指輪を拾っただけなのに
遅くなりました
窓から射す光で目が覚めた。何時もより早いからメイドもいないし、自分で着替えて寝癖を直す。そのまま部屋を出ていつもご飯を食べる部屋に行った。この時間は父上とじいちゃんがご飯を食べているので丁度いいだろう。
「今日は早いな?」
俺に気づき父上が声をかけてくる。父上が城に行く時間は早いので、俺が起きてくることはまずないから驚いたんだろう。
俺は軽く挨拶をして、じいちゃんの向かい側の席に座る。そしてポケットに入れてあった指輪を出してテーブルに置く。
「おじい様、昨日神様のお墓でこれを拾ったんですが、どなたの落とし物か心当たりってありますか?」
じいちゃんは顔も広いし、誰のものか分かるかも、と考えて聞いたが反応は俺が思っていたものとは違った。「おおこれは○○のじゃな」とかかな?と思っていたが、実際はじいちゃんは席を立ち大きな声を出した。
「ノア!何故これを持っている!?」
驚愕した表情で聞いてくるからそんなにやばいものなのか?見つけて良かったーと思っていた。
「ですから拾ったと——」
「一緒にこい!その指輪は持ってきなさい!」
と慌てた様子で俺を引っ張りそのまま屋敷を出て城まで急ぎ足で向かった。じいちゃんは敬礼する兵士を無視して門を勢い良く開けた。門兵は結構重そうに開けてたのにこの人片手で開けたよ?
真ん中の塔の豪華な扉の前に立つと、三回ノックし「入ります」とだけ言って扉を開けた。もちろん俺をそのまま中に入れ扉を閉めた。
中には円卓が置いてあり、父上から聞いたことのあるような風景だった。
「どうしましたバロン?ここは子供を連れてくるような所では無いですよ?」
空席の隣に座っていた、青い長髪の男の人がじいちゃんに向かって言った。
空席に十脚の椅子、十脚の内二つは空席で計四席が空いていたが、ここ父上が一回入ったって言って自慢してたところだ。
嫌な予感が高まってくる、指輪を見たじいちゃんの反応、その後偉い人が集まってる会議室に連行。正直帰りたい……。
「指輪が見つかりました」
場がざわつき始める。そのせいでなおさら俺の胃は悲鳴を上げそうになる。
じいちゃんに円卓のそばまで連れていかれる。赤い髪の男の人と、青い髪の女の人の間まで連れていかれ、じいちゃんに指輪を見せるように言われる。
赤い男の人が手を出してきたので、指輪をそこに乗せる。乗せられた指輪を反対の手でつかみ、顔の前までもっていってみている。まさかこの人がだいぶ前に無くした物?
「確かにこれは父上の物だ、坊主これをどこで見つけた?」
ああ、お父さん。偉い人の更に偉い人のものでしたか。
「お墓の木の下で」
「墓?父上と母上のか?」
食い気味に聞いてくるし、威圧感が凄い。正直子供なら泣いてるレベルだぞ?
「ちょっと!子供が怖がってるじゃない」
横に座っていた女の人が男の人の頭を叩いた。そして俺の方を向いて話しかけた来た。
「ごめんなさいね、もう一回聞くけどお墓ってあの丘の上のお墓?」
優しく質問してくる女性、表情からにじみ出るやさしさはさっきの男の人とは大違いだ。
「はい、魔神王様と女神様のお墓です」
「見つけてくれてありがとう、これはとっても大切なものなの」
ニコッと微笑んで頭を撫でてきた。少し複雑だったが、多分俺の精神年齢の問題だろう。
青い髪の女性は、さっきの怖い人から指輪を受け取ると、しばらくの間眺めていた。そしてそれを卓の上に置くと、奥に座っている黄色い髪の女の人が頭の後ろで手を組んで言った。
「で?兄上の指輪が何でそんなところにあったのかは知らないっすけど、その子何で指輪持てるの?ゴウは別としてヒョウも気にならなかったすか?」
その言葉を聞いて、ヒョウと呼ばれた青い髪の女の人が席をたって、俺と目線を同じにして話してきた。
「確かに!君名前は?何でこれ触れたの?ビリッてしなかった?」
質問攻めにされて戸惑っていると、見かねたクサナギ様が代わりに答えてくれた。
「その子の名前はノア君、私の弟子」
クサナギ様がそう言うと、その場にいたじいちゃんと俺を除く全員がクサナギ様の方を向いた。その中にはシオンさんの姿もあった。
「弟子ぃ??何言ってんだお前、あの子どう見ても五歳ぐらいだろ?」(赤い髪の男)
「クサナギ、あなた修行中にあんな技使ったんですか!?」(シオン)
「クサナギさん、冗談を言ってる場合では……」(青い長髪の男)
「指輪が見つかって驚くのも無理はないですが流石にそれは…」(茶髪の男)
「そうだよクサナギ、熱あるんじゃない?」(黄色い髪の女)
「昨日の飯抜かれたのがそんなにきつかったか……」(ゴウ)
「今日は私の分も食べていいから……」(ヒョウ)
等々、事情を知らない人たちからさんざん言われて、クサナギ様はプルプル震えていた。ここまで信用されてないと流石に可哀そうだ、日ごろの行いと言う奴なのか?俺はクサナギ様の日ごろを知らないが…。
「本当だし!刀もあげたし!ノア君剣振れたし!!」
机をバンッと両手で叩き、色々と説明していた。各々納得したようだが、指輪の事忘れてない?俺は別に構わないんだけどあなた達はそれでいいの?
正直このまま帰れるのでは?と思っていたが、青い長髪の男の人が話を戻した。
「クサナギの弟子かはもういいです、今大事なのは何故指輪が持てたかなのでは?」
ああ……これかえれないやつだ。
感想待ってます!




