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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
転生?編
32/77

答えと謎

 エネルギーとは、生命力である。

 朝起きて夜寝るまでの行動の全て、その一つ一つに使われる燃料のようなものだ。燃料が切れれば人は動けなくなる。

 その燃料を使って、俺は斬撃を飛ばしたり、地面にひびを入れる。だが、一日に使える量には限りがある。

 そもそも生活しているだけで消費されるので、残っているのは半分もない。それを刀を振る分だけ残してすべて込めても、あのかまいたちの様な風はどうすることも出来ないだろう。


「魔力を力に変えろ、闘争心を魔力に変えろ」


 俺の口からそんな言葉がこぼれた。自分では口に出したつもりもない。そもそも考えてすらいない。なのに耳にはしっかりと届いた。

 気が付けば行動に移っていた。魔力がどんどん減り、代わりに刀にエネルギーが集まっていく。

 どうしても勝ちたい、あの魔法を破ってみたい。そう考えていると、何故か魔力は無くなる気配が無かった。だがエネルギーは大量に刀に集まっている。薄く広く、だがエネルギー量は濃く。


「凄いな!生命力が光って見える程集まっているのを見るのは初めてだ!」


 アイシャが目を輝かせながら言う。 

 刀をよく見ると、周りに金色のオーブの様なものが無数に浮かんでいた。

 集めて集めて、もう入りきらない位集まったとき、刀に黒い雷が走った。


「雷を纏えば早くなる、早く振ればその分威力は増す、だが…力むなよ?」


 自分に言い聞かせる様に口から言葉が出る。さっきと同じだ、違和感しかないが不思議と疑う気持ちはない。そうすればあれに対抗できると思うから。

 息を吐き、力を抜く。


「準備は良いな?」


 どうやらアイシャは待っていてくれたらしい。俺が今俺にできる最善を出したうえでそれを上から押さえつけたいわけだ。


「後悔するなよ?」


 周りの音が聞こえなくなる。風の音も歓声も何もかもが耳に入らない。体験したことのある現象だ、あれは剣道の全国大会の時。久しぶりに集中しきってしまった時、次の技で勝負が決まると確信した時だ。

 どこからか唾をのむ音が聞こえた。その瞬間、アイシャは風を纏った剣を甲高い音を響かせながら振り下ろし、俺は刀を抜き、切った。

 風が散り、アイシャの剣だけが振り下ろされる。

 両者ともに怪我無し、試合は未だ続けられる。アイシャも同じ考えの様で、こっちに向かってきている。

 一発では決められなかったが、まだ楽しめるという事だ。


「そこまで!!」


 刀を振ろうとした瞬間、学園長が俺たちを止める。


「何故止めるんですか!?」


「せっかくこれからって時に何で邪魔すんだよ!?」


 俺たちが邪魔をされた理由を求めると、学園長の代わりにアオボシさんが出てきて言った。


「結界が壊れたので続行は危険です。なので今回は引き分けにして、冬季の大会にでも再戦してください」


 結界が壊れたあ?死人がでたら困るのは分かるが、寸止めぐらいは出来る。……だが逆らうのはやめておこう。後々どうなるか分かったもんじゃないしな。


「納得しましたね?では……ノア選手対アイーシア選手の戦いは、両者の攻撃による結界の崩壊につき引き分けとする!」


 消化不良の俺とアイシャ、俺たちの攻撃を見て驚いている観客を尻目に、学園長が宣言する。


「今年の夏季新入生クラス別闘技大会、Sクラス昇格者は、学園長の名においてノア・バベルとする!異論はないな!?」


 異を唱える者は誰もいない。それどころか観客が歓声を上げ、大きな拍手が起こった。

 鐘の音と共に花火の様なものが上がり、光が生きているように飛び交った。


「以上で、閉会式を終了とする!これからは夏季休暇だ。私が言うことは一つ。死ぬな!」


 学園長の声が大会と、一学期の終了を告げた。この大会が、歴史に残る大事件の引き金になったことは知らずに。

 ただ一人を除いて、誰も先の事は分からなかった。


————観客席————


「あれは何だ?何故魔力が無尽蔵に増える?」


 金髪の女が、少年を問い詰める。少年は今度は口を開いた。


「あれはハデスとバアルが作り出したもう一つの権能さ」


「どういう事だよ」


 男も少年を問いただす、少年はゆっくりと正確に話した。


「二百年前、君たちはルシファーを止めるために権能の力を使った。でもバアルが持っていたのは憤怒、あの時は条件が成立しない。ルシファーを助けようとしているバアルはルシファーに怒りの感情を向けるはずがない」


 怒りの感情を糧に、魔力、エネルギーを無尽蔵に増やす憤怒の権能。ではなぜそれがあの場で使えたのか…。


「あの時誕生したのがもう一つの権能、それは全ての感情を糧として力を増やす。それをノア君にあげただけ」


 何故それが生まれたのかは分からない、でもそのおかげでこうしてハデスと会話ができている。

 二百年前何が起きたのか、バアルは何を考え、何をしたのか。今はまだわからない。でも僕は頼まれたことをするだけ。


「いずれ分かるよ、また暖かい季節に花が咲き、あの笑顔が見れたときにね」

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