその後のことは分かりませんが」
「じゃあ、俺達が現着した時には腹一杯だったってことか?そう考えれば、まあ辻褄は合うが…」
安田は不満気だが話を続ける。
「いずれにせよ、魔物の習性に関してはまだまだ情報不足です。あくまでもその可能性が高い、というだけです。囮作戦も上手くいく保証はありません。なので無理強いするわけでは」
「やります」
言葉を遮り佐藤が答える。
「このまま何もせずにいたら対抗手段の無い我々はいずれ全滅するでしょう。ですが少しでも希望があるのなら私はそこに賭けてみたいと思います。」
「…ありがとうございます。」
佐藤は冷静に状況を把握し分析している。この人こそ参謀に向いているんじゃないだろうか。佐藤が絶対に生きて帰ってこれるような作戦にしなければ。
「よっし、じゃあ早速ぅ、偵察の準備だ!作戦開始は明日の正午!解散!」
新悟の号令で皆が決意の顔つきに変わる。
(ひと言で場を纏めたな。やっぱ凄いなコイツ…)