試験
ハデスとの鍛錬から、一か月間全く同じ夢を見た。ハデスの一撃を避けるために、身体強化を使った影響で魔力穴がまた少しだけ広がったから、そのせいではないかと医者は言っていた。
何の根拠もないから、正直信じていない。
夢の内容はあまり覚えていない。起きてすぐは覚えているが、ずっと記憶には残らなかった。ただ、胸を締め付けられるような感じは、今も続いている。気分が悪くなったりはしないので放置はしているが、病気か何かじゃないのかと心配になるときはある。
話は変わるが、妹のトアも学園への入学が決定した。決定したといっても試験を受けて、合否が分からないと入学とは言えないが、まあ落ちることは無いだろう。
中央学園にはA、Bといったクラス分けがされ成績上位からAクラスに入って行く。だが上位10名はSクラスに入る。妹はSクラスも狙えるだろうとの事だったが、俺は魔力の問題で難しいそうだ。クサナギ様の話では、一年に一回夏季休暇前にクラスごとの大会があるらしく、そこで学園長に選ばれれば11人目のSクラスになれるらしい。
「優勝したらお願い事を一つ聞いてくれるんだよ。アオボシから聞いたけど例年、寮の部屋を豪華にしてほしいとかが多いみたいだね」(クサナギ)
優勝賞品もあり、上位クラスに移動とは中々な条件だ。
この制度は学園創設時の二百年前からあるらしく、学園の伝統だそうだ。
つまり俺でも上位を狙う事は出来るわけだ。今から入学が楽しみになってきたが、後五年は鍛錬、勉強の日々だ。気合を入れないとな……。
◇
なんて考えてたのがついこの間のように感じる。妹に負ける兄なんて恥ずかしくてしょうがない。家の名前に、親の顔に泥を塗るようなことはしたくない。そう思っていたのが五年前。今俺は中央大陸クロックスに来ていた。
「お兄さま、早くいきましょう!」
トアが俺を急かす。トアの身長は165cm程になり、俺の肩に届くか届かないかぐらいある。
トアは何も持っていない。全部収納魔法で収納し、手ぶらで来ている。服装は動きやすいズボンだが、貴族の気品が溢れているのか、すれ違う男どもがガン見している。俺はその男どもを睨みつけながら、妹の隣を歩き中央学園にたどり着いた。
王都を歩いていて思ったが、文明レベルが高い。機械のようなものまであったし、想像していたのとは全く違った。一番驚いたのは学園のデカさだ。
某ドームで表すと何個分になるのか分からないが、こんな大きさの学園は見たことない。
校門をくぐり中に入ると、真っ先に石像が目に入った。校門と学園の玄関の間に置かれたそれは、角のある男と、羽の生えた女だった。石造の下の方には、戦神バアルと、戦の女神アリスと書かれていた。魔神王様と女神様の事だろう。
細かく掘られた像は、相当な技術を感じる。少し魔力も漂ってるような気もするが……。
「受験者は事前に配られた番号の札を持った職員について行ったください」
玄関前全体に聞こえるぐらいの声が響いた。声のする方を見ると、拡声器の様なものを持った職員が立っていた。
俺の番号は…180番か。トアは247だから会場が違うようだ。
トアに応援の言葉を貰い、俺は101~200の札を持った職員の案内に従った。職員が向かったのは小さな闘技場の様なところだった。小さいといっても百人分の椅子と机が入るくらいには広い。
「自分の番号が書かれた席に座ってください。今から2時間、旧暦と魔法学の試験問題を解いてもらいます。早く終わった方は持ってきてもらって構いません」
旧暦と魔法学か……。魔法学は良いが、旧暦は良い話が少ないから完璧に覚えてないんだよな…。物理が出てくれれば良かったんだが、今さら言っても仕方ないか。
「2教科で満点200点です。皆さん席に着きましたね?それでは始め」
先ずは魔法学から終わらせようか。大問は全部で10か…。問題用紙にびっしりと文字が詰まっている、流石は中央学園だ。
第一問、魔法適正について——
「やめ」
止めの合図がかけられ、問答無用で答案用紙を回収された。魔法ですべて回収してるから不正なんかも出来ないだろう。
今から10分間の休憩が与えられ、合否発表の後第二試験に入るらしい。アオボシさんの話ではここで50人ぐらい落とすらしい。毎年1000人近く受けるから、半数にしないとさばききれないと言っていた。ボーダーラインとかじゃなくて、下から順番に落としていくのでその年の同い年が頭が良ければ、誰が落ちるか分からない。
「今から合格者を発表します。呼ばれなかった方は残念ですが不合格です。来年の受験を期待します。ではまず103番——」
こういう時はやっぱり緊張するな。高校の合格発表の時もだったが、心臓がなりすぎて爆発しそうだった。たしか受験の3か月前に皆に教えてもらったっけ…。あいつら元気にしてるかな?
「180番」
良かったああ!!!受かったあ!
ホントに怖かったわー……。二次試験すら受けれずに落ちたらどうしようかと思ってたから、結構安心した。
筆記が終われば後は楽だ、二次試験の内容は模擬試合。魔法あり武器ありの試験。致命傷を負えば強制的に外に出される仕組みになっているらしく、勝てば入学確定、負ければ落ちるかもという感じだ。
「では、残った50名は呼ばれた二名が残り、後は見学していてください。」
職員がそう言って、机や椅子を一瞬で収納した。俺は呼ばれなかったので観客席に入る。
「では、始め!」
感想待ってます!




