もう一つの依頼
宮を出て数日後、小鬼に襲われているというムラに着いた。
(けっこう遠かったなあ…チカレタ)
連れの戦士を見ると、全然平気そうだ。
(はえー、すっごい体力)
この世界の移動は徒歩が基本だとはいえ、遠征が初めての俺はヘトヘトだった。
ムラを見ると今は小鬼は引いているらしく、戦闘は起こっていないようだ。
中に入りひと休みした後、人々に聞き込みをしていると一人の娘が声をかけてきた。
「あの、もしかしてあなた様がイサ様でしょうか」
娘は恥ずかしそうに頬を赤らめモジモジしている。
好きな人に告白する時のあの感じだ。
(つくづく罪な身体だぜ。ふっ)
元の身体のコンプレックスのせいで、ついついナルシストになってしまう。
「そうですよ。何かご用でしょうか」
いたってクールに答える。
「あの…イサ様にお願いがありお声掛けしたのですが…」
「はい、遠慮なくおっしゃって下さい」
「実は最近このムラには小鬼だけでなく人攫いが出るようになり、つい先日私の友人まで攫われてしまったのです」
「ほう」
「どうか攫われたムラの人達を助けてはいただけませんか?」
娘は胸の前で手を結び、潤んだ瞳で見上げてくる。
(これは断れませんな。へっへっへ)
(いや待て、何を期待している。煩悩を断ち切らないと魂の浄化ができないぞ)
頭の中で天使と悪魔が葛藤し、なんとか天使が勝利する。
「承知しました。ムラムラ…いえ、ムラの方々は私が必ず助けましょう」
「あ、ありがとうございます!その場にたまたま居合わせた者は、大きな猿のような化け物が攫っていったと申しておりました」
「猿…ですか。どちらに向かったか分かりますか?」
「化け物は北の森の方角に逃げていったという話です」
「分かりました。任せて下さい」
「よろしくお願いいたします」
…娘と別れ、聞き込みも終了した。
どうやら小鬼も北の森からやってくるらしい。
(まとめて相手することになったら厄介かもしれないな)
初めての実戦に若干不安を覚えつつ、ムラを出た。




