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13、マフィアの反撃

夕方、男が2人、3区で一番大きいホテルに入って行く。

苦虫をかみつぶした顔で2人エレベーターに乗り込み、3階に着くとエレベーターホールでひっそりと壁にもたれて立っている仲間と、顔を見合わせ首を振る。

やがて廊下を進み一つの部屋の前に立ち、大きく息を吐きノックした。


ドアが少し開き、仲間の一人が確認するとチェーンを外す。

銃を構えたまま二人を入れてまたチェーンを止め、カラビナでチェーンを短くした。

二人の冴えない表情を見ながら、イレーヌがガレットの横に立つ。

2人が指先まできれいにそろえ、緊張した面持ちで敬礼した。


「レーヌ、巻かれました、申し訳ありません。」


「何故巻かれた?目標は把握できたのかい?」


「目標は情報通りでした、確かに黒尽くめで背が低くて棒を持った奴です。

それが、ボディガードと思ったらひでえ奴で。」


肩をひょいと上げて首を振る。


「どういう事だ?」


「この辺でシマをはってるらしいマフィアのアジトに入ったんですが、派手な銃声がしたと思って奴らが去った後を見に行ったら全滅で。

ありゃあ何でしょうねえ、用心棒と言うより殺し屋ですかね。」


「は〜ん、で?あとは追ったのかい?」


「それが妙に足の速い奴で、歩いているのか走っているのかわからねえスピードなんですよ。

パブに入られて、それっきりです。」


「パブの中は?」


「いませんでした。裏口も無かったんですが。」


「そう言う奴は逃げ道を用意している物さ。

お前たち、付けられたね?」


「え?」


ガチャッとドアの鍵が開いた。

マスターキーだろう、恐らくホテル内に手引きした奴がいる。

奴らが来たという事は、外に居た仲間はすでに死んでいるという事だ。

短くしたチェーンが突っ張り、ワイヤーカッターが横から伸びる。


「ダーリン外!」


イレーヌが荷物を適当にカバンにぶち込みながら、ガレットに声を上げる。


「おう!」


ガレットが、腰の高さのはめ殺しの窓を銃で撃ち、椅子をぶつけて割った。

外に顔を出すと、下から数発弾が飛んで来る。


「イレーヌ!外にも居やがる!逃げ場がねえ!!」


舌を打ち下を見ると、仲間らしい男たちがこちらに銃を構えている。

イレーヌを指さすと、弾が無数に飛んできた。


「ダーリン、逃げ道ってのは作る物よ。」


イレーヌがアサルトライフルを掴み、窓枠に残ったガラスを銃床で払うと下へ向けて撃ちまくる。


タタタタタタタタッ!!タタタタタタタタッ!!


通行人など構っては居られない。

逃げ惑う人が倒れ、生きてる奴は視界から消えた。


「行くわよ、ダーリン」


銃を肩にぶら下げ、バッグとガレットの腰のベルトを掴む。



ここは3階だ。

部下たちはバッグからロープを取り出し、サッと窓枠に縛り、一方をカラビナでベルトに引っかけると敬礼した。

運が悪ければ死ぬだけだ。


「では!」


「お前たち、生きるんだよ!」


「イエス!レーヌ!」


イレーヌが窓から飛び降りた瞬間、チェーンが切られ爆発物が投げ込まれた。


「うおおおお!!このくそおっ!」


3人の部下たちも、ロープを掴み、窓を飛び出す。



ドーーーーーーンッ!!



凄まじい爆発に、部下たちのロープが揺さぶられ、そしてロープを結んでいた窓が吹き飛んで大きく跳ね飛ばされる。

イレーヌは着地前にカバンから手を離し、ガレットの身体を近くのトラックの幌の上に投げた。

投げた拍子に反動で軌道が変わり、車のボンネットに受け身で落ちる。

ボンネットは大きくへこんでクッション代わりとなり、イレーヌは跳ね返って宙でクルリと舞った。


「ダーリン!」


着地と同時にバッグの元に走り、拾ってガレットの元に走る。

バラバラとガラスが降って来て、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。

イレーヌは落ちていた路上の出店のテントを拾い、それで頭上を覆いながら走った。


「イレーヌ!」


振ってくる瓦礫から頭を守りながら、ガレットが腰のナイフで幌を破って荷台に降りる。


「奴ら、仲間だ!生きてるぞ!」


爆弾投げ込んだ奴の仲間だろう。イレーヌたちの姿を見て、新たにやって来た車の中から口々に叫んで撃ってくる。


タタタタンッ!!タタタタンッ!!


「オヤジのかたきだ!」

「ファミリーの結束を見せてやる!」


「はあっ??かたき??」


何故か自分たちは、マフィアを殺した犯人になっている。

恐らく、黒尽くめの女が出た後に見に行った部下が、現場から出る姿を見られたのだ。


「レーヌ!」


一緒に飛び降りた部下が2人、車の影に隠れながらこちらへ、1人は足を引きずりながら走ってきた。


「くっそ!!何でこんな事になってんのよう!」


文句はあとだ。トラックの影に隠れ、肩に提げていた銃を握る。

足を引きずった1人が車の影を出た瞬間、弾が当たって倒れた。


「ジー!くそっ!ケイ!早く!」

残った1人が懸命に走る。


「あたしの部下を殺した奴は、死んで詫びな!」


アサルトライフルを構え、車に向けて撃つ。


タタタタタタタタンッ!!


マフィアは慌てて車をバックさせるが、イレーヌは構わず撃つ。

やがて運転手が死んでアクセルを踏んだのか、街灯にぶつかった。


「レーヌ!あいつらの仲間が来ます!行きやしょう!」


「わかった。ケイ、あのトラックに乗って!荷台にダーリンがいるわ。」


「イエス!レーヌ!…エスが!生きてますぜ、あの緑のゴミ置き場の後ろ!」


見ると、傍らの街路樹がクッションになったのか、周辺には沢山の枝を落として大きなダストボックスに隠れて手を挙げている。

だが場所が悪い、敵の来る道の真横だ。


「エス!動くな!待ってろ!」


イレーヌが走り、荷台にガレットを載せたトラックの運転席のドアを開けた。

なんと、ポカンとして青年が座っている。


「え?」


「いい車に乗ってるわね。もらってあげるわ!」


一発殴って、白目をむいた彼を引きずり下ろし乗り込んだ。


「行くわ!ケイ、ダーリン捕まって!エス拾っていく!」


ガレットたちに聞こえたかどうかわからない。

ポリスのサイレンがいくつも鳴り響き、どんどん近づいてくる。

イレーヌはバックミラーで赤いライトを見ると舌打ち、トラックを発進させUターンする。


いきなり向かってくるトラックに、増援のマフィアが銃弾を撃ち込む。

フロントガラスが見る間に穴だらけになり、イレーヌがハンドルを振って弾を避けた。

ダストボックスに車を寄せ、車のドアを盾にエスの襟首を掴むと助手席に放り込む。


「申し訳……!」


「よく生きていた!上出来だ!」


アクセルを思い切り踏み込んだ。

離れた場所で、車で戻ってくるアンソニーと、残った部下のティーを見つけた。

クラクションを鳴らすと、気がついたのかすれ違ったあと方向転換して戻ってくる。

郊外で車を止めると、降りてきたイレーヌにアンソニーが駆けつけた。


「何があったんだ?ジーとゼットは?どうした?」


「死んだわ」


「えっ?何で?誰にやられた?」


「マフィアよ!知らないわよ!」


ガレットも、イレーヌも皆、深い傷は無いがガラスや破片で切って血だらけだ。

ガレットが荷台から降りてきて、膝に手を置きうなだれる。


「とにかく、今日は一旦町を出よう。

郊外の、車で入れるモーテルに。道々何があったのか話す。」


「わかった、わかったよ。イレーヌ、荷物はこれだけ?よく持ち出せたな。

トランクに入れるよ。乗って、とにかく出よう。後ろの席に水と食料もある。

デカい方の車で出て正解だったな」


アンソニーの落ち着いた声で4人が大きく息をつき、手を上げた。

振り返れば、サイレンがけたたましく鳴ってひどい騒ぎになっている。

銃声も聞こえて、恐らくマフィアとポリスが撃ち合っているのだろう。


「車をもう1台手に入れよう。あと……オヤジに言って、応援を回して貰う。」


「ええ、でも期待はしてないわ。」


イレーヌが、髪をかき上げると沢山の瓦礫片が絡まっている。

ため息をついて顔を撫で、ぬるりと手に血が付き眉をひそめた。

大きく息を吸って静かに細く吐く。

死んだ部下の姿が思い浮かび、こんな事で死にたくは無かったという声が聞こえそうな気がした。


ふと、ガレットに目をやる。

あの時国に帰っていればと言う気持ちを覆い隠すように、首を振って『棒を持ったガキ』に思いをはせる。


「そのガキ、私が殺るわ」


イレーヌの言葉に、ガレットが満面に笑いを浮かべ彼女の肩を叩いた。

アルファベットの名前の男たちはイレーヌの部下です。

ガレットの部下がイレーヌとアンソニーで、更にその下になります。

あとはみんな戦死していますが、ガレットの怨みはそんな物より自分が受けた屈辱への怨みが大きいです。

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