まあ、どうにかなる
魔法歴1805年4月16日
時間の詳細は分からないが、空は暗く雷雨だったのは良く覚えている。
それでは私こと、神橋薫はこの日記に綴ろう。
。
あの日起こった、私にとって災厄で最悪の事件を忘れないために。
自分のやるべきことを、あの日の約束を見失わないようにするために。
目の前で起こったあの悲劇を二度と繰り返さないために。
私は...私は...あいつを殺す!!!!!
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。
いつもの目覚まし時計のアラーム音が聞こえる。
部屋のカーテンの隙間から僅かに日の光がさしていて朝を告げていた。
それにしても相変わらずアラーム音がでかすぎる(母が設定しているため音を小さくすることはできない)。鼓膜が破けそうになるほどうるさいのだ。まあ、目覚ましとしては優秀かもしれないが、いつ近所迷惑になってもおかしくはない。
しかも、昨晩深夜まで幼馴染と通話してたのもあって余計に頭の奥まで音が響いてくる。
目覚まし時計を止めるのも一苦労だ。
「薫ー、早く降りてきなさーい。朝ごはん冷めるわよー。」
私の寝室は二階にあるはずなのに母さんの声は良く聞こえる。拡声器を使っていると言われたら信じてしまうだろう。
目覚ましと親のコンボを不快に感じない人はいないはずだ。
しかし、今日は休日だから最悪眠気に身を任しそのままベットで寝ても問題だろう。
「入学式に遅れてもいいの?」
頭上から声が聞こえてきたので目を開けてみると......。
いつも通りの母さん冷たい笑顔が見えた。目が全く笑ってない。
冷汗が背中から大量に溢れてくるのを感じる。まるで私の思考を読んでいるみたいだ。
口をゆっくりと開けて小声で「お、おはようございます」というと母は無言で部屋から出ていき、階段を下りて行った。
慌ててベットから起き上がり入学式の準備に取り掛かった。しかし制服やバックが何処にも見当たらない。
まずいことになった。
このままでは入学早々にも不良のレッテルを貼られ、友達ができないまま学園生活を三年間送らなければならない。そんなのはまっぴらごめんだ。
あ、そういえば昨日の夜に制服の試着をしたまま全て一階のリビングに置いていたのを忘れていた。
「さっさと降りてこい!」
「あうっ。」
母さんのげんこつが頭にヒットした。女の子を殴るのは親でもダメだと思う。
朝食を終え、制服に着替え終えてふと思った。
(髪型どうしよう…。)
流石にたんこぶはできていなかったので安心はしたが、見た目は着飾りたいので髪型は大事なのだ。
いつもはポニーテールが定番だか、今日は入学式で第一印象が決まるためなかなか決まらない。
「さっさと、行け。」
冷徹な声が洗面所を制覇した。結局ポニーテールにして家から出た。
理由は特に無い。ポニテかなって思った。楽だし。
(通学路を一人で歩くのは久しぶりだなー。)
そんないつも賑やかだった隣を見て少し懐かしく、寂しいと思った矢先に目の前で爆発した。
「えっ?」
そう口で発したときには既に空を舞っていた。
ここであたふたするのは普通の反応だが私は違う。
「衝撃緩和!」
初級魔法だか、私を無傷で受け止めるには十分だ。
しかし着地地点の道が少し狭く、風圧は完全には防げなかったため体が壁にかすってしまった。
買ったばかりの制服なのに最悪だ。
多少爆風が強かったみたいだ。周辺の家の被害がなくて良かった。
「危ないなー。気を付けてよね!」
爆発の根源である爆発猫は私の怒鳴り声を聞いて驚き立ち去った。
あんまり裏道を通らないようにしよう。そう胸に誓った。
(確か発熱猫は威嚇等の感情の起伏以外で爆発することは滅多にないはずなんだけど...。)
遅刻したくないから考える事をやめ、その場を後にした。
この世界、”アズアルファ”は神暦2056年に起こった天魔大戦から約2000年後経っていている。
”アズアルファ”は近代技術に乏しいかわりに魔法が生活の糧と為っている。
そう!この私、神橋薫は魔法使いなのです!
果てしなく歩くこと三十分ほどして校門が見えた。
「やっとついたーーーーーーー!」
校門からは転移門での移動があるって学校案内書には書いてあったが、整備中の看板が立っていた。そもそも校舎までが遠すぎだし、転移動手段は徒歩か魔法による飛行しかない。
そもそも飛行なんて上級魔法の一つを使うほど私の魔法技術は高くないのだ。
なんで道中に砂漠やら湖があるわけ?無駄な金を使いすぎだって思う。
てか、校舎デカすぎ!
遠目から見ても最低でも五階ほどの高さがある。
一体何処にそんな莫大な資産があるのか謎だらけだ。
こんな道を歩かないといけないのか...。
「あ、新入生の方ですか?」
「うわぁ!」
後ろから突然可愛らしい声が聞こえた。
校舎の大きさに驚き過ぎて全然後ろに人がいるの気付かなかった。
振り向いてみると予想道理の美少女がいた。髪は綺麗な金色で、目は透き通った水色で現実に絶対に居ないって断言できるほどのレベルだ。
自分を過大評価しても全く勝てないほど全てが美しく、同年代の女子として完璧であった。特に胸が。
自分でもそれなりに大きいのではと自負していたが実際に見ればそんな自信なんて消え去ってしまった。自分の胸を見てみると何か悲しくなってきた。いやでもまだ成長期だし!伸びしろはある!はず...。
こんな完璧に産まれたら苦労することあるのかな?
「どうかしましたか?」
「あ!すいません!!」
いたたまれない罪悪感でとっさに謝ってしまった。
「いえ。大丈夫ですよ。」
可愛らしく笑顔で言ってる。私の気まずさにまるで気づいてないようだ。
こんな子がモテるんだろうなー。どこか危なっかしいけど。
「新入生の方ですか?」
「あ、は、はい!そうでしゅ!」
緊張して噛んでしまった。恥ずかしさで死にそう。
「では、案内するついでに一緒に校舎まで行きましょうか?」
「いいんですか!?」
微笑みながらそんなことを提案してきた。こんな誘い断る方が失礼というものだ。
しかし、こんな入学初日から良いことが起こっていいのだろうか。もしかしたら明日死ぬのでは?
「もちろんです。」
相変わらず笑顔のまま返事をしてきた。この人やっぱり天使だわ。
けど、その笑顔は今までより少し作り物のように見えた。
「では、行きましょうか、えーと...。」
「か、神橋薫です!」
「では、薫様、行きましょうか。」
「はい!」
案外今日明日死んでもいいかもしれない。そう思うほど幸せな時間が始まった。
「そういえば、まだ私の自己紹介をしてませんでしたね。」
「あ、確かにそうですね。」
まあ、今後話す機会はほぼ零に等しいけど...。
「第7貴族シトラー家三女のミュリア・シトラーと申します。以後お見知りおきを。」
丁寧なお辞儀をしてこちらに笑顔を向けていた。
今更貴族だと言われても容姿で大体予想はできたので特に驚きはなかったが、
「第7貴族って10第貴族の!?」
「まあ、私自体にシトラー家の相続権はないですけど。」
どこか遠くを見ながら気まずそうに言ったミュリアさんは悲しそうだった。
少し歩くと周囲には邪魔にならない程度に人だかりが出来上がっていた。
そしていつの間にか周りの景色が新緑あふれる長閑な道になっていた。
「お姉様、おはようございます!」
左の方から黄色い声の数々が聞こえ、
「お嬢様、おはようございます!」
右の方からは野太い声が響いたり、同時に聞こえたりする。
中には止まって大袈裟にお辞儀する人もいる。
そんな人たちにも手を小さく振りながら挨拶をしている隣の美少女は女神のようなオーラを出していた。
普通に考えて正気でいられるのが不思議でしょうがない。私なら倒れてもおかしくないほど狂気が溢れている。私の中で更にこの人の評価が上がった。
周囲の人はこの美少女に憧れや尊敬の眼差しを向けてるが、私を見たとたんに「は?誰だこいつ?」みたいな目で見られる。
優越感と劣等感の間を行き来しながらその人たちと目を合わせないようにしていた。
ご愛読いただきありがとうございます!
初めまして小説を書いたので至る所に誤字、脱字等あると思いますが許してください。こちらとしては誤字、脱字の報告は大変助かるのでどんどん送ってもらって構いません!
さて、まず一人目の物語が始まりましたが、話が進むにつれて話に食い違いが起こるかもしれません。あくまで仕様上起こることがあるので、考察等をしたい方は作者のバカすぎる文章力に振りまされすぎないよう気をつけてください。それこそ間違いの可能性があるので...。
話が逸れてしまいましたが、この物語はゲームなどでよくあるクロスストーリー風にしてます。
いちよう、前書きに過去、未来、別視点等の注意書きはするのでわかると思います。
今回は天真爛漫な少女が主人公ですが、イメージとしてはクラスの盛り上げ役担当です。バカで、向こう見ずな行動ばかりします。時には考えて行動することもあるので楽しみしてください!
(自分の中ではオリジナル作品として書いていますが、もしかしたら話が被っていたり、同姓同名同性格の人物があるかもしれません。気を付けて書くつもりですが気づいた方は報告してくれると助かります。長々となりましたが、これで後書きを終わろうと思います。)