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小雪たちが驚いて声を失っていると、後ろから覗き込んでいた楓がこれはこれは……と興味津々な様子で小雪たちを押しのけて紫苑のすぐそばに座る。
「ちょっと!あんた変なことしたらこの場で氷漬けにするからね!」
紫苑の側から押しのけられてしまった小雪はムッとした表情をしつつも、楓が興味深そうに紫苑の瞳や様子を伺っているのを黙って見守る。
「ではでは、背中にあるという呪印の方を見せてもらえるかな」
楓はそういうと遠慮なしに布団に力なく横たわる紫苑を雑にゴロンとうつ伏せに返すと無遠慮に着物を脱がそうとしてくる。
それを見ていた小雪は急になんてことするんだ!と楓の頭を勢いよく殴りつけ、凛と紅は急いで紫苑の着物を整える。
「あんた、わっちらの目の前でいい度胸だね……」
ひくひくと引き攣った笑みを浮かべながら拳を握る小雪に楓は慌ててこれは身体の状態を見るために必要なことで、と必死に説明する。
なんとか説明をして小雪たちに怒りをおさめてもらうと、小雪は渋々ながらも仕方がないと言い紫苑に声をかけてから背中の呪印が見えるように着物を腰のあたりまで下ろす。
紫苑の背中にある呪印は小雪が初めて紫苑の背中を見た時よりも色が徐々に薄くなってきているようで、腰のあたりに描かれている流水模様が掠れてきている。
「なるほど、なるほど」
楓は紫苑の背中にある呪印を一通り不思議な術具を使って観察し終えると、もう着物を着てもらっていいよと紫苑の側に付き添う凛と紅にいう。
「小雪花魁、ここではなんだからちょっと二人で話せないかい?」
楓がそう言うと小雪は何かを察したようにわっちの部屋で話そうと楓を自室へと連れていく。
「で、観月の状態はどうなんだい?」
小雪の自室に着くと小雪は急いで結界を張り、自分と少し距離を置いて座る楓に紫苑の様子を伺う。
「状況だけで言うなら、かなりまずいことになってるね。まず、彼女の背中にある呪印だけどあれは妖怪を封印する呪印でしかもかなり力のある妖怪の存在ごと封印している」
小雪は自分が思っていたよりもかなり悪い方向に話が進み、混乱しながらも楓に続きを促す。
「可能性としては、彼女の身体を依代に強力な力を持った鬼を封印したか……そもそも彼女自身が純粋な人の子ではなく鬼の血が流れる混血児だったかってことになると思う。可能性で言ったら人柱として鬼を封印するのに彼女の体が使われていると考えた方がいいだろうね」
楓がそこまで言うと小雪はそんな訳あるはずがないだろう!と今にも楓の胸ぐらを掴みかかりそうな勢いで立ち上がる。
楓は動揺することなく、小雪にまだ話は終わっていないから少し落ち着いてくださいと宥めるとさらに話を続ける。
「呪印の状態を特殊な道具を使って見て見ましたが、効力が切れるまであとひと月ほどでしょう……もし、彼女の身体を依代に鬼が封じ込められている場合は呪印が解かれれば封印されている鬼が彼女の身体を食い破り彼女は死ぬことになるでしょう」
「ちょっと、待っておくれよ……あの呪印をつけたのはあの子の母親だよ?実の親が自分の娘にそんなこと……」
小雪は信じられないと唖然とした表情で口元に手をやる。
「そして言いにくいことだけど……あの呪印はかなり特殊な力を使って行使されたもので、多分他の特殊な術もかけられている」
楓の言葉を聞き小雪はすぐに楓が何を言わんとしているか悟る。
「つまりあの子は実の親に自分の命を削るような呪印をかけられたってことかい……神様がいるっていうならとんだ残酷な野郎だね」
「彼女にかけられている術はこの幽世でも限られた者だけしか扱えないかなり特殊な術だから、この呪印をかけた彼女の母親は多分鬼の一族と何か関係があったに違いないと思うよ。それがどんな理由にしろこの状態を放っておけば彼女は……」
「あんたの力で呪印を結び直すことは出来ないのかい?」
「残念だけど僕の専門外だ、僕の力ではせいぜい俄を終えるまでの間、呪印の効力を引き伸ばすくらいしかできないよ。もしあの子をこのまま人の子としての生を全うさせたいなら御当主様に彼女の呪印を結び直してもらうか、彼女の中にいる鬼自体を滅してもらうしか方法はないだろうね」
楓がそういうと小雪は額に手を当てて力なく笑う。
「はははッ……そりゃあ、あの子を人里に戻すよりも難題だね。……分かった、あんたはとにかく一日でも長くあの子が今までと同じように過ごせるように呪印の補強をしておくれ」
小雪はそういうと楓に紫苑のことを頼み、自分は机の引き出しから一通の紙を取り出しある人物へと手紙を綴った。
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