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23、記録を残せ

あれから2日。

サトミはファーストにロンド周辺の警戒と地理の把握、セカンドにはガレットがデリーに来ていることを把握した上で、デリーロンド間の道の監視とアタッカーの保護を指示していた。


サトミは自分の生活を普通に送り、アタッカーたちの護衛はドローンでの監視で特にトラブルも無く、軍人が出る幕も無く済んでいる。

局にはジャッジとアントが連絡係、及びサトミの補佐で私服配置されてきた。

2人は明るくて、気さくに局員たちにすぐに馴染んでいく。


ジョークの連絡によると、結局あの捕虜交換は、現場にエアーは来ていなかったと本部で推測されたらしい。

あの取引の目的は、純粋にガレットの脱走だったのだろう。

しかし、彼がすぐに出国しなかったのはアルケーの計算違いだったのかもしれない。

脱走を公表しなかったメレテ側の弱みを突いて、引き渡さなければエアーを殺すと言う脅しは、メレテ政権幹部の怒りも買っていた。



その日、早朝デリー行きでリッターが強盗に襲われたが、自分たちで対処して終わった。

最初に強盗に襲われたリッターの映像をドローンで撮影し、午後、護衛班になっているセカンドのギルティがトレバーとサトミに確認と郵便局に訪れた。


上空からの映像で、リッターを追って盗賊たちが追いかける。

リッターがショットガンを背後に向けて、数発撃つ。

盗賊の2人が馬ごと倒れ、それでも残りが追ってくる。

やがて撃ち合いを経て、また一人が倒れとうとう諦めたのか下がっていった。


本当にリッターは容赦が無い。

クスッと笑い、大げさに会議室のテーブルを叩いて首を振った。


「駄目だ、だーーめーだろーーー

これじゃ臨場感がねえ。カメラをアタッカーのヘルメットに付けろ。

え?俺は必要無い。刀だと迫力が無い。

だいたい俺に切羽詰まった意識がねえから、民衆の心は動かせねえ。だから他の奴の画像使うんだ。

は?!なんで民衆が関係するかって?!」


サトミが最初の会議で言ったことを、すでに忘れていたギルティが一発殴られ気を失った。

あわよくば隣国の脅しに使うなんて何度も口に出せることじゃない。

まあ、使うかどうかは上が判断することだ。

それでも記録は必要だ、人を説得するには無編集の映像が一番人の気持ちを動かす。

アルケー側が黙認しているガレットがどれほど酷いことをやっているか、アルケーが情報部員を人質にどれほど理不尽な要求をしているか、これを最後に審判するのは、世論かもしれないのだ。


「あー、了解です。すぐにピーパーやりますんで。失礼します。」


トレバーがギルティの襟首掴み、引きずって戻っていく。

夕方、連絡受けてドローン担当のピーパーが来て小型カメラを持ってきた。

サトミが機器を見てうなずき、終業前で集まってる皆に説明させる。


「この小型カメラをヘルメットに。このカードが通信機になる。

画像の保管はこっちでやる。ガムで固定して、出発するときオンにして欲しい。

音声も拾うけど、こっちじゃ有事以外はオフにしているから気にしないでオッケーだ。

プライベートやサトミの悪口を好きに言ってもこちらは感知しない。」


ジャッジが一つ固定して見せて、皆にやり方を説明する。

数が3つしか無いので、持ち回りだ。長距離のデリー行きと3局周りで付けることになった。


「これ、何に使うんだ?景色くらいしか撮れないと思うぜ?」


リッターが渋い顔で付き合いきれねえとぼやく。

サトミが腕組んで、うーんと考えた。


「そうだなあ、その脱走した奴が、盗賊に対しても関わっていたらと、俺はそう考えるんだ。

何かあったことは、全部記録に残しておきたい。

アタッカーは一般人だから、もし関わっていたら、何かあったとき賠償金も取れるし、軍から補償も出るかもしれない。

マスコミに流したい時は、個人が特定されないようにする。」


補償と聞いて、ガイドがなるほどとうなずいた。


「考えすぎだと思うがなあ。だが、確かに記録を残すのはいいことかもしれん。

保険だというならいいだろう。」


ガイドの言葉で、皆が納得に傾く。


「王子の頼みならノープロブレムよ。これ、ちょっと安心かもね、兄ちゃん。」


「なんで俺が安心なんだよ、お前がだろ?セシリー、なくすなよ?」


「めっちゃ二日酔いばっかの兄ちゃんの方が忘れそうじゃん?」


サトミが立ち上がって、皆に向かってパンと手を合わせた。


「俺としても、巻き込んで申し訳ない。

ガイドたちに何かあっちゃ困るし。協力頼む!」


少し、サトミの表情が変わったように思う、ガイドがじっと見て呟いた。


「お前、その脱走した奴に何でそこまで恨まれてんだ?」


傍らで、ピーパーがジロリとガイドを睨む。ここに詰めるジャッジが、小さく首を振った。

サトミが目を閉じ、ふうっと息を吐く。


「そうだな、俺は……みんなの負担になるなら」


「出てけって言ってんじゃない、間違えるな。

お前はここのアタッカーだ。……わかった、理由は聞かない。お前に任せる。」


「すまない、ごめんガイド。」


「なに、気にするな」


うつむくサトミの頭を、立ち上がるとぐしゃぐしゃと撫で、そして一緒に座り、肩に手を回してポンポン叩く。

大丈夫だ、お前はここのアタッカーだと、引き戻すように肩を抱いた。


その様子を見て、ピーパーが複雑な気持ちになる。

とは言え、部隊で見たことも無いような、隊長の普通の子供っぽい顔が見られるのは貴重だと思う。


隊長の、郵便局での立場を悪くするなとは、ボスとデッドからの指令だ。

郵便局にいるから、ボスも黙って安心出来るのだ。

それを重々知って、ジャッジとアントもここに来て穏やかに接するように任務を受けている。

穏やかにガイドを見上げて笑う隊長に、ピーパーがホッとして一式を置いて敬礼すると事務所を出て行った。


「いい……笑顔だ。あれが、今の隊長にはきっと必要なんだろう……」


キャンプ地に来るサトミは、見事に切り替えをしている。

自分たちは重荷になっているのかと思っていたが、一緒にメシ食うときも相変わらずだったし、もしかしたら重荷では無く、ちゃんと仲間と思って貰えているのだろう。

車に乗り込もうとしたとき、ピピッとヘッドホンにジョークから通信が来た。


「ピーパーだ」


『ジャッジはどうした、ヘッドホン外すなと言え。

今のとこ、目標はまだデリーで動きは見えないが動きがあった、

部下を使ってロンドのアタッカーに懸賞金かけた。

一応、デリー側の一般(兵)とアタッカーにも警告を連絡した。護衛ポイントを増やすが、警戒を頼むと伝えろ。』


「了解した、あージャッジは今カメラの説明で、メットをかぶって見せてたとき外してた。

すまない。注意しとく。」


『隊長には今夜ミーティング予定と伝達』


「わかった」


ピーパーが急いでエクスプレスの事務所に戻る。

ドアを開けたサトミに目配せると、鋭い目で外に出ろとアゴで指された。

後ろから、ジャッジとアントも気配を感じて続く。

事務所の外で、下を向いて頭をくっつけヒソヒソ言葉を交わした。


「奴ら、アタッカーに懸賞金かけてきました。

どうします?業務の一時停止をと思われるのでしたら、上から別件で圧力かけることも出来ますぜ?」


「いや、地雷強盗の時も意地でやり通したこいつらに、そんな圧力はいらない」


「中、言わない方が良くねえですかい?嬢ちゃんたちが怖がって騒いだら大事になると思いますが」


「あいつらそんな可愛らしい女じゃねえ、黙っている方が信用を失う」


「「 イエス 」」


頭を上げ、皆がサトミの顔を見て小さくうなずく。

サトミがドアの鍵を解錠し、ドアを開けるとアタッカーのみんなが待っていた。


「さあ、決めたかサトミ。俺達に話すか話さねえか」


ガイドたちがニイッと笑う。


「話すさ、俺はアタッカーの一人だからな。」


親指を立てるサトミに、皆が親指を立てて応える。

ふうと一つ息を吐き、息を呑むみんなに声を上げた。


「ロンドのアタッカー諸君、君たちに懸賞金がかかった」

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