依頼
ケルベロスとの邂逅から3年後。
18になった俺は、これまで一心不乱に剣を修行してきたおかげで黒田では右に出る者がいないほどの剣の達人になった。
同時に身体も鍛えに鍛え、長身で無駄の無い筋肉質の身体も手に入れていた。
元の世界ではデブチビハゲメガネデブだったのが嘘のようだ。
街を歩けば女子が必ず振り返り、黄色の声援を送ってくる。
(ああ、この身体が本当の自分の身体じゃないのが惜しい。惜しいなあ。惜しいなあ)
しみじみそう思った。
そしてこの身体は視力もすこぶる良い。
数キロ先の少動物が判別できるほどだ。
つくづく素晴らしい肉体だ。
そんな折、父に初めての魔物討伐任務を命じられた。
「イサよ。西にあるムラを少し前から小鬼の集団が襲っているとの報告があった」
「今はムラの戦士だけでも何とか被害を食い止められているようだが、徐々に小鬼の数が増えてきて手に負えなくなってきておるそうだ」
「お前は我が息子達の中で一番剣の腕が立つ。手遅れになる前に小鬼討伐に行って欲しい」
「はい。心得ました」
「小鬼の討伐なぞお前なら造作もないとは思うが、念のためこれを持って行け」
父に何かの包みを渡される。
「これは何でしょう?」
「食べればどんな傷でも忽ち癒してしまう霊薬だ。肉体だけでなく精神の異常も元通りにする、文字通りの万能薬と言っていい」
「そんな薬が?それは…素晴らしい薬ですね」
「うむ。ただ、一つ忠告がある」
「何でございましょう」
「良薬口に苦しとよく言うが、その霊薬は甘くこの世のものとは思えないぐらい美味なのだ。だからといって無駄に食すでないぞ。貴重な薬ゆえ少数しか作れないのでな」
「承知しました。気をつけます」
「ではゆけ。吉報を待っておるぞ」
「はい、行ってまいります、父上」
そうして俺は数人の戦士を引き連れ、西のムラへ出発した。




