胃が休まる暇もなく
クサナギ様たちが、指輪の事について話している間、じいちゃんから十指の人たちの名前を聞いていた。
まず一人目、話に入っているようで入っていない赤髪の男の人、この人はクレナイと言うらしい。目も赤く髪も赤い、正に紅だ。
二人目はさっき話を戻した長髪の男の人、名前はアオボシで、やっぱり目も髪も青い。印象は知的な美男子のまとめ役みたいな感じだ。
三人目は椅子に浅く座っている女の人、コガネというらしく、身長はクサナギ様に近い。
四人目はチャグマといい、さっきから腕を組んで座っている。体格が凄く、豪気とは比べ物にならない。
「皆さま、あちらのお二人以外は何千年も生きておられる。失礼の無いようにな」
この国って長生き多いね、長生き何てレベルじゃないんだけどな…。おじいちゃんは見た目が老けてるからわかるけど、あのクレナイって人たちは皆二十代に見える…。
というか名前を聞いて思ったが、全員安直な名前だな。髪の色とかそんなので決めてる気がする。正直分かりやすくて助かるけど。
「まあ、見つかって良かったし兄上たちの部屋に置いておこう。ノア君については後日で良いだろう、色々とお礼もあるし、もう帰っても大丈夫、ありがとうね」
とクレナイさんに言われたので、嬉しさを顔に出さないように退散することにした。
「いった!」
俺が扉に手をかけると、後ろの方でゴウさんの痛がる声と、静電気が走ったような音がした。気になって振り返ると。何かがこっちに飛んできていた。
それを掴んで確認すると、さっき渡した指輪だった。正直鳥肌がたった。これが飛んできたタイミングもだが、普通は角度的にこっちには飛んでこない。
呪われてんじゃね?落とすわけにもいかないから持ってるけど、悪寒がやばい。
「なんで急に電気が走るんだよ!?」
少し切れ気味にそう言いながら、ゴウさんがこっちに来た。
俺は指輪を渡してまたドアに手をかける。すると、さっきと同じことが起こった。バチッと音が鳴ったと思ったらまた指輪がこっちに飛んできたんだ。
絶対呪われてる!!本で読んだもん、装備したら外れない呪いの装備があるって!!
「ああ!!?イライラすんな!」
それから二回ほど同じことを繰り返して、完全にキレたゴウさんに首根っこを掴まれながら、卓の前まで戻された。
「どう考えてもおかしいだろ!!どうなってんだよ!」
「ちょっと怒んないでよ、あんたが悪いんじゃないの?」
「じゃあヒョウが持っとけよ!おい坊主!もう一回扉の方に行け!」
ゴウさんがヒョウさんに指輪を渡す。ヒョウさんは「ごめんね、あいつ怒りやすいから」と言っていたが、原因がゴウさんにあればそれでいいんだけど……。
この後起こったことは想像通りの事だった。
「ほらな!?やっぱこいつになんかあるんだよ!」
というゴウさんの声を聞くと、俺の胃の痛みは激しさを増した。俺が苦しそうにしていると、じいちゃんが回復魔法をかけてくれた。おかげで痛みは引き、何ともなくなった。
この世界に来て、メンタルが弱くなった気がする…。翔平の事言えないな。
「まあまあ、落ち着いてください。ほらご飯でも食べましょう、ちょうどお昼ですし」
とアオボシさんが言ったので、おじいちゃんはいったん退室。この部屋には開いてる椅子もあるしここで食べていけば?とクサナギ様が言っていたが、おじいちゃんは
「私が座ることは私自身が許せないので、では失礼します」
と言ってそそくさ出て行ってしまった。という事で俺も退室……したかったんだが指輪の事もあって、俺はそこで昼食という事になった。
「好きなとこに座りなよ、いない人のとこに座っても文句は言われないし」
クサナギ様がそう言うので、座る席を選んだ。
開いているのはクサナギ様の隣と、アオボシさんのとなり、ゴウさんの隣とチャグマさんの隣の四つ。
正直ゴウさんの隣は論外、チャグマさんの隣は威圧感凄いし落ち着けない。もうマシなのクサナギ様の隣しかないわ…。ということでクサナギ様の隣の席に座る。
よく考えれば偉い人の席なわけだがホントに座っていいのかな?
「おお!お目が高いね。ノア君が座った席はお兄ちゃん、魔神王の座ってた席だよ」
まさか昼食をそんなところに座って食べることになるとは……。
違う意味で落ち着かなかったが、ご飯は美味しくいただいた。食べ終わって五分位たつとおじちゃんが戻ってきた。
入ってくると僕と目があって、驚いていたけど、理由は僕がここに座ってるからだろう。おじいちゃんに何か言われる前に、元の場所に戻ろうとしたが、クサナギ様が
「もうそのまま座ってれば?大丈夫、罰は当たらないから」
と言ってきたのでそのまま座って話を聞くことにした。
正直座っていたくないが、ご飯ここで食べたしもう気にしないことにする。だってそうしないとまた胃が悲鳴を上げそうだしね……。
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