初めての召喚
ムラの近くに着いたが、さすがにゴクウを中には連れて行けない。
(どうしたもんかな)
「イサ様、ご心配には及びません。ワタシに戻れと命じて下さい」
「???…も、戻れ」
命令した瞬間、ゴクウが音もなく消えた。
「あら、ゴクウどこ行った!?」
俺は慌てて周囲をキョロキョロと見回した。
皆も不思議そうにしている。
(落ち着いて下さい。ワタシは現在イサ様と契約しています。契約した魔物は言わばあなたと一心同体。今はあなたの魂と一体化しています)
「魂と一体化?どういうコト!?」
(イサ様、今度は名前を呼んで、出ろと命令して下さい)
「ゴ、ゴクウ出ろ!」
…目の前に何事も無かったような顔をしてゴクウが現れた。
「す、すげー…」
つい心の声が漏れてしまった。
「イサ様、魔物と約束するということは、それ即ち契約するということです。並の者ではこのようなことは出来ませんが、あなた様はお師匠と同じ力をお持ちのようです」
「そうか、なるほどな…」
「…ゴクウの師匠とはどんな人物だったのだ?」
「何処かで長い修行を積んだ僧と言っておりました」
「詳しくは分からないのか?」
「はい、生きていく上でさして重要なことではありませんでしたので、それ以上は聞いておりません」
「そうか…」
(魔物召喚アプリと同じようなことが修行すれば可能なのか…?それとも生まれ持った素質なのか?大体あのアプリは何なんだ。誰が何の目的で作った?)
(イサ様、魔物召喚アプリとは?)
(???…ゴクウか?これは念話!?)
(はい、魂が一心同体であるゆえ、念話も可能です)
(そうか!念話やってみたかったんだよ!うれしー!)
(あ、いやな、実は俺、別の世界から魂の修行の為に転生してきたんだよ。その世界ではスマホというものがあってな。まあこの世界の書物みたいなものなんだが)
(スマホでは色々なことが出来るんだよ。遠くの人と話したり、自分の知らないことを調べたり。そのスマホの中に入っていたのが魔物召喚アプリなんだ。魔物の情報を調べたり使役したり出来るものでね)
ゴクウに念話を送る。
(イサ様は別の世界?から生まれ変わってこられたのですか。驚きました。それで他の方とは違うわけなんですね。しかし、そのスマホというものはとても便利なもののようですね。ワタシも是非見てみたいです)
(ああ、元の世界では便利なものに溢れててな。その内の一つなんだ。一緒に元の世界に行けたら色々見せてやるよ)
(それはとても楽しみです。その時は是非ご一緒させて下さい)
(おうよ!)
元の世界のことを話していたら、急に懐かしくなってしまった。
(こっちに来てかれこれ18年か…由佳たんに会いたいな)
(由佳たんさん、とは想い人でしょうか)
(うん、俺の妻だ。名前は由佳っていうんだけどな)
(そうなんですね。早く会えると良いですね)
(ああ!)
しかし、帰り方がさっぱり分からない。
おそらく魂の修行が終われば帰れるのだろうが。
気づくと長い間黙ってゴクウと見つめ合っていたので皆が不審な目をしてこちらを見ていた。
「皆すまない。ゴクウと念話の練習をしていた!」
「そうですか!流石イサ様です!」
何が流石なのかよく分からないが、戦士達が尊敬の眼差しでこちらを見ている。
まあ、誤解は解けたようだ。
「とにかくこれで問題なくムラに入れるな!ゴクウ、戻れ」
ゴクウを戻すと、俺達はムラに入っていった。




