兄の幸せを願う悪役令嬢です。
「ルイも早く大切な人が見つかると良いね」
ルドルフが独り言のように小声で言った。
多分お兄様には聞こえていないだろう。
確かに・・・いつも私の面倒ばかりみていてご自分の事をおざなりにしていたから。
これからは邪魔をしないでお兄様の恋を応援しなくては。
私が口を開こうとしたその時だった。
「アリア、誕生日プレゼントは何が良い?」
そうだ!私、来月誕生日だ!!
「今までは毎日一緒にいたから何が欲しいか聞かなくてもわかっていたが、今はそうもいかないからな。今回は本人に聞いてみようと思ったんだ」
なんとなく胸を張って言うお兄様が可愛い。
確かに、今までは言わなくても欲しい本を買ってきてくれた。
それと一緒に毎回アクセサリーを付けてくれている。
「そうですね・・・王宮で暮らし始めてから小説を読んでいないので最近の本ならどんとこいですね!」
「アリアが・・・アリアが本を読んでいないだって?!」
立ち上がり何故か頭をかかえて叫び始めた。
「おっ・・・お兄様・・・?」
なんだかわからないけれどめちゃくちゃ怖いですお兄様。
確かに今までは満たされたくて小説を読んでいたけれど、ルドルフと出会ってからルドルフで満たされているので無理に小説を読まなくても大丈夫だった気がする。
「はい。毎日勉強やルドルフと一緒にいたら特に本を読まなくても大丈夫になりました」
私が笑って言うとお兄様はソファーに倒れ込んだ。
「アリアが本を・・・」
私がどうして良いのか分からずルドルフに視線を移すとなんとも言えない顔をしていた。
それはそうだ。
普段はきっと真面目に写っているだろう人が、こんなにも表現豊かだとは思わないだろう。
家ではいつもこんな感じだとは言えない。
いや、言ってはいけない気がする。
「・・・自分がいかに恵まれていて幸せなんだということをしみじみ思ったよ」
ルドルフが何か言っていたが聞き取れなくて私が耳を寄せると私の頭を撫でてくれた。
何故、なでなで?
いや私は嬉しいから良いけれど・・・。
そのままお兄様が正気を戻すまで私たちはお菓子を食べながら雑談していた。
「・・・今日はそろそろ帰るよ。また来る」
「お兄様、気をつけて帰ってくださいね」
まだフラフラしているお兄様を支えながら歩いて部屋の外にいる騎士に声をかける。
明らかにびっくりした顔をした騎士がお兄様を支えてくれたので手を離した。
手を振ってお兄様を見送ってから振り返るとルドルフが気落ちした顔をしていた。
そんな顔も勿論美しい。
「なんというか・・・悲しいな」
「何を言っているんですか。あの方は長年お二人の邪魔をしていたんですよ。ツケが回ってきただけです」
アンドリューがよそ行きの表情をしていつの間にか横に立っていた。
「・・・そういうことにしておこうかな」
ルドルフがぽんっと私の頭に手を置くと切なそうに微笑んだ。
どうしよう。
多分私だけが話についていけていない。
とりあえず私は微笑んでなんとなく頷いたのだった。




