転生
「ねえねえ由佳たん知ってる?この太鼓橋をカップルで渡ると、そのカップルは必ず別れるって話」
「もちろん知ってるよ」
俺は由佳に誘われて太宰府天満宮に来ていた。
今後の作戦が上手くいくようにお参りしようと言われ連れ出されたのだ。
「ぼく由佳たんと別れたくないー!」
俺には由佳の前で幼児化する持病がある。
「周りに人がいないからって突然発狂するな!それに今まで何度も渡ったことあるだろ!」
「そりゃそうなんだけどさー。なんか不安じゃん?どっちか死んじゃうとか」
「縁起でもないこと言わないの!ほら、お参りお参り!」
由佳に嗜められながらお清めをして参拝する。
(どうか日本から魔物がいなくなって平和になりますように)
願いを込めて深々と頭を下げた瞬間、強烈な風が吹いた。
「それはおぬしが為すべきことぢゃ」
振り返ると着物のちんちくりんな爺さんがいた。
「誰がちんちくりんぢゃ。失敬なやつめ」
「????」
(しまった。顔に出てたか)
「道真様。お約束通り善訓を連れてきました」
「うむ、ご苦労であった」
(え、どういうこと?話がわからん…)
「いやいや、ちょっとおぬしに用があっての。由佳に頼んで連れてきてもらったのぢゃ」
「は、はあ」
「いと古き神魂、建御名方よ!今のおぬしは魂が穢れておる!魂の浄化の旅に出るのぢゃ!」
「……は?」
(何言ってだこいつ…)
「道真様、いったいどういうことでございますか?」
由佳が質問する。
「ふむ、今の日本の状況からして只事ではないとは思っておったが…」
道真と呼ばれた老人は観察するようにジッと俺を見ている。
「おぬし、幼い時分に記憶を失うようなことがあったな?」
「なぜそれを…」
確かに小さい頃トラックに撥ねられ、一時的に記憶喪失の症状が出たことがある。
でもそれはあくまで一時的なことであってすぐに快復した。
「ふむ…。よいか、心して聴け。おぬしはその時に悪神から前世の記憶を封印されたのぢゃ。その前世というのが古き神々が一柱である建御名方なのぢゃ!」
「本来はおぬしがこの国を守護する使命を担っておったが、おぬしは力をなくしておるので今は大国主が代わりをしておる」
「由佳、帰ろう」
由佳の手を引き歩き出す。
(付き合ってられんわ…)
「かあぁぁぁつ!!!」
突然老人が叫んだ。
「くっ!?」
(体が動かん!)
由佳も動けないようだ。
(おいおい、なんだこれ!)
老人が話を続ける。
「しかし大国主ではやはり力不足なのぢゃ。現に東京は滅びてしもうた。せめて日本以外に被害が拡大しないように障壁で魔物を閉じ込めたようぢゃが…」
「魔物を操る者を止めねばこの事態は治まらんというわけなのぢゃ!そしてそれが出来るのは建御名方の化身であり御柱である、おぬしだけだと言うておるのぢゃ!」
(御柱…?どういう…)
「…しかし記憶を封印されこの世の煩悩に塗れた今のおぬしでは、魂が穢れてしもうて本来の力を発揮することができん」
「まずはその穢れた魂を浄化せねばならん」
老人が何やら手で印を結び、その手をこちらに向けた。
「ふんぬっ!」
老人が掛け声を発したその時。
…周囲から音が消えた。
…続いて色が消えた。
(なんだ…これは…!)
白黒の世界で頭に直接声が響いてきた。
″これよりおぬしの魂を異界へ飛ばす。そこで善く生き自己の研鑽に努めよ。さすればおぬしの魂は浄化され、日ノ本に救いの道は開かれん″
…世界が溶けていく。




