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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
転生?編
13/77

三人

遅れました

 父上の後ろから顔を出したのはトア、僕の妹で年齢は一緒だ。トアは僕の生まれた五か月後に生まれた。何でこんなに早いのかと言うと、魔人の子供は成長が早いらしく、妊娠から四か月~六か月で生まれるらしい。


「お兄さま後で聞かせてくださいね」


 妹が目を輝かせながら言ってきた。

 俺達兄妹の仲は悪くなく、どちらかと言えばとてもいい方だった。前世で一人っ子っだった俺は可愛い妹が出来て嬉しかった。

 何か忘れてるような気もしたが、家族の会話を楽しみながら昼食を終え、屋敷の庭に向かった。

 今日はクサナギ様も用事があり、稽古も出来ないので素振りでもしてようかなと思ったからだ。ただ、あの刀を使うと危ないので木刀でする。何時暴発するか分かんないから、慣れるまではあれは使わない。屋敷が壊れるのは嫌だしね。

 前世ではこれといった趣味もなく、休日も刀を振っていた。刀と言っても木刀や摸擬刀だが、模擬刀ならちゃんと振れば少しは切れた。

 前世の習慣のようなもののせいで、今も刀を振ってるわけだが、渼右からよく「何が楽しいの?」と聞かれていたことを思い出した。

 何が楽しいかなんて聞かれても、これしかすることが無いからとしか答えられなかった。

 昔を思い出しながら刀を振っていると、屋敷の外を通っている人が目に入った。黒髪黒目の少年で、服も真っ黒なものを着ていた。首に金のネックレスを下げていたが、不思議と派手だとは思わなかった。

 その少年よりも、その一歩後ろを歩いていた二人に目がいったからだ。金髪の短髪の男、目は真っ赤で肌は褐色、引き締まった肉体はボディビルダーを彷彿とさせた。デカすぎず小さすぎず、丁度いい筋肉だ。

 何故筋肉が丁度いいか分かるかというと、この人上裸なんだよね……。下は黒いダボっとしたズボンを履いてるが、上は筋肉をこれでもかと言う程見せつけている。

 そして筋肉男の隣、この前墓で会った金髪の女の人だった。

 そんな個性的な面子が、城の中へ入って行った。気にはなったが、あまり長い間気には留めなかった。

 

「お兄さまー?まだ剣を振ってるんですか?」


 刀を振っていると、トアの声がした。気が付けば辺りは暗くなり始めていた。

 悪い癖で、集中すると時間を忘れてしまう。こればっかりは転生しても治らないらしい。

 もう夕飯時、中に戻ろうとしていると、さっき見かけた三人衆がまた屋敷の前を通った。朝見かけたこともあってか、気になって見ていると少年と目が合った。

 その少年は俺と目が合うと、手をヒラヒラと振ってきた。知り合いでもなんでもないので、俺の後ろに誰か居るのか?と思い振り返っても誰も居なかった。

 じゃあ俺?もしかして知り合いか?もしそうなら挨拶をしないのは失礼なので、頭だけでも下げておこうと屋敷の外の方を向いた。が、そこには誰も居なかった。


「え……?」


 目の前の出来事に困惑し、少しの間固まっていた。

 だがこの前見た女性は羽があった事を思い出し、きっとそれで飛んで行ったんだろうと思う事にした。

 グウウウ~~と腹の音が鳴る。その音を聞いて、俺は少し急いで屋敷に戻った。

 夕飯を食べてるときに母上が、


「お米は明日届くらしいわ」


 と言ってきた。明日の朝が楽しみになったわけだ。

 風呂にも入っていざ就寝となったが、明日の遠足が楽しみな小学生の様に寝付けず、二時間ぐらいでようやくウトウトしてきた。

 明日が楽しみだ……。


——某所——


「いやー、やっぱりヒョウ君は中々心を開いてくれないね」(少年)


「それはそうだ、あんなことをされたら俺たちに嚙みつくのも無理はない。なあルシファー?」(男)


「私は仲良くしようとは思っていない、ただ恩を返しに行ってるだけだ。受け取ろうとはしないがな…」(ルシファー)


「そんなにツンツンしてるから嫌われるんだぜ?もっとデレないと、なあ?」(男)


「死にたいのなら今すぐあの世に送ってやるぞ?」(ルシファー)


「うわあ、女の子がそんなこと言ったらだめだぞ?」(男)


「ねえ君たち、喧嘩にならないうちにやめときなよ?」(少年)


「こいつがあっちで無駄な知識をつけてからさらに面倒になった。どうにかしてくれ」(ルシファー)


「無駄とかいうなよなー、ライトノベルとかいう本は案外面白かったぞ?本人は乗り気じゃなかったみたいだけどな」(男)


「君だけ生き返らないから何でかと思ったら、まさか引っ付いて行ってたとはね。お父さんは心配したんだけどなー?」(少年)


「俺もビックリしましたよ?でも帰ってこれたから結果オーライってことで」(男)


「また意味の分からん言葉を…」(ルシファー)


「話を戻すけど、どうしよか?まだ許してくれないのはヒョウ君だけなんだよねー」(少年)


「本人に許す気が無いのに行く必要はあるのか?貴方が何度も頭を下げる必要は——」(ルシファー)


「子供の責任は親の責任、前にも言ったでしょ?それに許す気が無いんじゃなくて、気持ちの整理がつかないだけだよ。まだ長い間生きた訳じゃない。それに親とたった十五年しか一緒に入れなかったんだ。それなのに簡単に許すなんてできないでしょ?だから僕たちが誠意を見せるしかないんだよ」(少年)


「ゴウは直ぐ許したけどな」(男)


「ヒョウ君はパパ、ママ大好きだったからね、ゴウ君もそうだったけど…ほら女の子は根に持ちやすいから」(少年)


「確かにな、貴方の娘にも確かに当てはまる」(男)


「何か言ったか?」(ルシファー)


「いえいえ!何でもありません」(男)


「ハハハ、ホントに仲良しだね。…よし、明日も行こうか。今日はもう寝なさい」(少年)


 少年がそう言うと、二人は退室していった。


「ヒョウ君の事もあるけど、やっぱりあの子が一番気になるからねえ…」(少年)


「世の理を無視した愛…彼は本当に約束を守れるのか、フフ……子供には寝なさいと言っても僕は眠れそうにないね」(少年)

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