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訳あって幽世の遊郭に連れ去られたら妖狐の御当主様の婚約者になりました

訳あって〜の大幅改稿作品となります。


「あと何度季節を繰り返せば紫苑(しおん)に会えるのかとくる日もくる日もただ一人で待ちわびた。桜が散る季節も、星が降り注ぐ季節も……どの季節も紫苑がいなければ何も意味をなさない」


 月天(そうま)の美しく整えられた指先が紫苑の髪を一房救い上げ口元に近づける。


「この髪もその瞳も、愛らしい唇も全て私に捧げてくれるだろう?なぁ、紫苑……」


 月明かりを纏った美しい顔が唇に触れそうなほど近づけられ、空いた手で優しく顔の輪郭を撫でられる。

月天のひんやりとした指先が紫苑の唇を軽く撫でると月天はその瞳に色を含ませる。


 紫苑は両手で懸命に月天の体を押し返すがびくともしない、それどころかなんとかしてこの場から逃れようとする紫苑を眺めて月天は意地の悪い笑みを浮かべる。


「そ、そんなこと言われても……側にいることはできません」


 紫苑の言葉が気に入らなかったようで、月天は少しムッとした表情を浮かべると片手で紫苑の両手を長椅子に縫い付けるように押さえつけ、そのまま耳元で囁く。


「あなたではない、月天だ。もう月天とは呼んでくれないのか?」


 甘く恋人に囁くような声色で言うと月天はそのままぺろりと赤い舌で紫苑の耳元を舐める。


「なっ!なななんてことを……!」


 これ以上赤くならないだろうと言うくらいに顔を真っ赤にした紫苑はさっきよりもさらに慌てふためき、訳の分からない言葉を言いながらこれでもかと言うくらいバタバタと抵抗する。


 紫苑が全力で抵抗すると両手が解放されて、自分の上に覆いかぶさっていた月天が笑みを浮かべて長椅子にもたれ掛かるように座った。


 紫苑は乱れた襟元を両手でかき合わせながら月天から距離を取るように長椅子の逆端に身を小さくして座ると、月天はまるで子猫と戯れるかのように優しい笑みを浮かべて手招きするが紫苑は動かない。


「その様子だと、要らぬ虫がついたと言うことはなさそうだな……。まあ、いい。これから紫苑は私と一緒に過ごすことになるのだからいくらでも時間はある、今まで待った時間に比べればこれくらいのお預け大したことではない」


 月天は大きな瞳に涙を浮かべながらこちらを見る紫苑を見ると、ソファから立ち上がり小さく膝を抱える紫苑の頭を優しくひとなでして部屋を出て行った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く 毎日の更新が楽しみです。 [気になる点] できれば~ぜひ、初めだけでも良いので 登場人物(妖)の名前の読みを記して欲しいです。
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