悪役令嬢の周囲が麗しすぎる。
隣国の王子ってあのゲームでも取り上げられていた・・・。
納得したように頷く私にルドルフは首を横に振る。
「いやアリアが想像している方じゃなくてその弟だよ」
確かにゲームの隣国の王子は親切な人だとルドルフ王子はヒロインに言っていたっけ。
それにスチルではルドルフ王子より大きかった。
年上だったらしっくりくる。
「伯爵はなぜ?彼と?」
「隣国の旅行中にお会いしてから、何故か懐かれまして」
「・・・あっ!!」
私の声に一斉にこちらを見る。
思い出したくなかったけれど思い出してしまったので私は恐る恐る打ち明けた。
「・・・あの人を投げ飛ばしてますけど大丈夫でしょうか?」
ルドルフとゲイリーは似たような笑みを浮かべて言った。
「良いんじゃないかな」
「良いと思いますよ」
えっ?!
王子ですよね?
他国の!?
「流石に女の子に絡んで断られた挙句投げ飛ばされたとは言えないでしょ」
その言葉だと私が投げ飛ばしたみたいなんですが!
「そうですね、恥さらしですね」
意外と毒舌ですね、ゲイリーさん。
「大丈夫、何かあったら僕が対応するよ。ちゃんと夫がいるって断ったのに絡んだあいつが悪いから。・・・よりによって僕の妻に手を出すなんてどうしてくれようかな」
ルドルフが握った手を口元に持っていき、思案顔をした。
ルドルフさん、見た目は麗しいけれど言葉が乱雑になってますよ。
「私の可愛い生徒に・・・殿下、私にできる事がございましたら何なりとお申し付けください。全力で取り組ませていただきます」
ゲイリーさんが殺る気・・・いや、やる気なんですがっ。
「ルドルフ様、私も!」
アンドリューが手を上げてルドルフに駆け寄る。
アンドリューまで!
「午後に王都を案内する事になっているんだ」
「私もお供しても?」
「・・・大歓迎ですよ。アンドリューはアリアをよろしくね」
「かしこまりました」
ルドルフとゲイリーが2人揃って王都に出かけるなんてどんなイベント?!
私が案内されたいんですけど!!
頬を膨らましている事に気づいたルドルフが私の頬をつついた。
「ごめんね、今度ちゃんとデートしようね?」
「はい!」
嬉しくてルドルフの腕に抱きつくと頭を撫でてくれた。
これだけで今日の怖かった記憶が薄れていくよ。
ゲイリーとアンドリューが聖母のような優しい表情で私達を見ていた。
・・・あれ?
もしかしてこの中で私が一番女性らしさが足りなくない?
私は一瞬そんなことを思ったけれど気付かなかったふりをした。
攻略対象が美しいのは当たり前だもんね。
その後昼食をすませてから本当にルドルフとゲイリーは出かけてしまった。
私といえば予定通りにお父様の訓練を受ける為、訓練場にアンドリューと向かう。
訓練場に着いてお父様に声をかけようと口を開いた瞬間にアンドリューがお父様の前に立ち、勢いよく頭を下げた。
「私にも教えていただけないでしょうか。・・・アリア様を守りたいのです!!」
今日できっと私はアンドリューにトラウマ植え付けちゃったんだ。
私が至らなかったばっかりにアンドリューを傷つけた。
「俺も、教えて師匠」
いつの間にかアダムが姿を表してアンドリューの横に立っていた。
アダムの言葉に顔を上げたアンドリューが大きく目を見開いた。
「貴方は・・・お久しぶりです。私がルドルフ様専任の執事になった日以来ですね」
「うん」
アンドリューはアダムの耳元に唇を寄せて何かを囁いていた。
こう見てみると美少年2人がひそひそ話すとか、麗しすぎだ。
今日絡んできた王子に言ってやりたい。
せめて中身を磨けよと。
2人の様子を見ていたお父様は手を叩いてにこりと笑った。
「感動の再会はそこまで。いいかい?私は厳しいよ」
「はい!」
「知ってる」
お父様は満足気に頷いて私を見たので、私は駆け寄ってみんなの目を見て言った。
「私も負けません!」
私だって自分の身は自分で守れるようになりたい。
ルドルフの横に立つのだから。
あっ・・・でも・・・とりあえず、男性のあしらい方をゲイリーに教わろうかな。
淑女らしくって難しいよね。
アンドリューは才能があるらしく、お父様が何度も感嘆の声を上げた。
私よりコントロールが上手で、もう既に追い越されそうな勢いだ。
「姫の魔力は強くて大きい。だからコントロールが大事」
そっと私の側に近づいてきたアダムが呟いた。
私がアンドリューに追い越されることを気にしていると思ったんだろう。
「アダムは優しいのですね」
私は微笑んで言うと、表情はないけれど顔にほんのり赤みがさした。
照れているのかも。
アダムの優しさと可愛さにほっこりとする。
アンドリューが必死になって学んでいる姿を見て、私もせめて自分の身は自分で守れるくらいにはなろうと再び心に決めた。




