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断罪返しで罪を着せられる王子と普通に断罪される令嬢の物語。

作者: 卜ミモザ

誤字脱字等があればご報告下さい。

「アンドリア・ニエ・クリジャ!

貴様との婚約をこの場で破棄する!」


わたくしの婚約者であるレイド・ローニア・トメイル第一王子はそう高らかに宣言致しました。


周りの方々は驚きを隠せない様子でこちらを見てらっしゃいます。


「レイド様…それはどうしてですの?」

「貴様がこちらのヨリ・スタイド令嬢に嫌がらせをしたとの報告が止まないのだ。

私は貴様のような我が国の恥とも言えるような奴の婚約者でいることは我慢ならぬ。

これからはヨリを私の婚約者とする。

父上と母上には私が後々申しておく。」

「レイドさま…!」


嫌がらせ…。

あのような破廉恥な女に嫌がらせ…。

…ええ、していましたとも。

彼が言ったことは本当のことです。

だけれど本当に些細な嫌がらせですわ。

婚約破棄までいくような嫌がらせではないはずです。

わたくしがやったという情報…どちらから漏れ出したのでしょうか。


「レイドさま…えっと、この場に居る皆様にあの女がやったことを教えてやってくださいっ

わたし、許せないですっ」

「可哀想なヨリ…

いいだろう、この親切な私が教えてやろうではないか。」


あら、わたくしのほうから訊く前に話してくださるようですね。


「クリジャ侯爵令嬢はヨリの私物を修復不可能になるまで破壊し続けた。

休み時間ごとに彼女は暴言をよりに吐き、魔法の実習授業では攻撃を仕掛けてきた。

全て人間的道徳を理解していないかの行動だ。

他にも人道的ではない行為はあるがヨリの名誉のためにもここら辺にしておく。」

「…御言葉ですがレイド様、わたくしは暴言など吐いておりませんわ。

私はただ、『庶民風情がレイド様に近づかないで頂戴』と忠告しただけであります。

当たり前でしょう?

王族という高貴なお方なのですから。

それに器物の破損や実習授業のことだって全ては偶然的に起きたことだと言っているではありませんか。」


ざわっ

会場がざわめきに包まれる。


「皆様もわたくしの言い分に賛同しているようですけれど。

何か文句はありますか?」


誰かが呟く。

「誰も賛同してねえよ」

その言葉に周りの人々は激しく首を上下に振る。

もっとも、裏で我儘令嬢、自己中令嬢などと呼ばれている彼女には聞こえていないようだが。


「むう…忠告か…成程。

納得した。

それよりお前ら、私は起きたことが偶然だなんていう報告は受けていないぞ?

この役立たずがっ

貴様らのせいで恥かいたじゃないか。」

「もっ、申し訳ございません!!」

「で、ですが…殿下、一言よろしいでしょうか。」

「あん?何だ。申してみよ。」

「彼女の言い分を鵜呑みにしてもよろしいのでしょうか…

それに加害者の話より被害者のヨリ様のお話を伺った方が…」

「うむっ!

そうだな!

ヨリ!改めて君の真実を話してくれたまえ。」


何ですって!?

わたくしの話より何処の馬の骨かわからない女の話の方が信憑性高いって仰いたいのっ!?

んまあああああ!

ありえませんわっ。

わたくしにそのような無礼なことを申し上げることが信じられませんわ。

そのような方を護衛として置いておくレイド様も信じられませんわ。


「え、わたしも話すんですか…」

「どうしたヨリ、はっきり申し上げてみないか。」

「は、はい。

確かに私…アンドリア様にイジメを受けてましたっ!」

「成程。

話してくれてありがとう。

さあ皆、これで彼女がそこにいる女に蔑まれたということがわかったぞ!

この上であいつの味方をしようという奴はいるか?」


なんてこと…。

わたくしは幼少期からレイド様の良き妻になるために、良き王妃になるために様々な訓練や学習を積んできました。

ですがその努力も全て…無意味だったとでもいうのでしょうか。


「まだ…まだ目が覚めてらっしゃらないのですか、殿下…!

殿下!

もう一度わたくしの目を真っ直ぐ見てくださいまし!

出会った頃の貴方はそのような汚い目でわたくしを見てはいませんでしたわ!

かわいそうな殿下…その豚娘の手によって汚れてしまったなんて…

わたくしがそれを正して差し上げますわ!!」


そんな言葉を放った途端、我儘令嬢はスタイド令嬢に襲い掛かる


「きゃあっっっっ!」


周りの人はそれをそれを止めようともしない

女子同士の醜い争いだから…ではなく必ずあの方が止めに入ることを知っていたからだ


「やめろ」


「!?」

「ローレン…。」

「ローレン様…。」


「ローレン様がいらっしゃったからにはもう安心だな。」

「早くあの馬鹿どもをなんとかしてください」

観衆はほっと一息つき、雑談を始める。

ローレン・ラーニア・トメイル第二王子。

トメイル王国の王太子である。



なんで…今ローレンが来るのよ…!!!

わたくしの邪魔をしないで頂戴なさい!


「ローレン、そこをおどきになって頂戴。」

「悪いがクリジャ令嬢、それはできぬ。」

「なんですってっ?

早く退きなさいよ!

レイド様よりずっと劣っている失敗作王子!!!!」


ざわっ

群衆がざわめく。


「貴様…今我になんと言った?」

「何回言ったら理解するの?

駄作っ!!」

「よせ!アンドリア…」


王子が注意するには遅すぎた。

彼が言葉を放ったとには既に令嬢のしっかりと手入れされた髪の毛が床に落ちていた。

髪は女の命。

すなわち、今、クリジャ嬢の命は絶えたのだ。


「きゃあああああ!!!

あんたっ!

わたくしの髪の毛をっ!」

「令嬢。

貴様は我がどの立場にいるのかも知らぬのか?

我はこの国の王太子ぞ。」

「王太子!?」


そんなこと…聞いてないわ!

なんで…。

レイドが王太子になるんじゃなかったの?

ふざけるんじゃないわよ!!!

そうよ、きっとあいつの戯言よ。


令嬢の顔の色は青色に染まったかと思えば、すぐに真っ赤に染まった。


「兄上。

我の婚約者に手を出したのか?」

「ローレン…いや、これは、その…だな、」

「出したのか?

出してないのか?

はっきりしてくれたまえ。」

「…出した。」

「そうか、兄上も落ちぶれたものだな。

王太子の婚約者に手を出すとは。

そこまでして王太子の座に戻りたかったのか?

哀れだな。

聖女を婚約者にしたとて、状況が変わることはないというのに。」

「ローレン…

悪かった!

頼む!

この通りだ!

アンドリアには何をしてもいい!だから、せめて私を助けてくれ!」

「レイド様!?

ひ…ひどいですわ!

ローレン様、さっきわたくしが言ったことは全て水に流して、仲良くして下さらない?

こんな男、もう放っといていいですから。

ね?また昔のように義姉上(あねうえ)と読んでくださいまし?」


二人は頭を床に擦り付けるんじゃないかという勢いで王太子に許しを乞うた。


「兄上…いや、レイドよ。

貴様はつくづく人間のゴミだと我は思う。

アンドリア。

悪いが我には貴様を義姉上と読んだ記憶は何処にもない。

罵倒され続けた記憶は確かにあるのにな。」


二人が息を呑む。

その様子を群衆は面白そうに見ている。

彼らはきっとこの騒動を劇か何かと勘違いしているのであろう。


「よって二人には我から罪を課す。

レイド・ローニア・トメイル。

貴様は北の辺境の地で死ぬまで我が国に奉公させてやろう。

罪は我の婚約者に言い寄ったこと。

我が生まれた時から我を侮辱し、罵倒し続けてきたこと。

婚約者がいるのにも関わらず、様々な女性と無理やり交際をし、挙句のはてに傷物にしたこと。

エトセトラエトセトラ。

アンドリア・ニエ・クリジャ。

貴様には国外追放の罪を課す。

罪は我の婚約者を罵倒したこと。

我を罵倒したこと。

気に入らない女を虐め通したこと。

エトセトラエトセトラ。


トメイル王国第二王子兼王太子であるローレン・ラーニア・トメイルが

ここに決定を言い渡す。」


そん…な。

国外追放ですって?

わたくしを、庶民の位に落とすと。

わたくしに惨めな暮らしをしろと?


「ローレン!!

貴様!

はかったな!!!」


二人は騎士に引き摺られて扉の外へと消えていった。

これでこの国にも平和が訪れた。

建国以来、あの二人は一番タチの悪い国民だった。

我儘令嬢に我儘王子。

馬鹿令嬢と馬鹿王子。

二人の運命は断罪で終わった。


「ヨリ。

大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですわ。

あの…わたくし、上手にお芝居できてました?」

「ああ、上出来だった。

こんなことに手伝わせてしまってすまなかったな。」





断罪しようとした王子は断罪され、彼の人生は幕を閉じたのであった。

令嬢にはそれまでの行いへ断罪という形で天罰が下された。

のちに、この物語はローレン王の英雄伝として語り継がれることとなる。

国には平和が戻り、現国王の悩みはなくなり、皆、皆幸せになりましたとさ。

めでたし、めでたし。

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読んでいただきありがとうございました。

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