まずは目先の勝利から
こんなタイミングでミュリアさんに会えるなんて!
すごくいいタイミングだけど、今日知り合った人に急に話しかけられて「助けてください」とか言われたら困るだろうし、なんなら隣の人から何か言われそう。
「あの~、すみません、ちょっといいですか?」
人の葛藤を少しも考慮しないでどうしてすぐに話かけるんだよ!私の考えててること分かるならこうゆう時こそ少しは気遣ってよ!
いや、逆か!こうゆう時だからむしろあえて話しかけたな。
実はノープランだったこと根にもってんじゃん。しかも話かける前なんかニヤついてたから余計腹立つ!もういいや、どうにでもなっちまえ。
「ほら、何突っ立てんの?さっさと行くよ」
「どこに?」
「決闘エリアでしょ」
「正気?そんな名前だけで人が死んでいてもおかしくないところに行くの?」
「どーせしょうもないこと考えて自己完結してさっきの話聞いてないでしょ」
別にいいじゃん、そんなのこの年頃の乙女は良く考えていることだよ。(少女漫画のヒロインはみんな考えてるもん!)
「というか、私のいないところでいつの間にか決まってない?」
「大丈夫。私が代わりに応えておいたから何とかなるよ」
いや、全然何ともなりませんけど。
結局、あかねの後を追いながら歩いていたら目的である「決闘エリア」に着いた。
目的地付近に着いたのか友達の方が
「ここからは道が違うからまた後でね~」
といいミュリアさんを引っ張って行ってしまった。
その別れる間までにミュリアさんと話すことはなかった。まあ、ぶっちゃけミュリアの友達?がいるので話しかけにくい。こっちからはあんまり話す内容は少なかったから、別に気にしないし。
おい、あかねさんや、何あたしのことを呆れた目でみてるのさ!ちょっと友達の方が怖いからって別にへ、へたれてなんてないから!
「どんまい、また次があるよ」
その私のことを分かってる風で慰めるな!絶対わざと慰めてるな、顔にでてるぞ!
はぁ、もういいや。どうせ相手にする時間が勿体ないし。
「それでこれからどうするの?」
「1から説明した方がいい?」
「普通はするもんじゃない?」
「なら、自己責任って言葉知ってる?」
遠回しに説明するのめんどくさい感を出すな。
確かに話を聞かずに自分の世界に入っちゃうのは申し訳ないと思うけどさ、少しばかりの優しさっていうのは出てこないものなのかな。
「わかった、わかりました、黙って後ろ着いて行きます」
「理解が早くてよろしい」
お願いだからさっきのテンション低いあかねを返してくれ!
☆
「あの子と話さなくて良かったの?」
どの口でそんな事を言い出すのか理解できないわ。
「ユウが勝手に薫さんを威嚇してたから話すタイミングがなかっただけよ」
「ふーん、あの子かおるっていうのか。って、そうじゃなくて!なんで話しかけなかったの?」
「私から話すことなんて何も無いでしょ?」
「別に私は無関係だからこれ以上何も言わないけどさ、ミュリアにしては珍しいなと思っただけだし」
「なら問題ないわね」
結局、やることは変わらないのだから。
「そんなことよりも早く準備しないと間に合わないわ」
「それもそうだね。確か今日の相手って『WC』だっけ?」
「どうしてその略し方にしたのよ。『魔女の紋章』だからってわざわざ『WC』と訳す必要ないでしょ」
どうしてユウはこうも恥じらいが捨てれるのか理解できないわ。
まぁ、ユウだからってのも案外あるのかしら。
「今日もいつも通りすれば勝てるよね?」
「私がいるのだから勝つことは当たり前よ」
「お嬢様!一緒ついていきます!!!」
いつものように調子に乗ってる子はスルーして、競技場に向かう。
だってこんな所でつまずいてなんていたら、私の存在価値なんて無いのと変わりないのだから。
★★
『本日の試合は1600を予定しております。1550までに見学なされる方は観客席に避難するようお願いいたします。』
やっと座れる!!
競技場に着いたのはいいが、入口が見つからないし、しかも管理の方が丁度留守でいないから何処に座ったらいいか分かんないしで、ほとんど詰んでた。
顔はよくわからなかったけど、親切にしてくれた人ありがとう。
というか、少し気になったんだけどさ
「あかね、あかね、今の聞いた?」
「アナウンスのこと?」
「そう、それ!初めて生で数字の時間知らせるやつ聞いた!」
いやー関節的ではあるけれど、案外迫力感じたなー。
「あんたは気楽でいいねぇ」
「なにが?」
「ノー天気なのか、それとも気づくことすらできないバカなのか」
「急に顔面殴られたんだけど!?」
そっちがその気ならこっちだってやるからな!
これに気付かない薫ってどうなんだろう?これから先、一人で生きていけるのかな?
だってエントリー入口というか入場口の左右からすごい殺意を感じるけど、これ大丈夫なのか?
もしかしたら私たち殺される?ビデオ中継のシステムがあるのはこうゆうときのために必要だったのか。
というか、周りにほとんど人がいないけどこれが普通なのかな?
それとももしものことがあるからいないってことなのか?
考えれば考えるほど時間が過ぎていき、ステージ上に先ほど話したミュリアさんやユウさんたちが集まり始め出した。もうすぐ練習試合が始まるのだろうか。
どうかせめて私たちが無事で帰れますように!!
☆☆
いつも思うけどわざわざステージに集まる必要あるのかしら?
この時間何もすることなくて本当に暇なのよね。作戦会議自体は移動中でもできるし、いい加減なくしても誰も文句はないと思うのだけど。
「あなたにしては珍しいじゃない、お嬢様」
自称ライバルを名乗るマリス・ジャーガンクは毎回ちょっかいというか挑発みたいなことを会う度にしてくる。何ともいけ好かない人だ。
「下らないことに気をそらして大丈夫かしら?また負けるわよ?」
「はっ?今度こそ負けないんだから!!!」
自分から仕掛けてきたくせに、相変わらず気が短すぎね。
そんなだからここぞという時に足を拾われるのよ。
『まもなく試合が開始されます。競技に参加される方は各転移陣に集合してください』
「それじゃあ戦場でまた会いましょう」
「私が会いに行くまでに死んでなければいいわね」
「今日こそはその余裕に風穴開けてやるんだから!」
いつものように軽口を叩きながらも仲間のもとに向かう。
大丈夫、これまで通りに信じて背中を預けよう。
「大将、今回はどういう作戦だ?」
「私とユウがフロント、鈴はバックアップ、麗華はレフト、サーシャはライトで行く」
「基本的に麗華の方を支援すればいい?」
「途中でサーシャと役割交代してもらうからそっちに重点おいてて」
正直途中で役割交代は嵌らなければこちらが不利になるからあまり好まれない戦術ではあり、しかも選手の負担が大きくなるものだが…。
「今回もしかして彼ら用の戦術試してる?」
流石、サーシャだなあ。こっちの考えてることぐらいお見通しか。
「そう。サーシャの言う通り今回から色々試すから役割や行動が変わる思う。特に麗華は一番きつくなるかもしれないけどいい?」
「安心しろ、喧嘩には慣れてる」
「極力無理はさせないつもりだったけど何かあったらすぐ連絡してね」
「最悪困ったら鈴連れて特攻するから気にすんな」
「なんか今回あたしの役割忙しすぎない!?」
これぐらい余裕があるなら何とかありそうね。
「大丈夫、私たちは強いよ。それはミュリアが一番わかってるでしょ?」
こうゆう時だけ鋭いのほんとズルいと思うわ。
『まもなく転送完了時間となります。選手の方は準備のほどお願いいたします。』
「それじゃあ行きましょうか!」
「「「「了解!!」」」」
マリスには悪いけど今回は実験台になってもらうわよ!