親馬鹿はうちだけではないようです。
「お久しぶりです。アリア嬢」
応接室にアンドリューと向かうとさわやかに笑うゲイリーの横には宰相のヒドルストン侯爵がいた。
そう、フェリシティちゃんのお父様こと、フェリシティ父だ。
「ヒドルストン侯爵、パーティぶりですね。先日はお越しいただきありがとうございました」
私が淑女の礼をとると、ヒドルストン侯爵は嬉しそうに微笑んだ。
「いや、一言話しただけなのに私のことを覚えてくださっているとは・・・さすが殿下が選ばれた方ですね」
なにこれ。
めちゃくちゃ人の良いおっさん・・・いやおじ様に変化されていますけれど。
初めて会った時のギラギラした瞳はどうしたの?
品定めしてましたよね。
私は内心驚きながらも微笑み返す。
あれ?ゲイリーもなんかすごくびっくりした顔していないか?
やっぱりおかしいよね?侯爵やばいよね?
私がゲイリーに目で合図を送るとなぜかふんわりと微笑んできた。
あれは絶対に私の意図をわかっていない顔だ。
まあ、いいや後で聞こうか。
「今日は私の紹介でアリア嬢の家庭教師となったゲイリー・パティンソン伯爵をご紹介いたします」
ゲイリーが一歩前に出て「はじめまして、ゲイリー・パティンソンと申します」とあいさつをした。
なるほど、初対面設定ですね。
「はじめまして、アリア・バーキンと申します。御高名な伯爵に教えを賜る機会をいただき光栄です」
褒められて頬を染めるゲイリーを見て私は首を傾げる。
純粋すぎじゃないか。
大丈夫なのか?
貴族の世界って騙し合いって小説に載っていたけれど・・・ゲイリーの今後が心配だよ。
「アリア嬢、実は私の娘のフェリシティがアリア嬢とお会いしたいと。ぜひ友人になってもらえないでしょうか」
もしや、今日はゲイリーの紹介ではなくて、娘を紹介したくて来たのではないかフェリシティ父。
普段だったらやんわり機会があればなんて言って済ますけれど、今の私には下心がありますからね。
国の発展のためにヒドルストン侯爵とは仲良くしておかなくてはならない。
「はい。ぜひとも。ルーク様と一緒にいらしてください。ルーク様とは殿下と一緒にお食事をさせていただいたことはあるのですが、フェリシティ様はまだお会いしたこともないので」
その言葉に侯爵は瞳を輝かせる。
「それでは早速日程を組ませていただきます。陛下か殿下を通してご連絡を差し上げますね」
侯爵は人に媚びへつらう人ではないと聞いている。
つまり純粋に娘に友達ができることが嬉しいのだろう。
私が微笑んで頷くと「それでは私はこのあたりで失礼いたします、伯爵頼みましたよ」と言って部屋を去っていった。
「あんなに柔和な侯爵を見たのは初めてです。アリア様はすごいですね」
ゲイリーがこれまた嬉しそうに言うので慌てて否定をした。
「いえ、正直侯爵とお会いしたのは2度目ですし、たまたまご機嫌だったのではないでしょうか」
「それはないですよ。アリア様のことは本当に女神のようだとおっしゃっていたので」
女神ですと?!ネジをどこかに置いてきたんじゃないのか?
「ご冗談を・・・」
「いえ、侯爵がおっしゃってました。いつかアリア様には何かお返し出来たらと・・・」
そんなにフェリシティちゃんとルークをくっつけたかったんかい。
・・・ってちょっと待って?
フェリシティちゃんから手を回すより、父から攻めたほうが早くない??
私は手をあごの下に添えて考えてみる。
フェリシティちゃんルートとルークルート、父ルート・・・。
やっぱり、父と仲良くなったほうが早い気がする。
回答を導き出して顔を上げると目の前にゲイリーの顔があった。
近い!近いですよ先生!!
「どこか遠くへいってましたね」
「すみません。父から攻めていこうかと・・・」
「姫!!口にしてますよ」
アンドリューの突っ込みにハッとして口元を押さえるとゲイリーが嬉しそうに微笑み、私の頬を両手で包んだ。
逃がさないと言わんばかりに。
「私は侯爵と仲良くさせていただいておりますので、きっとアリア様のお役に立てると思いますよ」
確かに味方は多いほうが良い気がするけれど。
私は気持ちを探るようにゲイリーを見つめた。
するとゲイリーの顔が蒸気した様に赤くなった。
やばい!
色気が増している。
私が金縛りにあったように動けなくなるとゲイリーの顔が近づいてくる。
なんなの?
本当に距離が近いんだけど!
唇が触れ合うか触れ合わないかくらいの距離になった事に耐えきれず、ゲイリーの胸元を押し返した。
この魔性の男、タチが悪すぎる。
家庭教師にして良いと言ってしまった事を今更ながら後悔しそうだ。
でもどうせ後悔するなら・・・。
「先生もお手伝いしてくださいますか?」
「はい、アリア様の為ならばこの身に変えても」
私の決意が大したことのないかの様にあっさりと身を投げ出しました、このイケメン。
なんなの?この忠誠心。
そんなに王室に忠誠を誓っていたっけ。
ゲームがどうだったか思い出せない。
ゲイリーは素早く昨日と同じ唇の端といえるような部分の左右頬に口付けてから私の鼻に自分の鼻をくっつけた。
だから近いよ!!
真っ赤になってしまう私に笑うとやっと頬を解放してくれた。
「それでは、殿下がいらっしゃるまで作戦を練りますか」
ソファーに座り、ヒドルストン家の技術の魅力と今後について話し始めたのだった。




