これからの激動に備えて
落下付近の土煙が晴れ鮮明になってよく見てみると、先ほどのは青年ではなく少年でないことが分かった。なんか大人になろうとして背伸びしているように見える。ちょっとおもしろいな。
「誰だ!てめえ!!」
お客様、そんな至近距離で話している訳でもないのに喧嘩売っても意味ないですよ。
でも、どんな人がこんな空気読めない登場の仕方するかは確かに気になる。
「いやー、ちょっとだけ昼寝をしようと思ったら寝すぎちゃった。すまんすまん」
まさかのスルーですか。
うわー、ヤンキー君あからさまにイラついてる顔してるし。質問側の映像はこうゆうときに役に立つなあ。自分に対しての対応であんなに態度取られたらまあ誰だって腹立つよね。
「相変わらずの能天気というか天然というか...」
「まあまあ、バカもこうゆうときには役に立つってことでしょ」
「お、なんだ喧嘩売ってんのか?全然買うけど」
完全に忘れられてるよ。もうやめてあげて!ヤンキー君の堪忍袋が限界迎えちゃう!!
「俺のこと無視してんじゃねーよ!!!」
どこからともなく現れた大斧を携えて少年に振り下ろしながら飛び掛った。
早速、波乱展開が始まっちゃった。こんなのが最低でも月1ので起こるのであれば警察を蔓延らせた方がこちらとしては多少安心になるのに。でも突然こんな展開になるなら意味ないか。もしかしてこの学校無法地帯かな?
「あ?何もんだ小僧」
「!?!?」
案の定というか、大斧は彼に届くことは叶わなかった。
大斧は先ほどのぬいぐるみによって止められていたのだ。
しかも、さっきよりもサイズが大きくなっているような気がする。最近のぬいぐるみって成長するのかあ。
「武器を道具として使っているやつが入学できたのか、世も末だな。出直してこい」
そういうとヤンキー君と大斧はいなくなっていた。
「それで俺の出番はもう終わった後か?」
あたかも最初からヤンキー君がいない体で話が始まった。大丈夫私たちは忘れてないよ、ヤンキー君!
「プログラム的にはもう過ぎたけど、そこまでしてやりたいの?」
「ならいいや!さっさと終わらせて飯にしよう!朝は軽めだったから腹すいてんだ」
「最初から言うつもりないくせに聞かないでもらえるかしら」
「こうゆうときは相手した方の負けだよ」
彼ら的にはもう式を終わらせようとしているけど、配られたプログラムにはイベントしては部活動説明会の項目がまだ残っているけどどうするんだろ。
「「「「「「「「今がチャンスだ!!!やっちまえ!!!」」」」」」」
「「「「「「「「!?!!?」」」」」」」
突然部活のユニフォームらしきものを着た生徒達(多分3年生の先輩)約20人程度がそれぞれ武器を持ち彼に飛び掛かり始めた。この学校やっぱり無法地帯だ!このままじゃいつか巻き込まれて殺される!
「「「有象無象がうるさいんだよ!」」」
三人がそう叫ぶと生徒たちが場で静止した。なんかアクション映画のワンシーンのような状態になってる!
「おい、言霊はルール違反だろ」
「緊急事態だからセーフだよ。そもそも説明会中に暴走する方が悪い」
「だって、あんたが参加するとは思ってもみなかったから」
「そんなサボり常習みたいな印象なの?」
「「「「「何を今更」」」」」
「上等だ!全員とめてかかってこい!!」
こうして、メインの一年生をほったらかしながら式は幕を閉じたのだった。あの後だが、会場がこれが地獄絵図かと思わせる程の大惨事となっていた。生徒会と思われる方が避難誘導をしていたが、真横を氷の塊が飛んでいき、壁にぶつかって崩れた時には命の危機を実感した。いやいやいつから戦場になったんだ!?
なんとか避難通路まで行けたが後方ではまだ叫び声が響いており、ここも絶対の保証はないと確証にいたった為、光が見えているところまで全力疾走した。周りも同じ考えなのかみんな殺気を出しながら走っていた。
(こんなところで死にたくない!)
その一心で出口へと走り出していた。
☆
1年生が全員脱出した少し後
「少しは落ち着いたか?」
それに答えれる生徒はみな力尽きていた。
これだから最近の若者は軟弱ものが多くて呆れる。
「結局、自己紹介できないまま終わっちまったな」
こればっかりはいつものことなので仕方がないが、第一印象としては戦闘凶のイメージになってしまったか。
でも、どうせあいつらも後から血眼になって襲ってくるんだろうな。
「これからどうするの?」
いつも司会を任せているジンが今後の指示を聞いてきた。
「今のところはこのまま次のイベントの準備を進めてくれ」
「りょーかい。ならついでにあっち側にも連絡もしとく」
「毎回ありがとうな」
ほんと縁の下の力持ちというか裏方作業が適任しすぎて助かる。こっちもこっちで気兼ねなくできる。
「残念だけどこっちの予定を優先で取りかかってもらうわ」
「ん?お嬢様もどきがなにか命令でもしてます?」
「もどきしたのはあんたなんだから私は関係ないわ」
昔はすぐにキレて殴りかかってきたのに……。今となっては相手にされてなくておじさん寂しいよ。
「それで予定ってなんだ?そんなの聞いてないが」
「だって今考えたから分かるわけないじゃない」
「そんなの横暴すぎないなか?」
「そもそも遅刻してくるし、原因が昼寝なんだから受け入れなさい」
憎たらしいにやけ顔で言ってきた。
皆さんこれが副会長の本当の顔なんです。あんな人良さそうな性格の反対を嬉々として進んでいってる外道中の外道なんです。早く捕まえてください!
「今回の罰ゲームは授業を1つ受け持ってもらうわ」
「いや、罰ゲームって言ったらそれはもう予定じゃない」
「つべこべ言わずにすく返事なさい!」
「Yes ma'am!」
こちらに変更の猶予すらないことを把握いたしました!何なりとご命令を!
「あなたには魔法理論を担当してもらうわ」
「え?」
「なにか問題でも?」
いや、別に問題と言うほどでもないが、さすがに俺以外メンバーに変わってもらったほうが良さそうな気がするが……。
「まああなたの考えつく先は読めるけど色んな手順をまとめてすっ飛ばす方が後が楽でしょう?」
どこまでも合理的で計算高いのはこちらとして嬉しい限りだが、敵にはまわしたくないなとつくづく思うよ。
「わかった、受け入れよう。それで学年はどこを担当すればいい?」
「それはね……」
★
なし崩しの形になったがこれにて説明会は終了したらしい。結局ヤンキー君や先輩方がどうなったか一切不明だが無事で生きているといいな。
警察の迷惑になったり、関係ないのに親に連絡される可能性があったりと悪いことしか残らないのでせめて生きてほしい。そして巻き込まないでお願いだから。
あの後は何とか教師陣たちの頑張りによって教室に戻ることができた。あれがイベントごとに毎回ありそうで不参加の届け出しないと寿命が縮まるかそのままなくなる未来がみえた。
けど、罰則はやだなあ。でもなあ、あれを見た後だと棄権せざるおえないというかなんというか。
「あー、まあ、さっきのことはそんなに気にしなくていいぞ」
(うそつけ!むしろ気を付けないと生きていけないよ!)
「元凶にさえ近づかなければ基本的に温厚な先輩だらけと言えるからな」
一体この学校の会長は何をしたらこんな惨事を引き起こせるのか想像がつかない。
「お前たちには言ってなかったが、会長に勝てば部費が50倍になるからな。そこらじゅうの部活動生徒は活動しながらあいつの首を狙っているぞ」
何をそんなに楽しそうに語ってるんですかねこの校長。あなたの生徒は今のところ奇行しかしてないですよ。でも部費50倍は確かに魅力的ではある内容だ。それでも限度があると思うけどね。
「先生、選択授業っていつまで決めればいいですか?」
流石委員長(まだ決まってないけど)!スルースキルも高まっている。
「明日までだ。もし、決めれなかったたらランダムでこちらが決める。正直いずれすべて学ばなければならないものだから適当に決めてもいい。個人的な質問は受け入れるが他は許さん」
校長の態度に威厳が現れ、明日からこの学校の生徒になるという現実がこの場の緊張感を示していた。
「ちなみに私のオススメだか魔法理論以外を選べ。それが一番遠回りになるが無難だ。逆を言えば今すぐ強くなりたいのなら魔法理論は絶対に必要になる。それではここに時間割を置いとくから各自持って帰って決めておけ」
手を振りながら去っていく姿は貫禄があり、楽しそうだった。
一時の間静寂が続いたが、部活動の掛け声が合図となり見学目的で教室を出ようとするものが現れたことによってそれぞれ帰宅しようとしていた。
結局最後まで私の隣は空席だった。