結果は……
コントロールが難しい魔力をどうするか、方法は2つある。
先ず1つめ、そもそも使わない。
コントロールできないならそもそも使わなければいい。それなら暴走の心配も暴発の心配もない。だが今、試合中でそんなことは言ってられない。
つまり必然的に2つ目の案になるわけだ。
2つ目は、
「魔力を使う時間を一瞬だけにする……」
俺は足に瞬間的に魔力を籠め、ラリアーナの背後に回り込む。俺の動きをとらえきれず俺を見失いキョロキョロ辺りを見渡す。そんなラリアーナガ後ろを見ないうちに柄尻で昏倒させた。
地面に倒れる前に体を支え、そっと地面に寝かせる。
『ラリアーナ選手が気絶したため、勝者はノア選手!!最後の戦いに駒を進めたのは、この男だあ!!!』
「「「「うおおおおお!!!!」」」」
観客席が、歓声で沸き上がる。これだけ大きい声だと、向けられてる俺は結構嬉しい。
俺は少し顔を赤くしながら控室に戻った。
優勝をかけた試合の相手は、Aクラス1位のソフィアだ。さっきのラリアーナと同じで風魔法を使うらしい。
恐らくラリアーナとは比べ物にならないだろうから、気を引き締めていこう。
『さあ!両選手の入場です!!先ずはこの男!驚異的な身体強化でここまで駆け上がったあ!!?ノア・バベル選手!!』
「「「「うおおおお!!」」」」
俺が転移すると同時に、歓声とアナウンスの声が響いた。前世で剣道の全国大会に行ったときは、こんなに大きな声援じゃなかったから恥ずかしい……。
『続いて入場するのは!風を自在に操る彼女の前では、風の魔法は使えない!ソフィア・リーンスター!!』
「「「「うおおおお!!!!!!」」」」
「「「ソフィア様ああ!!」」」
俺の時とは違い、黄色い歓声も交じって転移したのは銀髪の女だった。手を振りながらにこやかに登場し、歓声が鳴りやむと俺の方を向いて一礼した。俺も礼を返し剣を構える。
さっきまで笑っていた彼女の顔は、今は戦いを前にした戦士の顔になっていた。お相手は本気、という事だ。
なら手加減何て出来ない、温存もしてる余裕なんて無いかもしれない。
『試合開始!!!』
開始と同時に、ソフィアは風の槍を作り出し、俺に向けて撃ってくる。これまでの相手は、魔法を撃っている間は棒立ちだったが、流石は1位、魔法を撃っている間も俺に剣で攻撃を仕掛けてくる。
しかも剣の攻撃を防いだら風の槍が、風の槍を防いだら剣が攻撃し、休む暇を与えてくれない。
距離を取らないとキツイ…。俺は刀にエネルギーを籠め切っ先に集中させ、剣を舞台に突き立てた。
すると舞台は表面がひび割れ、石が浮き上がった。その石を身体強化した足でけり飛ばし、ソフィアが防いだところで間合いをとる。
「この闘技場の舞台を割るなんて…」
驚いて一瞬隙を見せた所で、俺は魔力で作り出した刀をソフィア目掛けて投げる。ソフィアはとっさに風の壁を作り出し、何とか防いだが壁のせいで俺の接近に気が付かなかった。
俺は刀にエネルギーを薄く伸ばし、そのエネルギーを飛ばさず、そのままソフィアの腕を切った。だが結界のせいで切れてはいないが、動かなくなってるはずだ。動かない左手とは逆の右手で魔法を放とうとするが、利き手の左の時より発動が遅い。
俺は距離を取って回避し、残していたエネルギーを斬撃にして飛ばす。斬撃はソフィアの右足にあたり、右足も動かなくなった。
「……。降参よ」
『ソフィア選手の降参宣言!よってAクラスの優勝者はノア選手!!』
「「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」」
俺が転移して入場してきた時の倍の歓声が、会場を包んだ。15年ぶりに聞くこの声に、少し懐かしい気分になった。
俺が優勝、つまり要望は通ることが確定したわけだ。要望は表彰式の後に学園長自ら聞くことになっている。
表彰式はS、A、B、C、同時に行われる。2位と3位には記念のメダルが贈られる。優勝者はメダルと望みの物を一つという豪華な景品になっている。
CクラスとBクラスの優勝者は、寮の部屋を改善してもらった。Sクラスの優勝者アイシャは、
「折れない剣を下さい」
と、武器を所望していた。というのも今回の試合の後、この前買った剣も折れてしまい、武器が無かったのだ。
学園長はクスクス笑いながら、収納魔法から一本の剣を引っ張り出した。
「これは私が使っていたものだが、絶対に折れないというとこれしか思いつかなくてな」
金縁の白い鞘に入った綺麗な剣。とても使っていたとは思えないほど綺麗だった。手入れがしっかりされていたんだろう。
アイシャは学園長の剣を貰った。次は俺の番だ。
学園長が、ワクワクしながら俺の要望を待っている。あまり面白いことは言えないし、ここは正直に要望するとしよう。
「あと1試合。今、今すぐここで1試合する許可を下さい」
学園長は「は?」と言う顔をしていたが、大きな声を出して笑い出した。
「クッ…!アハハハハハ!まだ戦いたいか!?アハハハハ!!…良いだろう、お前が戦いたいのは誰だ?」
俺は隣にいるアイシャの方を向いて、一礼し言った。
「試合は大会の後…でしたよね?」
アイシャは目を開いて驚いた顔をしたが、俺に合わせて一礼し言った。
「確かに、言いましたね」
俺の目は、目の前にいるアイシャと同じように輝いているだろう。全力で、持てるすべてで最強と戦えるから。
感想待ってます!




