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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
龍の民編
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戦闘狂

 金色に光り輝く聖剣を手にした僕は、目の前の男を見て思う。

 この剣なら、本来の力が引き出された聖剣なら、苦戦はしても倒せるのではないかと、そう思った。

 僕が持っている聖剣に対して、あっちはただの白い刀。正直劣って見えた。


「おい、今俺の刀馬鹿にしただろ」


 声には出していなかった。なのに心が読まれたかのように、仮面の男は僕に向かってそう言った。

 

『おい気を抜くな!来るぞ!!』

 

 剣から女の人の声がした。瞬間、俺の頬を何かが掠めた。それと同時に後方で轟音が響く。

 恐る恐る後ろを確認すると、そこには何かが切った後の様なものがついていた。

 自分の頬を触る、すると少し手が濡れた。指の先を見てみると真っ赤な血がついていた。 

 聖剣が教えてくれなければ、あの後方の傷は僕についていただろう。そう考えると悪寒がした。

 

『ぼさっとするな死ぬぞ!』


 気づいたときには仮面の男はもう間合いの中にいた。腕を切り飛ばす勢いで刀を振ってきたが、何とか防御が間に合う。

 だが痺れる様な衝撃に、剣を離しそうになる。

 豪気も加わり、二対一になったがさっきは遊ばれていたんだと改めて実感する。

 僕たちの攻撃は当たらない、だが向こうの攻撃は当たる。

 こっちは疲労感が溜まってきているのに、仮面の男はまるでそんなもの感じていないようだ。


「頼むからさ、もうちょい真面目にやってくれよ。クシフォスまで起こしたんだぞ?これだったら前と変わらねえじゃん」


 仮面の男が、刀を肩に置きながら言う。

 明らかに僕たちを下に見ている発言に、僕は何も言い返せなかった。それだけ実力差があったからだ。

 二人で打ち込もうが、後方支援があろうが、勝てる気がしなかった。

 赤子の手を捻るとはこのことだろう。赤子は僕だが、その言葉が一番今の状況に近かった。

 撤退の言葉が頭によぎる。最悪左雫と渼右だけでも逃がそうと、そう考えてしまう。


「ちっ…面白くねえな。クレナイ!国の兵士を全部王都まで下げろ!下げ終わったらチャグマに堀を作らせて馬鹿どもが入ってこないようにしとけ!」


「兄上はどうするんですか!?」


 仮面の男が刀を俺に向け言った。


「こいつが逃げようとしてやがるからな、逃げられない状況を作りに行くのさ」


 そう言って仮面の男が地面を蹴って天高く飛びあがった。

 落ちてくることは無く浮遊している。そして何処かに飛び去ってしまった。

 向かった方向は確か…聖国と魔神領の兵士が戦っているところだ! 

 

「あいつ兵たちが戦っているところに行って何をするつもりだ?」


『聖国の兵士で暇つぶしだろうな』


 聖剣、クシフォスがそう言った。暇つぶし?どういうことだ?

 

『そのままの意味だよ、お前が期待外れだったんだろう。逃げられない状況と言っていたし、恐らく聖国の兵を殺しに行ったんだろう』


 俺のせいで兵士の所に行ったのか?俺が逃げようとしたから……?

 逃げたいという感情、罪悪感がぐちゃぐちゃに混ざり合う。助けに行くべきなのか?でも俺が行ったところで奴を止めることは出来ない。

 かと言ってこのまま逃げたら罪悪感に押しつぶされるだろう。

 

『弱気になるな、今回は私が力を貸しているんだ。お前さえ勇気を出せばあんな奴どうとでもなる』


 聖剣を見た後、後ろに居る幼馴染を見る。

 小さいころから一緒に居る親友。頼もしい仲間、だが一人かけている。

 そのことを再確認すると、僕の足は自然と戦場に向かっていた。

 

 戦場についた頃には、魔神領の兵士は一人もいなかった。

 だが戦闘音が鳴り響いている。しかも数百人ほどの聖国の兵士が地面に転がっている。


「やっぱりあいつよりはマシだな!逃げずに立ち向かってくるあたりお前らの方が勇者だよ!」


 笑い声を上げながら刀を振っている仮面の男がいた。他に敵の兵士の姿は無い、あいつ一人の様だ。

 一人の兵士が、仮面の男にやられそうになっている。

 助けに入り、刀を剣で防ぐと兵士は逃げ出した。


「待ってたぜえ?さっきよりマシな顔になったじゃねえか」


 剣を弾かれ、体制が崩れてしまったが、仮面の男は攻撃してこなかった。

 僕が体制を立て直すと、間合いを詰めて斬りかかってきた。

 腹の辺りで刀を防ぎ、火の魔法を仮面の男に放つ。

 直撃したがダメージになっていない。が、仮面に少しヒビがはいった。

 が、そのヒビも直ぐに元通りになってしまった。

 傷が治る仮面に驚きつつも、聖剣で反撃する。首元、手首、腰の順に斬り掛かるが全て防がれる。

 それでも何度も攻撃していると、仮面の男が嬉しそうに笑いだした。


「ハハハハ!!楽しいなあ、これだから辞められん」


 正直気持ち悪いと思った。仮面で顔は見えないが、恐らく普通の笑い方はしていなかっただろう。

 戦闘狂、そんな奴と戦うのは正直言って嫌だ。でも、こいつを倒さないと親友には会えない。

 だから俺は、体の震えを抑えてもう一度剣を振った。

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