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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
龍の民編
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お守り

 あれから一週間、兵士たちが毎日のように魔神領に居るはずのない魔物の死骸を持って帰っていた。

 その度俺は食事をとらないという生活が続き、ついに父上から呼び出された。


「申し訳ありません、でもどうしても食べれなくて…」


 素直に謝ったが、父上の顔は怖いままだった。これは相当怒ってるなと思っていると、父上が全く関係のないことを言い出した。


「トアを連れてクロックスの学園の寮に戻りなさい」


 最初は何を言ってるのか分からなかったが、父の顔と外の兵士の空気を見ると大体の事を察した。嫌な予感が当たったんだと。


「聖国が宣戦布告してきたんだ、元老院の老師の死を私たちのせいにして攻めてきた。現在海を渡ってきている」


 当たって欲しくない予感程、よく当たると聞いていたが、当たって欲しくはなかった。アイシャがトップの座に就けば、話し合いで解決できたはずなのに、それまで戦争が起きなければと思っていたのに……。

 聖国が言った内容は、


「邪神を崇める邪教徒共!老師を暗殺したことは分かっている。我々は老師の敵を討つために、神から遣わされた勇者様たちと共に!宣戦布告する!」


 神から遣わされた勇者と共に…か、どうせ翔平たちには調子のいいことを言ってるんだろう。騙されて、正義のために戦うとかいう感じだろう。

 だが、戦争は殺し合いだ。正義だ何だと言っても結局は血で血を洗う様な殺し合い。騙されて参戦しても、こちら側からしたら敵なのは変わりない。容赦なく殺されるだろう。

 幼馴染たちを殺されるわけにはいかない、戦争をしないに越したことは無かったが、仕方がないだろう。


「父上、私は戦争に参加します」


 父上は机を力強く叩き、声を荒げて反論してきた。


「お前は未だ15だ!戦争なんか行かせられるか!」


 こんな父上は初めて見る。それだけ俺を心配してくれているという事だろう。だが俺にも引けない理由がある。

 その後何とか説得を試みたが、父上が首を縦に振ることは無かった。が、学園へ逃げることは無しになった。これで少しはマシになったが、未だ参戦できないことには変わりはない。

 気を紛らわすために素振りをしていると、邪神様が歩いてきた。


「やあノア君、戦争に参加したいそうだね」


 手を振りながら、邪神様はそう言ってきた。どこで聞いたか分からないが、この人も止めに来たのだろう。


「大いに結構、だけど戦争で魔法を使わないなんてことはありえない。面倒ごとに巻き込まれるのは覚悟の上かい?」


 真面目な空気を漂わせながら、真剣な眼差しで聞いてきた。俺はその質問に頷いて答える。

 邪神様はニコッと微笑み、嬉しそうにしながら言った。


「君のお父さんには僕から言ってあげよう。でも戦争は何があるか分からないから……このお守りをあげよう!」


 邪神様は懐から黒い仮面を取り出した。少しだが、魔力の様なものが漂っている。お守りと言うのは本当らしい。


「もし…もし自分の力ではどうしようも出来ない事が起こったとき、その仮面をつけてこう言いなさい——」

「——だ、分かった?その仮面は戦争中は肌身離さず持っておきなよ」


 邪神様は俺に呪文を教えると、さっさと帰ってしまった。手元には、渡された仮面だけが残っている。

 金色の模様に光が反射し、キラキラと星の様に輝いている。

 この感じどこかで……ま、いっか!心なしか落ち着いている気がするし、効果は本物だろう。神様から貰った便利アイテムとして大切にさせてもらおう。


 少年は廊下を歩きながら呟いた。


「便利アイテムねえ…ハハ。そう思ってもらった方が都合は良いけどね」


 少年の不敵な笑みを見た者は、誰もいなかった。


 夕食を食べ終わると、父上から呼び出された。


「お前の参戦が決定した……。明日会議が開かれるから出席しなさい」


 不本意そうな感じで、ため息をつきながらそう言われた。

 邪神様のお陰なのかは分からないが、これで翔平たちと接触できるかもしれない。俺としては嬉しい報告だが、父上はそうでは無いだろう。

 恐らく上から押さえつけられた感じ…命令みたいなのがあったんだろう。


「確かに貴族の長男が参戦しないのはおかしいがそれでも……」


 父上が小さな声で呟いた。聞こえたのは最初の方だけで、後は何も聞こえなかった。

 だが最後の方だけ、はっきりと聞こえてきた。


「トアも参戦するのは危険すぎる……あの子は強いといっても女の子だ。戦争なんて耐えきれないだろう……」


「は?」


 思わず声に出てしまった。

 トアも参戦するだと?何でそんな話が出てきたんだよ。


「王様の決定だ。相手がどんな戦力か分からない以上、出し惜しみは出来ないと」


 王様…あいつか。

 あのバカは俺の妹を戦争に行かせようとしてるわけだ、いくら王様でもやっていい事と悪いことがあるだろう。

 そもそも戦闘国家とか言われてるぐらいなら子供に頼らなくても、戦力は十分だろう。


「今王様は何処に?」


「会議室で十指の方々と会議中だ。……何故そんなことを聞く?」


「いえ、ただ気になっただけです。それでは、失礼します」


 父上の部屋を退室し、俺は王城へと向かった。

 怒りを抑えながら、冷静に……。

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