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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
転生?編
29/77

結果は……

 コントロールが難しい魔力をどうするか、方法は2つある。

 先ず1つめ、そもそも使わない。

 コントロールできないならそもそも使わなければいい。それなら暴走の心配も暴発の心配もない。だが今、試合中でそんなことは言ってられない。 

 つまり必然的に2つ目の案になるわけだ。

 2つ目は、


「魔力を使う時間を一瞬だけにする……」


 俺は足に瞬間的に魔力を籠め、ラリアーナの背後に回り込む。俺の動きをとらえきれず俺を見失いキョロキョロ辺りを見渡す。そんなラリアーナガ後ろを見ないうちに柄尻で昏倒させた。

 地面に倒れる前に体を支え、そっと地面に寝かせる。


『ラリアーナ選手が気絶したため、勝者はノア選手!!最後の戦いに駒を進めたのは、この男だあ!!!』


「「「「うおおおおお!!!!」」」」


 観客席が、歓声で沸き上がる。これだけ大きい声だと、向けられてる俺は結構嬉しい。

 俺は少し顔を赤くしながら控室に戻った。

 優勝をかけた試合の相手は、Aクラス1位のソフィアだ。さっきのラリアーナと同じで風魔法を使うらしい。

 恐らくラリアーナとは比べ物にならないだろうから、気を引き締めていこう。


『さあ!両選手の入場です!!先ずはこの男!驚異的な身体強化でここまで駆け上がったあ!!?ノア・バベル選手!!』


「「「「うおおおお!!」」」」


 俺が転移すると同時に、歓声とアナウンスの声が響いた。前世で剣道の全国大会に行ったときは、こんなに大きな声援じゃなかったから恥ずかしい……。


『続いて入場するのは!風を自在に操る彼女の前では、風の魔法は使えない!ソフィア・リーンスター!!』


「「「「うおおおお!!!!!!」」」」

「「「ソフィア様ああ!!」」」


 俺の時とは違い、黄色い歓声も交じって転移したのは銀髪の女だった。手を振りながらにこやかに登場し、歓声が鳴りやむと俺の方を向いて一礼した。俺も礼を返し剣を構える。

 さっきまで笑っていた彼女の顔は、今は戦いを前にした戦士の顔になっていた。お相手は本気、という事だ。

 なら手加減何て出来ない、温存もしてる余裕なんて無いかもしれない。


『試合開始!!!』


 開始と同時に、ソフィアは風の槍を作り出し、俺に向けて撃ってくる。これまでの相手は、魔法を撃っている間は棒立ちだったが、流石は1位、魔法を撃っている間も俺に剣で攻撃を仕掛けてくる。

 しかも剣の攻撃を防いだら風の槍が、風の槍を防いだら剣が攻撃し、休む暇を与えてくれない。

 距離を取らないとキツイ…。俺は刀にエネルギーを籠め切っ先に集中させ、剣を舞台に突き立てた。

 すると舞台は表面がひび割れ、石が浮き上がった。その石を身体強化した足でけり飛ばし、ソフィアが防いだところで間合いをとる。


「この闘技場の舞台を割るなんて…」


 驚いて一瞬隙を見せた所で、俺は魔力で作り出した刀をソフィア目掛けて投げる。ソフィアはとっさに風の壁を作り出し、何とか防いだが壁のせいで俺の接近に気が付かなかった。

 俺は刀にエネルギーを薄く伸ばし、そのエネルギーを飛ばさず、そのままソフィアの腕を切った。だが結界のせいで切れてはいないが、動かなくなってるはずだ。動かない左手とは逆の右手で魔法を放とうとするが、利き手の左の時より発動が遅い。

 俺は距離を取って回避し、残していたエネルギーを斬撃にして飛ばす。斬撃はソフィアの右足にあたり、右足も動かなくなった。


「……。降参よ」


『ソフィア選手の降参宣言!よってAクラスの優勝者はノア選手!!』


「「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」」


 俺が転移して入場してきた時の倍の歓声が、会場を包んだ。15年ぶりに聞くこの声に、少し懐かしい気分になった。

 俺が優勝、つまり要望は通ることが確定したわけだ。要望は表彰式の後に学園長自ら聞くことになっている。

 表彰式はS、A、B、C、同時に行われる。2位と3位には記念のメダルが贈られる。優勝者はメダルと望みの物を一つという豪華な景品になっている。

 CクラスとBクラスの優勝者は、寮の部屋を改善してもらった。Sクラスの優勝者アイシャは、


「折れない剣を下さい」


 と、武器を所望していた。というのも今回の試合の後、この前買った剣も折れてしまい、武器が無かったのだ。

 学園長はクスクス笑いながら、収納魔法から一本の剣を引っ張り出した。


「これは私が使っていたものだが、絶対に折れないというとこれしか思いつかなくてな」


 金縁の白い鞘に入った綺麗な剣。とても使っていたとは思えないほど綺麗だった。手入れがしっかりされていたんだろう。

 アイシャは学園長の剣を貰った。次は俺の番だ。

 学園長が、ワクワクしながら俺の要望を待っている。あまり面白いことは言えないし、ここは正直に要望するとしよう。


「あと1試合。今、今すぐここで1試合する許可を下さい」


 学園長は「は?」と言う顔をしていたが、大きな声を出して笑い出した。


「クッ…!アハハハハハ!まだ戦いたいか!?アハハハハ!!…良いだろう、お前が戦いたいのは誰だ?」


 俺は隣にいるアイシャの方を向いて、一礼し言った。


「試合は大会の後…でしたよね?」


 アイシャは目を開いて驚いた顔をしたが、俺に合わせて一礼し言った。


「確かに、言いましたね」


 俺の目は、目の前にいるアイシャと同じように輝いているだろう。全力で、持てるすべてで最強と戦えるから。

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