オーガと猿
ゴブリンをあらかた片付けると、生き残りが慌てて逃げ出し始めた。
バラバラにではなく一方向に逃げ出したのを確認して、俺たちは互いに頷き合い後を追った。
ゴブリン達を追っていくと、岩壁に空いた洞窟に逃げ込んでいくのが見えた。
(ここがゴブリンの巣だな)
「皆、充分注意しろ。どれぐらいの数か分からない。危なくなったら迷わず撤退する」
「はい、イサ様!」
戦士達が頼もしい返事をする。
「行くぞ!」
洞窟内は入り組んでいてゴブリンが大量にいたが、レベル1モンスターなど相手にもならない。
俺達は片っ端から切り伏せていった。
しかし連れ去られたムラの人達はまだ見つからない。
(猿とは別行動なんだろうか)
念のため横道を全て調べていき、小一時間ほどで恐らく最奥とおぼしき場所までたどり着いた。
「残るはこの先だけだな…」
周囲に気を配りつつ進むと、体育館ほどの開けた空間に出た。
よく見るとその奥に攫われた人達がいた。
どうやら木製の牢に囚われているようだ。
その牢に向かって、神殿のように両側に柱が立っている。
(魔物の巣にしては手が込んでるな…)
そんなことを考えながらその道を進み中ほどまで来た。
その時。
「囲まれてる!気をつけて!」
こちらに気づいたムラ人の一人が叫ぶ。
言われてハッとして周りをよく観察した。
そこでようやく理解した。
今まで暗くてよく分からなかったが、よくよく見てみると自分達が柱だと思っていたものは魔物の足だったのだ。
ゆっくり柱を見上げ、人型のシルエットを認識した瞬間、アナライズが立ち上がる。
こいつはオーガだ。
(しまった!全体をしっかり認識しないとアナライズが作動しないのか!)
(…そういえばケルベロスの時もゴブリンの時も、しっかり視認した時にアナライズが作動したじゃないか!俺のバカバカバカ!)
「皆、オーガに囲まれてる!方円陣を組んで防御に徹しろ!俺が突破口を開く!」
「はい!」
命令すると、戦士達は迅速に陣形を組んだ。
(オーガは10体。戦士達が耐えている間に俺が数を減らさねば)
俺はまず左にいたオーガに斬りかかる。
オーガは全て身長3m以上はありそうな巨体。
しかし、俺は巨人の弱点を知っていた。
「弁慶の泣き所だあ!」
オーガの左脛を袈裟斬り、即座に下から返して右脛を斬った!
「グギャアァァ!」
オーガがたまらず悲鳴をあげ崩れ落ちる。
頭を下げた所で渾身の兜割を打ち込む!
ズバァッ!!
オーガの頭は真っ二つに割れ、ボトボトと脳みそをぶち撒ける。
(うげっ!きもちわるっ!でも一体やった!)
続けて右にいるオーガに斬りかかろうとしたが既に臨戦体制に入っていた。
そう易々とはやらせてもらえないようだ。
(時間をかけると本当に囲まれるな)
周りのオーガがジリジリと近づいてきている。
戦士達の攻防を見ると、オーガは単調な攻撃を繰り返している。動きも緩慢だ。
(これなら!)
俺は右のオーガが攻撃しようと棍棒を振りかぶった隙をつき、オーガの左後方に向かって走り抜けた。
鋭い横薙ぎで脛を斬る。
スパッ!
なんと俺の放った斬撃は脛どころか足を断っていた。
(おお、これは修行の成果だな)
そして頭を下げたオーガにすぐさま兜割。
二体目討伐。
(おれちゃんやるじゃん)
そして次の目標を目の前の二体に定める。
敵に向かって踏み出そうとするが、オーガが先に攻撃してきた。
一体が横振り、もう一体が縦振りで同時攻撃だ。
(え、ちょまっ!)
ブォン!
ブゥン!
ドガッ!
間一髪後ろに跳んで攻撃を避けたが、その攻撃で抉れた地面を見て嫌な汗が出る。
(こんなん一発喰らったらもう死ぬやん)
考えている暇はない。
攻撃後の隙をつき、縦振りオーガの頭を割る。
横振りオーガは次の攻撃体勢に入っていたが、俺の脛斬りの方が速かった。
「ゲェエヒィィ」
頭を割ってサクッとトドメを刺す。
「グェ」
「ふう」
四体のオーガをなんとか倒した俺は戦士達の方を振り返った。
…なんと戦士達は全滅していた。
死んではいないようだが全員虫の息でとても戦える状態ではない。
(だいぶマズイ。残り六体だぞ。無理じゃないかコレ)
六体のオーガは戦闘不能の戦士達に攻撃するのをやめ、ドスドスとこちらに向かってきた。
(まあそうなるよねえ)
迫るオーガを前に、どこから攻めたものか思案していたその時。
「キキィッ」
突然俺達が入ってきた道から大きな猿が物凄い勢いで走り込んできて、オーガの頭を引っ叩いた!
バァチイィィィン!!
すると、オーガの頭がブチっと千切れて飛んでった!
(なんぞ!?)
壁で潰れたオーガの頭を呆けて眺めていると、バァチィン!という音と共に二個目の頭が飛んできた!
「ヒィッ!」
壁にぶつかりトマトのように潰れた二つの頭を見て、思わず嫌な記憶がフラッシュバックする。
と、背後でバキッと嫌な音がした。
振り返ると猿がオーガに反撃され、棍棒で左腕を叩き折られていた。
しかし残った腕で一体のオーガに致命傷を与えているようだ。
(なんだかよく分からんが今がチャンスだ!まずはオーガを倒す!)
猿に気を取られ混乱している隙に、残った三体の足をスパパパッと手早く切断する。
後は猿が一体、俺が二体にトドメを刺し、なんとか全てのオーガを無力化することに成功したのだった。




