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7、ショック、ショック、ショック

この国が今後どうなるかが、その暗殺ミッションにかかっている。


1%の失敗も許されない。


だから、タナトスのトップである俺は、軍の裏事情のトップを任されてしまっていた俺は、自ら手を下すしかなかった。


それが、トップである俺の仕事だと腹を決めた。

俺は一時部隊を離れ、その極秘のミッションチームに参加した。


俺にとっては簡単だった。


綿密な情報の元で一瞬のSPの隙を突き、黒蜜は瞬時に奴の心臓を貫いて、そして騒ぎの中でチームが解散すると、何ごともなくいつものように俺は部隊に戻った。


それで、終わった。


翌日から新聞とニュースは、騒々しかった。

政権上層部の粛正がはじまり、戦争は誰もが望んだ終結へと向かう。

だが、終戦を喜ぶ祝祭の中に沢山のマスコミが入り込み、軍内部も政権派のあぶり出しも重なって秘密保持の管理が怪しくなった。


俺は、まだ13になったばかりの俺は、騒ぎが大きくなるにつれ事態の大きさに耐えられず、宿舎に帰ると一日中部屋にこもる事が増えた。


13だ、なぜボスはガキの俺にトップをやらせる。

無能でも、大人達が責任を取れ。


ああ…………あれからだ。

俺はテレビが駄目になった。

騒がしいマスコミの奴らを見ると、あの時を思い出す。


ああ…………気分が悪い。吐きそうだ。




立ち尽くすサトミを見て、ベンが勝手に歩き出した。

それを追うこともせず、サトミは廃屋の壁際に行って座り込む。

住宅街で人も少なく、誰も気にすることもない。


こんなの…………


俺には荷が重すぎる…………


俺って馬鹿だなあ、あんな事こそジンに頼めば良かったんだ。

まあ、あいつなら銃殺なっても、あーあで終わるのに、何で俺は真面目なんだろう。

馬鹿だよなあ……


ああ……あ〜〜〜あ


あれだけの規定をクリアーしたのにもかかわらず、除隊出来ない。そのことにショックが思った以上に大きい。

いずれわかることではあるが、なんであいつが喋るのか腹が立つ。

昔からあいつは口が軽い、だからあいつのコードネームはギルティだ。

それでも生き残る力と、馬鹿すぎて結果的に人がまとまると言う変な能力で、サードの隊長に選んだのはこの俺だった。

なんで一人で解決出来ねえんだ。

人に聞くな、チームで解決しろとあんなに言ってきたのに、あいつはちっとも昔と変わらず俺に甘えて来やがる。

あいつは俺の倍以上生きてるクセに、何で半分しか生きてない俺に甘えるんだ。


ああ……


なんだかあのツンツン男を殺したくなってきた。

郵便片手に座り込み、背の雪雷をちょっと抜いては戻しでタンタン言わせる。


「あー、くそう、殺してえ。つか、黒ぶっ刺してくれば良かった。

俺はなんでギルティの野郎、殺さなかったんだろう。」


抜いては戻し、抜いては戻す。

それがどんどん抜く長さが長くなる。

血を見ないと落ち着かない。心が静まらない。


シュッ、タン……シュッ、タン


シュッ、タン……シュッ、タン……シュッ、タン


シュッ、タン……シュッ、タン……シュッ、タン……シュッ、タン


「よし、やっぱ殺してこよう。それでこの話は聞かなかったことにする。」


そう思ったときだった。


「あ〜、いた〜〜〜!!」


リッターの妹セシリーが、黒光りするでっかい馬ナイトに乗ってやってきた。

横にはベンが並んでいる。

セシリーはずいぶん痩せて、妙にグラマラスボディになって迫力ある。

エクスプレスのジャケットの一番大きいサイズでも胸が閉まらない。

ナイトから降りると、ゆさゆさ胸を揺らしてサトミの元にやってきた。


「王子、何のびてんのよ。あたいの王子ならもっとシャンとしやがれってんの!」


「俺、お前の王子じゃねえし……」


「あたいの王子はあたいが決めンのよ。

何やってんの?そんな殺気丸出しでさ〜、バッカじゃない?

それじゃ、顔見えないし、強盗と間違われるじゃん?

なあに?顔見せたくないわけ?男って面倒くさい生き物ねえ。

郵便あたいが配るから頂戴、王子はさっさと郵便局帰って。邪魔よ!」


ベンを片眼でチラリと見る。

なんて奴連れてくるよ。

でもまあ、助かった。


サトミが立ち上がり、たすきにかけた残り少ない郵便物と金や一式の入ったバッグを彼女に渡す。


「俺、早退するって言っといてくれよ。気分悪いから帰るわ。なんか吐きそう。」


「ふうん……いいわ。無様に腹下してウンコ漏らしたって言っとくから。

入ってるチップ貰っていい?」


「いい、全部やる。

いい、もうなんでもいいや、もう、明日からウンコ野郎でもいい。」


ベンに乗り込んで、家に向かう。

家に着くと着替えもすべて後回しで、郵便局のジャケット着たまま、とにかく鍋にココアと砂糖ぶち込んでココア作り始めた。

ベンが何か感じ取ったのか、庭から窓越しにじっと見てる。

それに構っていられず、ココアをかき混ぜる。


くっそ、イライラする。


俺のメンタルは、いつの間にか最弱ペーペー並みになったのか。

それとも何か一次的な物か。

頭がパニックだ。


除隊出来ない。


って、それ、ずっと?永遠に?


俺、死ぬまで、定年まで、タナトスじゃなくても、軍抜けられないって事?

軍の定年っていくつだ?参謀のジジイって、いくつだっけ?そもそも定年なんてあったっけ?



このままアタッカー続けられるのか、とても不安だ。

いきなり辞めると、みんなに迷惑がかかる。

そのくらい俺にもわかる。俺はこれでも管理職してたから。

腕のいい奴がいきなり死ぬと配置に困ってたし。


ボスに連絡取って、なんて俺はしたくない……………


チラリと缶詰の入ったダンボールを見る。

ガラガラ中をかき混ぜて、底から衛星電話を取った。

電池切れしてて充電しなきゃ使えねえ。

ため息をついて、ゴミ箱に放り込む。


これは以前、デッドに黒蜜のパーツ頼んだとき、袋の底に裸でコードと共にコッソリ入れてあった物だ。

デッドは指示されただけだろう。

怒る気も起きず、壊れちまえと缶詰のダンボールの底に突っ込んどいた。

だが、思った以上に頑丈だ。

上からガラガラ缶詰入れてもびくともしない。

当たり前だ、軍用はみんなヤワな作りじゃ無い。


「あーーーー、やだやだ、俺は俺の道を歩きてえ!」


明日局長に相談しようか。

戦時乗り越えただけあって、あの人は頼りになりそうだ。

握手した手をなかなか離してくれないのは、ちょっと別の意味で身の危険を感じるけど。

自制の効かない奴なら、とっくに死んでるだろう。


鍋からカップに移し、椅子に座って息を吹きかける。

ココアの香りが脳内まで行き渡る。

ホッとして、深呼吸する。

そう言えば、まだ5ヶ月だけどポストアタッカーになってずいぶん気持ちが落ち着いた。

たまにあいつらに会っても、簡単にあの頃のブラックな俺に戻らなくて、安定している。

いい、傾向だ。…いい傾向なんだよぉ、引き戻すなよぉ………


はあ〜、ミサト〜、ミサトよ〜、早く帰って来いよ〜


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