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番外編 アンドリューと主②



アリア様を迎えに行くと言ったルドルフ様についていく。


馬車から降りたアリア様は他者とは比べものにならないくらい美しかった。


見惚れた次の瞬間、突然アリア様が倒れた。

近くまで来ていたルドルフ様が瞬時にアリア様を支える。

それからルドルフ様の指示で急いで私はアリア様を抱きかかえ客室まで運んだ。




その間、アリア様はルドルフ様の服の袖をずっと掴んだまま離さなかった。

運ぶ時に離そうとしたがアリア様はギュッと握って離そうとしなかったのだ。





「アリア・・・」

ベッドに眠るアリア様の横に腰掛け、頭を撫でながらルドルフ様が呟く。

見ているだけで痛々しい。

せっかく会えたのに突然倒れてしまうなんて。




「ルドルフ様!アリアは?!」


ドアを勢いよく開けてルイ様が入ってくる。

騎士が案内したのだろう。

ノックもせずに入ったルイ様を見て後に控えていた騎士は困り顔をしていた。



「アリア!!」

アリア様に気付いて涙目でベッドに近づいたルイ様にルドルフ様は視線を移した。



「今医者を呼んでいる。すぐ来るから・・・ルイ、僕の代わりに茶会を仕切ってくれない?」

「はい?アリアを連れて帰りますよ!」

「医者に見せてからの方が良いでしょ?」

「それではアリアについていたいので欠席します」



ルイ様の勢いはすぐ様アリア様を連れ出すくらいだった。

原因もわからないのに動かすことは危険だ。

それに・・・


「ルイ様・・・ルドルフ様は動けないのです」

「は?」

「アリア様がルドルフ様を離さないのですよ」



ブランケットを上げてアリア様がルドルフ様の袖を掴んでいる所を見せるとルイ様は顔を歪ませた。


「そんなの離せば・・・って・・・あれ?」


どんなに引っ張ってもアリア様は離さない。

まるで逃がさないと言わんばかりだ。


「ルイ・・・アリア嬢が可哀想だよ?」


ルドルフ様が左手でルイ様の手を制してから愛おしそうにアリア様の手を撫でた。



「・・・アリアは・・・アリアは私と殿下を勘違いしているだけです!アリアはお兄様っこなんで!」



ルイ様のこんな取り乱した姿を初めて見る。

いつも澄ました顔をしたつまらない少年だと思っていたのに。



「・・・わかりました。さっさと終わらせてきますよ。茶会なんて」

「ありがとう、ルイ。アリア嬢の様子は逐一報告させるから」



ルイ様がバタンと音を立てて部屋を出て行く。

ため息をついて振り返るとルドルフ様がアリア様に必死に話しかけていた。


「アリア・・・大好きだよ。早く目を覚まして笑顔を見せて」





医師が到着して診察するも健康そのもので悪いところは全くなく、今はただ眠っているだけでそのうち目を覚ますだろうと言った。

医者が出て行くと、ルドルフ様はそっとアリア様の手に触れた。



「アリアの手を握りたいんだ。だから一回離して良い?」


そう言ってアリア様の手を撫でてから自分の袖から手を離すように指先に触れるとあっさりと手を離した。





「・・・あんなに離さなかったのに」


ルドルフ様がアリア様の手を両手で握りしめてから私を見上げた瞬間だった。






「大好き・・・ルドルフ王子」



「えっ?!」


アリア様の言葉に2人して一斉に振り向く。

今、アリア様は・・・。




「ルドルフ様、私は席を外しますね」


ルドルフ様がアリア様を見つめながら頷くのを確認して部屋を出る。



今の私には『乙女』の情報が足りなさすぎる。

色々と準備が必要かもしれない。


私は急いで父の元に向かう。


「ルドルフ様、アリア様を頼みましたよ」


私の呟きは外で茶会を楽しむ御令嬢方の声でかき消された。





この日から主のイチャイチャぶりに耐える日々が続くとはこの時の私は想像もしていなかった。




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