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異世界転生?~THE PROMISE~  作者: 紅椿
転生?編
12/77

馴れ初め

「森の力場に行けよ?クサナギちゃんに言えばわかるから。いいか?絶対だぞ?」

 

 誰かにそんなことを夢の中で言われた。だが顔も思い出せない。他に何か会話したような……。

 駄目だ、考えても仕方がない。取り合えずご飯食べよう。

 

 部屋に行くと、もう朝食が用意されてあった。シェフの腕はとてもよく、おいしいご飯を毎日食べてるんだが、母の味が恋しくなってくる。

 我儘言っても仕方が無いから口には出さないが、みそ汁とか食べたいと思う事がたまにある。


「せめて米が食えればなー…」


 異世界では叶うはずのない願いを口に出していた。メインの料理は肉の事が多いが、この肉にご飯があればどれだけ食が進むか…。


「お米がどうしたの?」


 ちょうど母上が部屋に入ってきた時に呟いてしまっていたらしく、ばっちり聞かれていた。「何それ?どこで聞いたの?」とか聞かれたら、面倒なんだがどうしよう…。


「食べたいのなら送ってもらう?」


「え!?」


 送ってもらう?どこから?

 いやそんなことより…。米が…あるのか?

 送ってもらう?と聞いてくるという事はあるんだろう、そして母上は米を入手する方法を持っている。

 そういう事ならと、お願いした。これでこの肉が更においしくなるわけだ。

 でも何で異世界に米があるんだ?似たような穀物ならまだしも、名称が全く同じなのは少し気になる。

 そう言えば、昔こっちに勇者が興した国があるとか神様が言ってたな…。


「母上の出身地ってどこなんですか?」


「あら?言ったことなかったかしら、私は日ノ本出身よ」


 国の名前から勇者が興した国でほぼ間違いないだろう。

 俺は心の中で勇者に礼を言うのを忘れなかった。ありがとう勇者様!

 米は送ってもらう事になり、解決したんだが、ふと疑問に思った。

 日ノ本って別大陸だよね?その日ノ本生まれの母上と、父上が何で結婚してんの?というのも、この国では身分差が大きい結婚はほぼ無いらしい。ヘラ様の信者はそういうこともあるらしいが、二人は信者じゃないし……。


「母上、母上の家柄は?」


「私は日ノ本の第二王女よ」


 王女!?第二王女様でしたか!案外凄い身分の人だったよ。

 でも母上が王女だったら尚更おかしくないか?王女様は普通、自国の有力な貴族か他国の王族と結婚する。父上も公爵ではあるが、正直王族が嫁ぐことはあるのかは分からない。

 悩んでも仕方が無いし、こういう時は本人に聞いた方が早い。


「母上、急な質問ですが父上との馴れ初めは?」


 母上は少し顔を赤らめた。昔の出会いを思い出して照れてるのか?


「今でも鮮明に覚えてるわよ。あれは少し寒くなってきた時期だったわ——」


 と、母上が話し始めてどれくらいたっただろうか?朝ごはんを食べていたはずが、今度は昼食が出てきた。物凄くうれしそうに話すから途中で止めることも出来ず、気が付けば結構な時間がたっていた。

 長かった話をまとめるとこうだ。

 まず、日ノ本では二百年前から、「嫁ぐなら強い殿方に」という王女の言葉から、嫁ぐなら強い殿方にという謎のルールが出来上がったらしい。ルールと言っても絶対に守らないといけないものではなく、そうした方がいいよ的な感じの話だったらしい。

 が、王族である母上は毎日その事を聞き続けた為、強い殿方に嫁ぎたいという気持ちは強かったらしい。 

 母上が十五のころ、そろそろ結婚をと周りから言われる中、中々この人だという人に出会わず、その内政略結婚でもさせられるんだなと思っていたある日、王都の外に出かけたらしい。王都の外に綺麗な湖があるらしく、そこに行きたかったようだ。

 その時馬車で移動中に、盗賊に襲われたらしい。そんなときその盗賊を蹴散らしたのが…!


「そのとき助けてくれたのがクレナイ様だったの」


 ん?クレナイ様?父上じゃなくて?

 疑問に思いつつ、最後まで話を聞いた。

 盗賊を一掃したクレナイさんに、惹かれつつあったが、その時クレナイさんは父上の護衛として来ていたようだ。当時の父上は見るからに弱そうだったらしい。

 そのまま護衛をお願いして、王都に帰り、父上は用事を済ませ帰国したらしい。

 それから一年後、今度は視察中に母上の命を狙った集団に拉致され、殺されそうになったところに、今度こそ父上が助けに入り二十名をボコボコにして縛り上げたらしい。


「あの時のあの人は本当にカッコよかったわあ。私の縄をほどいてお姫様抱っこで城まで送ってくれてね、私がその時聞いたの、何で助けに来てくれたの?って、そしたらあの人——」


「国交会議の最中に聞こえてきたんです。第二王女様がさらわれたって」


「キュンと来たわあ~、国交会議中よ!?それなのに私のために飛び出してきてくれたの!」

 

 わが父ながらイケメンだな…。

 でも一年前は弱そうな男だった父上が、何でそんなに強くなったんだろう?このことも話してくれたんだが、聞いたときはラブコメでも読んでるのかなと思った。

 後日父上が言った言葉が、


「一年前のあの時、私はクレナイ様にお願いするだけのひ弱な男でした。悔しかった……。だから帰国した後、鍛えたんですよ」


 ここまではまだいい、ここまでならまだ元弱そうな男だ。だがこれにはまだ続きがあった。


「一年前に一目ぼれした、貴方を守るために……」


 キャー――!!何このイケメン!かっこよすぎ!顔よし性格よしでしかも強い!

 この一言で母上は父上に惚れて、そこからはとんとん拍子で婚約し、五年前に結婚した。


「なあ、その話恥ずかしいんだけど…」


 母上の話が終わったころ、耳を赤くした父上が入ってきた。

 母上が父上に抱き着いて「良いじゃない、子供が聞きたがったんだから」と言っていた。 

 抱き着かれて更に耳が赤くなった父上の後ろから、女の子が顔を出した。


「私も聞きたいです!」


 黒髪に綺麗な青色の目、その少女の顔は、母上に似ていた。

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