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急な来訪者。




「久しぶり!ルドルフ!!」

「やあ、よく来てくれたね」



謁見の間に訪れて爽やかに微笑むルドルフに艶やかな髪を靡かせながら少年は駆け寄り抱きついた。

そして耳元に唇をよせ、ルドルフにしか聞こえないように言った。



「本当は忍び込もうとしたんだけど、それは良くないって止められたんだ」

「それは、賢明な判断だね。止めてくれた人に感謝したほうが良いよ」



ルドルフから離れて少年が周囲に聞こえるように大きな声を上げた。



「ねぇ、僕はルドルフと2人きりで話したいなぁ」

「・・・ランス、部屋を用意してくれる?」

「かしこまりました」



謁見の間から少し離れた部屋に案内をし、2人きりになると少年はタイを緩めてどかっとソファーに座った。



「ただルドルフに会いたかっただけなのに、まさかウィリアム王まで出てくるなんてな」

「相変わらずの猫被りだね、ジュリオ。隣国の王子が宮殿に顔を出したんだ。さすがに陛下も無視はできないでしょ」



優雅に紅茶を口にしながらルドルフがジュリオをみる。

青みがかった髪は彼の国では当たり前の色だが、この国では珍しい。

人とすれ違うたびに皆が彼を見ていた。



「俺が何をしたって自国ならみんな許してくれるのに。ここは本当に大国って感じで息苦しくてしょうがない」

「いつまでいるの?」

「まだ決めてないけど当分居ようと思う。お前んちと違ってうちは小国で、しかも俺は四男。長く国を出ていたとしても文句は言われないから安心しろよ」



相変わらずの自分の評価の低さにルドルフはため息をついた。

ただ甘やかされているだけなのに本人は全くわかっていない。

自分に興味がないと勘違いしている。


(早く帰ってくれないかなぁ。せっかくアリアと一緒に講義を受けられるのに)



彼の奔放さは羨ましくもあるが、少し面倒である。

約束もしないで勝手に宮殿に訪問するところはどうにかしてほしい部分だった。



「お前が来ないから、来てやったんだ。そうそう姉上が落ち込んでいたぜ、お前の婚約聞いて」

「そう、それは悪かったね」



まったく悪いと思っていない口調で言われてジュリオは笑った。



「大丈夫、姉上はルドルフが好きだけど相手にされていない事わかっているから」



ならば言わなければ良いのに、と思いながらルドルフはティーカップを置いた。



「今回はどうしたんだい?特に君が惹かれる様な祭りなど催してはいないけれど」

「お前、俺の事祭り好きだと思っていたのかよ」

「えっ?違うの?」

「いや、好きだけどさあ・・・理由がなければ来ちゃダメなのかよ」



しおらしくなったジュリオにルドルフは容赦なく畳み掛ける。



「一国の王子が理由なく他国に入国するのはどうかと思うよ。いくら友好国だとしてもね。君のために何人が動くと思うの?君はもう10歳なんだから周囲への配慮を考えるべきだと思うよ」



自国では末っ子で可愛がられていた為、自分を叱ってくれる人などいなかった。

唯一叱ってくれた人は、他国の同じ王子であるルドルフだけで、それだけでもジュリオがルドルフに執着するには充分な理由だった。



「まだ10歳だろ?」

「まだ10歳でいたいなら親の庇護下で暮らすんだ。もう10歳でいたいなら責任のある行動をするんだね」


ルドルフの国は大国だが貧富の差はあまりない。

だが、ジュリオの国は貧富の差が激しく、10歳で既に働いて生活費に充てている者もいると聞く。


「・・・わかったよ」

「わかったなら良いよ、それじゃあ僕は行くからね」


ルドルフが立ち上がると、ジュリオがルドルフの服の袖をつかんだ。


「ちょっと待てよ、王都を案内してくれないのか?」

「ごめん、これから勉強会なんだ」

「はあ?お前まだ勉強しているのか?俺の兄上よりも優れているといわれたのに?」

「そんなこと口にするものじゃないよ」


ルドルフはジュリオのつかんだ手を取り、服から離す。



ジュリオの兄は自国では天才と言われていた。

ルドルフが2年前に公務で訪れるまでは。


はじめは兄を傷つけたルドルフが嫌いだった。

でも今はその感情が懐かしく思える。



「じゃあ、お前の婚約者に会わせろよ。親友の婚約者様にはご挨拶しなくちゃな」

「誰が親友?」

「俺がお前の」



指を挿されて、ため息を漏らす。

「嫌だよ、君みたいな輩には会わせる気ないから」

「大丈夫だって!お前のよく言う、猫被りな状態で会うから・・・な?」


両手を合わせて拝む様に言われるが表情を変えずにルドルフは言った。


「せっかく来てくれたのに申し訳ないけれど、会わせる気ないから・・・ところで君、今どこのホテルに泊まっているの?』

「ホテルじゃない。知人の家」

「そう、迷惑をかけないようにね。それから・・・午後からだったら付き合っても良いよ」


ジュリオが立ち上がってルドルフに抱きつく。

「流石、親友!」

「親友じゃないから」

ルドルフは縋りつかれたまま扉を開けて、ランスに声をかけて抱きつくジュリオを剥がしでもらい、そのまま婚約者の元へ向かった。


(どうにかして欲しいな。あれは育て方の問題な気がする・・・)


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