馬車の中。
馬車が走り出したタイミングでルドルフは脚を組んで微笑んだ。
「それで私にバレないに様にとは何のことかな?」
(さすが殿下、逃げられない状況を作ってから本題とは)
ゲイリーは横目でルドルフを見た。
漂う品格は王族そのものだ。
「ゲッ・・・ゲイリーの事だよ!!結局バレてホテル暮らしになったけどな!」
ジュリオは我ながら結構良い切替しだったと冷や汗をかきながら思う。
流石にルドルフの国の女性に声をかけて振られたにも関わらず追い回しているとは知られたくない。
しかもあの潔癖なルドルフだ。
軽蔑されることはわかりきっていた。
「そうだ!!ゲイリーと知り合ったのはなんでだよ?」
話を切り替えてしまおうと新たな話題をふると、ルドルフとゲイリーは微笑み合った。
「伯爵はね、今日から私と妻の家庭教師になったんだ」
「はぁ??」
びっくりして立ち上がるジュリオはまた天井に頭をぶつけてしまい、その痛みで頭を抱え込む。
その様子を見ながらもルドルフは見ていないかのような口調で続けた。
「今日朝からお会いする予定だったのに、君が突然来るからご挨拶が遅れたんだよ」
「それは・・・悪かったけど・・・つーかゲイリー!!お前なんで言ってくれなかったんだよ、そんな大事な事」
「侯爵の紹介だったんですが、実際に認めて頂けるかは今日のご挨拶にかかっていたんですよ。決まってもいないのに貴方に言うのはどうかと。しかしこうして認めて頂いて嬉しいです」
頬を染めて言うゲイリーにジュリオは悪態をついた。
「俺がルドルフに会わせてやる予定だったのに」
肩を落とすジュリオにルドルフは微笑を浮かべた。
どうやら本当にゲイリーを自分の手でルドルフに会わせたかったらしい。
「残念だったね。ヒドルストン侯爵のほうが一枚上手だったようだ。ところで・・・君はいつになったらリリー語覚えるの?」
「まあ、そのうち・・・」
ばつが悪そうに俯くジュリオにルドルフは脚を組み替えて深く息をはいた。
「正直言ってしまうと民はリリー国を誇りに思っている者が多い。だから他国の言語はリリー国を除いた大国と呼ばれている2か国語しか学んでいない者がばかりだ。君の母国語だと買い物も難しいと思うよ」
ふてくされたように頬を膨らましてゲイリーはシートに寄りかかった。
「さっき一緒にいたやつはリリー語話せるから大丈夫・・・ってプリムラ語話すことができる奴、あまりいないのか?」
「うん、そうだね。王族・・・それから陛下の側近は学んでいるはずだよ。それ以外だとアリアの兄とここにいる伯爵ぐらいだと思う。学園のカリキュラムにもプリムラ語は組み込んでいないからね。まあ、好きで学んでいる方もいるかもしれないけれど」
(あれさっきの女・・・普通に喋れてたよな。)
嫌な汗がジュリオの背中をつたう。
「へぇ・・・じゃあ女で話せるのって」
「うん、王族である母と妻くらいかな」
ジュリオはごくりと唾を飲み込んだ。




