邪神の考え
僕は邪神、この世の負のエネルギーを管理する役目を持った神だ。
元々は神じゃなかったけど、色々理由があって神様になったんだ。本当は僕が神様になる訳じゃ無かったのにね……。
僕は身寄りのない子を拾っては我が子のように育ててきた。堕ちた天使、悪魔の子、そんな子を拾ってきては権能を与えてきた。
いい事をしてると、僕は思いたかったんだ。罪滅ぼしのつもりだった。兄を殺した僕は、善行をすることで少しでも楽になりたかったんだ。
何千年たったか分からないが、僕は今でも兄に謝ることが出来ていない。
その話は長くなるから今はしない方がいいかも知れない。
僕は今空に浮かぶ城に住んでいる。下にいる人には見えないようになっているので、この城に来るのは僕と7人の家族だけだ。
その城には、下の景色を映し出す道具があるんだが、その道具が面白いものを映し出した。
その面白いものとは、魔神領に生まれた新しい命の事だ。
尋常じゃないほどの魔力量、これだけあれば成長すれば使えるかもしれない。最初はそう思っていた。だが何度か顔を見るうち、利用という考えは消え去った。
待ち続けた光が、やっと差し込んだのだ。やっと始められる、そう歓喜した。
ただ僕はつながりが無いから接触が出来ない、だからそういう事はハデスに頼んだ。不安だったが仕方が無かったのだ。
案の定面倒なことになりかけたが、まあ修正可能だっただけマシだ。
ハデスを叱るルシファー、口答えして蹴られるハデス。もうこんな光景は見られないものと思っていた、でもあの子は僕たちのために文字通り死ぬ気で頑張った。
「だったら僕も頑張らないとね」
「何か言ったか?」
ルシファーに聞こえていたらしく、そう言われたがはっきりとは聞こえて無かったようなので誤魔化した。
偶に彼の所へ顔を出すようになった。ファミリーネームは面白いことにバベルだった。
二代目国王が付けたらしいけど、最も神に近しいものだそうだ。
知らないとはいえ、僕と同じ名前を付けるとは……まあ最近じゃ僕は名前で呼ばれないからね。
子供たちにも父と呼ばせるようにしてあるし、僕の名前を知ってるのはそれこそ兄ぐらいだ。
その兄も今はいないから僕の名前を知っているのは誰もいないと言えるだろう。
兄に謝る、その目的ともう一つの願いの為に、僕は一手も間違えることは許されない。
太陽が真上にある昼間、僕はある作業をしていた。
僕が扱う理術の術式を書いているんだが、想像以上に大変な作業だった。
書くものは何でもいいが、出来るだけ持ちやすいものと言われていたので、両手が開く仮面にしてみた。これなら顔も隠れるから一石二鳥と思ったんだ。
でも理術の扱いは僕より彼の方が上手かったらしく、対の術式を書くのに苦労している。
文自体は出来上がっているが、この長文を図に変換するのが難しいのだ。彼はこれを小さな指輪に納めたんだから凄い。
何とか歓声させ、使う時が来るまで持っておく。彼が言うにはこれは保険だそうだ、もし計画通りに進まなかった時のための物、使わないに越したことは無い。が、
「使う事になりそうだよ」
最近、時空が歪んだと思ったら、何人か別の世界からこっちに引っ張ってこられた。
それだけなら別に良かったのだが、時空神の奴が謝罪の意を込めてギフトを送りやがった。そのせいで磨けば光り輝く原石が四つ、聖国の手に渡ってしまった。
あのマモンでもドン引きする欲の塊共の手に戦力が加われば、先は容易に見えてくる。
順調に育てた芽が横から折られそうになるのを、僕は黙って見ているつもりはない。仮面も作ったし、まあ大丈夫だろう。
「でも……僕の鬱憤は晴らせないんだよねえ」
という事で、ちょっと八つ当たり気味に聖国の老師を殺害。
まあこれで状況はマシになっただろう。異世界の子たちの洗脳も解けたし、戦場でまともな判断をしてくれるはずだ。
老師を殺害しても、僕の怒りは収まらなかった。僕どころかルシファーまでキレそうになっていた。
ルシファーの場合は、聖国が持っていた神器たちを見たからだ。そのせいで彼女は聖国に残ってしまった。
僕のは……思い出したら腹が立ってきたからやめよう。
こういうのは早めに忘れるに限るのさ。
老師を殺害しても、戦争は始まってしまった。
後々、戦争が始まればこっちとしては都合がいいことに気が付いたので、回避しようとはしていなかったが……。
「さて…何人死ぬかな?」
僕が管理している負のエネルギーは、人が死ぬ時が一番面倒なんだ。
色々な欲が出てしまうから、その分対応も面倒。生きたい、死にたくない、殺したい、色々なものが混じって余計に面倒なことになることだってある。
ただでさえルシファーが居ないから、出来るだけ戦死者は出てほしくないが、戦争でそんな話しても無理だろう。
僕は準備をするだけ、後の事は任せることしか出来ない…。
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