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 小鉄に身を守るために必要なものを準備してもらいなんとか極夜との約束の時間までに一通り身を守るための護符や人形などを作り終えることができた。


小鉄は見た目のわりには大人っぽく態度も子供のそれとは違う。


紫苑の側に控えている時は童子の姿をしており、あのもふもふの毛並みを撫でられないのは非常に残念だ。


「何か御用でしょうか?」


もう一度小狐の可愛らしい姿になってくれないかな〜と淡い期待を持って小鉄を眺めていたら、さすがに見つめすぎたらしく小鉄が怪訝な表情でこちらを見ている。


「俄の本祭ってどんなことするのかな〜っと思って!」


なんとか誤魔化すためにこれから極夜と行く予定の本祭について聞いてみると小鉄は疑うことなく素直に答える。


「今年は鬼と猫の御当主様がご出席されますので、夢幻楼の横にある空いた空間に儀式用の拝殿が用意されています。そこで三身の加護をこの園に授け、その後に妖狐と鬼の一族の間の協定を締結する予定です」


「加護を授けるって具体的にはどんなことをするの?」


「加護の授け方はそれぞれの一族によって異なります。我ら妖狐の一族は御当主が舞を納めます。鬼の一族は私も見たことはございませんが、笛を奏でるようですね。妖猫の一族は鼓を打つと聞いたことがあります」


「それって奉納演舞のようなもの?」


「そう思っていただいて良いと思います。本来であれば七妖の御当主全員が揃って年に一度、下の里全域に加護授けを行っていたようですが、ここ千年以上前から御当主様たち全員が揃うことはなく、今では各々の管理している下の里の地区に個別で行っているのが現状ですね」


この幽世に来てからなんとなくだが七妖の里のことを耳にしてはきたが、紫苑が想像しているより各里同士の関係性は複雑そうだ。


「じゃあ、今年は御当主が三人も集まって加護を授けてくれるなんて、きっとすごいことなんでしょう?」


「そうですね、なのでその加護にあやかりたいと下の里の各地区より妖たちが押し寄せてきています。実際に御当主様方が演舞を行う拝殿の様子を観れるのはほんのひと握りの限られた方々のみですがね」


「え……じゃあ、私たちはどこから観ることになるんだろう……」


紫苑が想像していたより俄の本祭には多数の妖たちが参加するらしく紫苑は少し不安になる。


「大丈夫です。極夜様は月天様の演舞の際に伴奏で入りますのでどこか裏の方で安全な席を用意されているのでしょう」


小鉄と話しているとあっという間に極夜が迎えにくると言っていた時間になる。


「準備はできてる?」


毎度のことながらいきなり気配も表さずに部屋に入ってきた極夜は、袴に小袖姿の小間使いのような格好をした紫苑を頭から足の先まで観察するようにみる。


「そういう格好すると男に見えなくもないね」


極夜が悪びれた様子もなく言うものだから紫苑はがくっと肩を落とす。


(仮にも女性である私に言う言葉じゃないよね……)


「これから夢幻楼を出て拝殿に行くんだけど、一応月天様には秘密であんたを連れ出すわけだからいくつか術をかけさせてもらうよ」


極夜はそういうと手早く印を結び紫苑に術をかける。


「なんの術をかけたんですか?」


「うん?あんたが無断で逃げ出したらその心臓を握り潰す術と他者から見えにくくする術」


極夜が今まで見た中で一番の笑顔を向けてくる。


紫苑が思わず表情を引き攣らせていると小鉄が極夜を諌めるように名を呼ぶ。


「極夜様……」


「あー、はいはい。本当はあんたが万が一危険に晒されたときにすぐに場所が分かるようになる術をかけただけ。月天様のお気に入りのあんたを殺すほど僕も馬鹿じゃないよ。それより時間がないから行こう」


そう言うと極夜は紫苑の片手を握ると、いきなり術を使う。


いきなりのことでこれからどうすれば良いのか慌てていると極夜に大人しくしててと嫌そうな顔を向けられた。


極夜に従って大人しく側に立っていると自分と極夜の周りを白い霧のようなものが包むように立ち込め、霧が晴れると先ほどまでいた座敷ではなくどこか控え室のような小さな部屋に変わっていた。


部屋の外からは廊下を行き交う足音や楽器の音色が聞こえてくる。


「ここは拝殿の横にある物置なんだけど、そこの小さい格子窓から拝殿の様子が見えるからあんたはここで大人しく見物しててね」


「え!私ずっとここにいるだけなんですか?」


紫苑はてっきり外に出られると思っていたので、拝殿内の小さな部屋から出るなと言われ落胆する。


「当たり前、僕は演舞が始まれば伴奏で近くにいられないんだから。ここに誰かがくることは絶対にないから扉を叩く音がしても決して出ないようにね、あと名前を聞かれても絶対に答えないでね」


捲し立てるように注意事項を言う極夜に質問をしようとするが、部屋の外から誰かが極夜を探す声が聞こえてきて極夜は紫苑を残してさっさと部屋を出て行ってしまった。



「はぁ〜こんなんじゃ夢幻楼にいるのと変わらないじゃない」


「ですから反対したのですよ」


紫苑がてっきり一人きりだと思って呟いた言葉にここにいないはずの小鉄の返事が返ってくる。


驚いて声をした方を見ると小狐姿の小鉄が格子窓の狭い隙間から体を拗らせて入ってくるところだった。


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