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 紫苑がなんとか御当主様と距離をとりドキドキと今にも飛び出してしまいそうな自分の心臓を落ち着かせていると御当主様は脇息にもたれかかり嬉しそうな顔をしてこちらを見てくる。


「私のことは月天そうまと呼んでくれ」


「え……?」


「だから私のことは月天と呼ぶんだ」


「いえ、あの……御当主様をそのような……呼び捨てにするなど」


紫苑はいきなり自分のことを呼び捨てで呼べと言ってくる目の前の人物を見ていよいよ訳が分からなくなってくる。


「私たちは夫婦となるのだ、妻が夫のことを呼び捨てにして何が悪い?」


「いや、立場というものが……って!えぇー!!!」


当たり前のことのようにしれっとした態度で言い放った言葉に紫苑は今日一番と言っても過言ではないほどの衝撃を受ける。


「誰と誰が夫婦になるのですか?」


「紫苑と私が夫婦になるのだ」


「……」


紫苑はあまりの展開についていけずについに現実逃避を始める。


ふらふらとその場から立ち上がり中庭が見える場所に座るとぶつぶつと何かを呟きながら月天に背を向ける。


月天が紫苑に自分のそばに戻って来るようにというが現実逃避している紫苑の耳には届かない。


「仕方がない奴だ……」


月天はその場から立ち上がると紫苑の後ろに座り紫苑を抱きしめそっと耳元で囁く。


「私を無視するとはいい度胸だ……きついお仕置きが必要かな?」


色っぽく耳元で囁かれ、紫苑は両手で耳を塞いでその場で飛び上がる。


「わ、私を揶揄っているのですか!?」


恥ずかしさや緊張など色々なものがごちゃ混ぜになって思わず月天を突き飛ばしてしまったが、自分が言った台詞に既視感を覚える。


(あれ?この台詞前にも言ったことがあったような……)


紫苑に突き飛ばされて畳の上に転がる月天はその場でごろんと体制を変えて横になりながら面白そうな笑みを浮かべてこちらを見ている。


「あ……そうだ。宗介様にも同じことを言ったんだ……」


紫苑は今まで感じた既視感の正体がわかると思わず口に出して言ってしまう。


それを聞いていた月天は身を起こす。


「夫となる者の前で他の男の名を口にするのは感心しないな」


月天はそういうといつの間にか紫苑との距離を詰め、紫苑の細い腰に腕を回す。


「君の口から紡がれる名は私のものだけでいい」


囁くようにかけられた言葉に紫苑は顔を赤くし、力任せに月天を押しのける。


月天はそんな紫苑の様子を面白がるかのようにして抱きすくめていると、抵抗する紫苑の手が月天の着物に引っかかり思わず右肩がはだけてしまう。


月天もはだけた右肩には以前見た宗介の右肩にあった紋様と全く同じものが刻まれていた。


「え……その紋様は」


「あぁ、そういえば以前見られてしまったんだったな」


月天は微笑むと術を使い宗介の姿に化けた。


紫苑があまりにも色々とありすぎて混乱していると月天は側に寄って、よしよしと紫苑の頭を撫でる。


「宗介とは私が曼珠の園へ降りるために作った存在だ。実際にそのような者はいない」


「今まで私たちを騙していたんですか!?」


紫苑が徐々に冷静さを取り戻してくると、今まで宗介と過ごしたことを思い出して悔しさやら悲しさやらが込み上げてくる。


「よせよせ、泣かないでおくれ。流石にこの姿のままでは下の里では目立ちすぎる。紫苑を騙そうとしたわけではないんだよ。それに小雪花魁は途中から気付いていたようだ」


月天は瞳に涙を溜めて自分を睨みつける紫苑をあやすように猫撫で声で機嫌を伺う。


紫苑がなんとか落ち着きを取り戻すと、月天と距離をとって座り直す。


自分の側から紫苑が離れて座ったため月天が側に行こうと手をつくが紫苑の言葉でそれを止められる。


「それ以上近寄らないでください。まずはきちんと全てお話してください。そうじゃなければ私は自力でここを去ります」


 紫苑が真剣な表情で月天を見つめてそういうと月天は参ったなぁ……と呟き頭にある耳をぽりぽりとかく。


「仕方がない。本当はもう少し落ち着いてからと思っていたが……本当のことを全て話そう」


月天はそういうと話が少し長くなるからこちらにおいでと自分の近くに大きく分厚い座布団を用意して手招きする。


紫苑は一瞬躊躇うがここで拒否しても意味がないと思い従う。


「私と紫苑の出会いは今から百三十年以上前のことになる……」


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