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 月天が曼珠の園の内にある四隅の神社に加護を授けに行っている間、曙楼では妖猫の当主である琥珀が陽乃穢の所に滞在していた。


琥珀が滞在している部屋は大きな通りに面した二階の部屋で陽の明るい内はほとんどの窓が開けられ部屋中に光が差し込んでいる。


琥珀は自身の側近である燈惚とうこつと何やら真剣な表情で話し込んでいる。


「白桜様と蒼紫は本祭の儀式が始まって夢幻楼が手薄になったところを狙うのではないかと思います」


「いくら蒼紫といえども月天の術がかけられている夢幻楼に忍び込んで彼女を連れ出すのは無理じゃないか?」


「白桜様の神通力を使えば月天様がいくら巧妙に紫苑様を隠しても見つかるでしょう。鬼の一族は失せ物を見つけ出すのは得意ですから」


「白桜のもつ天眼か……確かにあの術を使えばいくら月天といえども隠し通すのは無理だな」


「いかがします?月天様に白桜様らの動きを教えますか?」


琥珀は両腕を組んでしばらく考え込むと顔を横に振り否定する。


「いいや、ここで我ら妖猫の一族が妖狐の一族に肩入れしたとなると七妖の均衡が崩れる可能性がある。あくまで我が里は中立の立場、こちらに被害がない分は静観しよう」


琥珀たちの話がちょうどきりがつくと、見計ったように陽乃穢が部屋に入ってくる。


「あらあら、琥珀様たちは今日も難しいお話をしてるご様子」


「そんなことはないさ、それより日が高いうちに来るんなんて珍しいな」


「実は幻灯楼の小雪からお願い事をされまして……」


「その話聞かせてくれる?」


琥珀がにやりと悪戯っ子のような笑みを浮かべて陽乃穢の言葉に耳を傾ける。


 実は今朝、幻灯楼に白桜と側近の蒼紫が来ていたようで小雪の禿であった観月を目当てに自室に引っ込んでいた小雪のところまでやってきたらしい。


立て続けに当主が紫苑に関係してくると、さすがに小雪は紫苑は両者から狙われているのでは?と思い七妖の中でも中立の立場にある琥珀に力を貸してくれないかと言ってきたのだ。


「観月さん、いや紫苑様と言った方が正しいですね。やはり自分が面倒を見ていた禿ですからどうにかして人の世に戻してやりたいと思っているようです」


「う〜ん、なるほどね。けど、さすがに月天が囲ってるものを横取りする訳にはいかないからね。紫苑ちゃんが自ら妖猫の里に逃げ込んできたなら話は別だけど」


琥珀がどうしたものかと考えていると側に控えていた燈惚が琥珀の側に寄り囁く。


「蒼紫が紫苑様を連れ出そうとしていることを小雪花魁に教えてはいかがでしょうか?小雪花魁たちと鬼の一族が揉め事を起こす分には我らは関係ありません。それに上手くいけば月天様に恩を売ることもできましょう」


琥珀は燈惚の提案をどうするべきが考えるが、妖猫の里の利益よりも、普段は全く表情を変えない白桜や月天がたった一人の女を巡って振り回されている様子を想像し好奇心を抑えられずに提案を飲むことにした。


「陽乃穢、小雪花魁に手紙を一通届けてくれるかい?その手紙はきっと小雪花魁の力になるだろうから」


そう言うと琥珀はすぐに一通の手紙をしたため陽乃穢に渡す。


陽乃穢はすぐに手紙を使い魔に託すとこれから起きるであろう騒動に心を痛めるのであった。


◇◇◇


 今朝はいきなり鬼の当主である白桜がやってきて小雪といえども肝を冷やした。


幸い紫苑はもうここにはいないと告げると何をするでもなくあっさりと引き下がってくれたので幻灯楼はなんの被害も出ずに済んだが。


「姉さん、観月姉さんのことはどうするつもりでありんすか?」


先ほど目覚めた紅は布団から体を起こし小雪に問いかける。


「観月のことは心配しなくても良い。お前はまずは自分が元気になることだけ考えてな」


小雪は微笑みながらそう言うと紅の頭を撫でてやる。


「今日と明日は見世は鬼の一族が総仕舞いをつけてるから心配せずに寝てな。わっちは少しばかり用事があるから凛、紅のことは頼んだよ」


そう言うと小雪は部屋を出て行った。



小雪が部屋を後にして向かったのは、幻灯楼の裏手にある細い路地だ。


明るい時間に連絡用の使い魔が出入りする姿を見られると色々と面倒なので夜以外はこの裏路地で手紙のやりとりをすることが多い。


小雪の元には一通の手紙を持ったなんとも不気味な黒い人影が立っている。


靄のように黒い霧がゆらめくような人影は手紙を小雪に渡すと裏路地の闇の中へと姿を消す。


「陽乃穢が式を使って寄越すだなんてよほどの内容なんだろうね……」


いつもならば連絡用には鴉などを使うのだが、今回小雪の元に来たのは陽乃穢が自分の術で作りだした式神だ。


小雪は手紙の封に目を向けるとそれは陽乃穢のものではなく、妖猫の一族の花紋が押されていた。


すぐに琥珀からの手紙だと察し、小雪はあたりに誰の気配もないことを確認して手紙の内容を確かめる。


手紙には紫苑のことはできる範囲では協力するとは書かれているものも、直接琥珀の力を借りるのは無理そうだった。


しかし、手紙には、今日の夕刻から行われる本祭の儀式の際に、蒼紫が夢幻楼にいる紫苑を連れ出そうとしていると書かれていた。


(紫苑を夢幻楼から助け出すなら、蒼紫が紫苑を連れ出した時しか機会はない……)


小雪は一通り手紙の内容を読み終えると早速その足で楼主の元へと向かった。

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