拷問
俺はムラから嘘をついた娘を連行し、少し離れた場所に設営した野営地で娘の拷問を開始していた。
当然、ムラ長には許可をとってある。
長にこの娘のことを尋ねたが、どうやら娘は最近ムラに一人で流れてきたらしく詳しくは知らないそうだ。
「さてお嬢さん。俺はあんまり手荒なことはしたくないんだ。大人しく答えた方が身のためだぞ」
娘が動けないように、座らせた上でゴクウが肩を押さえている。
「いいか、お前がこのゴクウと俺を互いに殺し合うよう仕向けたことはもう分かってる。」
娘はウルウルした瞳でこちらを見上げている。
(そんな瞳で見ても、もう騙されんからな!)
「いいか、先に警告しておくが俺に嘘はつけんぞ。俺はお前の心を読むからな!」
正確にはゴクウが読むのだが。
「それと、一回嘘をつくごとにお前の指を一本ずつ落とすから、よーく考えて答えろ」
「え…指を…?そんな!やめてください!」
娘の顔がサッと青ざめる。
無視して尋問を続ける。
「最初の質問だ。嘘をついたのは誰かの指示か?」
「……いいえ」
「ということはお前の独断か?」
「はい…」
(ゴクウ)
(はい、嘘を言っています)
「ふう、残念だ。早速嘘をついたな。約束通り指を一本落とす」
「いや!嘘なんかついてません!やめて!」
「…今ので二回目の嘘だ。あんまり俺を舐めない方がいい」
「おい、右手を開かせろ!」
戦士に指示を出す。
「は、はい!」
戦士が指示通り娘の右手を台につかせ開かせる。
それを確認すると俺は小刀を手に取り、問答無用で娘の小指と薬指を二本いっぺんに切り落とした。
娘の指が台の上に転がった。
「いやあぁぁぁ!!!痛い痛いいたいぃぃぃ!!!」
娘がワナワナと震えだし、顔が苦痛と恐怖で歪む。
「誰の指示だ?」
「……うぅ」
「誰の指示なんだ?」
「…」
ザクッ
今度は中指を切り落とす。
「うぎゃぁぁぁ!!」
娘が逃げようとして暴れる。
しかしゴクウがガッチリと肩を押さえているのでビクともしない。
「うるさいな。いちいち悲鳴をあげるな」
「誰の指示か答えろ」
「う、温羅というお、鬼ですうぅぅ!!!」
娘はうううと唸っている。
(本当のようです)
「温羅がなぜ猿と俺を敵対させるような真似を?」
「さ、猿はいずれ報復にくるし、朝廷もじきに自分を討伐にくるかもしれないからって!」
「それで?」
「だ、だから殺し合わせて、あとは残った方を殺してゴブリンの仕業に見せかけると言って…!」
(本当か?)
(はい)
「温羅とは鬼ノ城にいる奴か?」
「はい!そうですっっ!!」
(本当です)
「なあ…お前は人間か?」
「つっ…!」
人差し指を切り落とそうとする。
「ち、違います!私は鳴女という雉の化身です!」
女が正体を明かした瞬間、アナライズが立ち上がる。
表示は鳴女となっていた。
(ほう…雉の化身とは珍しい)
ゴクウが言う。
(そうなのか?)
(はい、雉の化身は神の使いとも聞きますが…)
(ふむ…)
「お前は神の使いじゃないのか?」
「…元々はそうでした」
「というと?」
「私はある方に天意を伝えるために遣わされました」
「天意?誰に」
「はい、あなたのお父様です」
「…は!?」
(本当のようです)
(なんだ?全然話が読めないな…)
「その天意というのは?」
「…時が来たらあなた様に地下の魔獣を見せろと」
「それだけか…?」
「はい…」
ゴクウがこちらを見てコクリと頷く。
(なんじゃそら…どういうことだ?)
「その神の名は?」
「分かりません。拝見したことのない神様でした」
(本当です)
「ふむ。それで、神の使いがなんで温羅の手下なんかになってるんだ?」
「天意をお伝えした私は、帰る前に少し人間のムラを見てみたいと思いまして、人に化けて見てまわっておりました…」
「そこで一人の男性と出会い、私達はほどなく恋に落ちてしまいました。私は天の御使いをやめ、その方と一緒になるつもりでした」
「しかし、その方が温羅に攫われてしまったのです」
「…ほう」
「温羅は私が言う通りにすればその方を返してやると、そう言ってあなた様に嘘をつくよう命令したのです。それであのムラに紛れ込んであなた様をお待ちしておりました…」
(全て本当です)
「そうか分かった。もういいぞ」
俺がそう言うと、鳴女は親指と人差し指だけになった自分の手を見てさめざめと泣いた。




