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悪役令嬢には敵が多すぎる。



私とルドルフ、両親で準備を待っていると既に人が入ってきているのかざわざわとしている。



「バーキン家の御令嬢、一度もお見かけしたことありませんわ」

「私もですわ。一体どうやって殿下のお心を掴んだのかしら」

「バーキン家当主はあの方ですもの、魔術でも使ったんじゃなくて?」





あっ・・・雑音がする。

ここもそうだよね。

人間の本質は変わらない。




「アリア?」


ルドルフが眉を下げて私の顔を覗きこむ。

これは心配している顔だ。

私は安心させるように微笑んでルドルフの頬に口付けた。



「ルドルフへの愛は誰にも負けません!」

「アリア!!」



ルドルフが私を持ち上げるくらいの勢いで強く抱きしめた。

嬉しいけど、苦しいよ。

それを見ながらお父様が悲しげな顔をしながらもそのまま会場へ入っていく。

先にお父様達、次に私達が出ることになっていた。



「行くよ、アリア。・・・初め以外は僕を見ていればいいから」

「えっ?」



私はルドルフのエスコートで流れるように会場に入った。


一瞬、静かになった会場。

静かすぎて私の心臓の音が聞こえていないだろうか。


「アリア?」


ルドルフに、声を掛けられて顔を上げるといつものように甘く微笑んで、唇に触れるだけのキスをした。


「ルドルフ・・・?!」

両手を口元にあててルドルフを見つめる。

身体中の血液の巡りが良くなる。

キスをするなんて聞いていなかったし、こんな大勢の前でなんて想定していなかった。


静かだった会場が一瞬にして騒つく。

ルドルフは嬉しそうに私を見つめて、私の頬を撫でた。


私が呆然としてルドルフを見つめていると、国王夫妻が現れる。

皆の視線が国王夫妻に注がれた事に安心して息をついたはずだった。

しかし私の精神はさっきよりも削られる事となった。

2人は私を挟んで立つと左右の頬にチュッと音を立ててキスをしたからだ。

急なイベント?!に倒れそうになる私をルドルフが背後から抱きしめて支えてくれた。



私の頭にルドルフの顎が乗っている。

まだ10歳なのに私より頭一個大きいってどういうこと?

女の子の方が成長早いんじゃなかったっけ?

あれ?それは身体的じゃなくて精神的だったっけ?


緊張と想定外の事が起こりすぎて、関係ないことまで気になり始めた私は泣きそうになる。

色々いっぱいいっぱいになって顔を上げてルドルフを見るとくすりと笑って鼻先に口付けられた。


王家スキンシップ多すぎ!

真っ赤になっている私をよそにルドルフが耳元で「ほら、前を見て」と注意をされて私は言われた通り前をみた。


国王夫妻は振り返って私達を見て微笑んだ後、来客に向かって言った。



「ルドルフとアリアの為に集まってくれてありがとう。ルドルフの誕生日にルドルフのアリアを紹介できることを嬉しく思う」



お義父様に促されて淑女の礼をすると、静まり返った。


顔には出さないけれど、私は実は困っていた。

全体を見回してそれぞれの表情を見る。

だれを見ても全く持って受け入れられている気がしない。

明らかに驚いた表情をしている人もいるけれど、殆どが作られた笑みを浮かべる人たちに見える。





ルドルフが私の背中を撫でてくれたので、私は顔を上げた。

いつものとろけるような表情で私を見てくれる。





・・・そうだ。

私はルドルフとの未来の為に頑張ると決めたんだ。

その為にこの1ヶ月ルドルフから学んで、貴族名鑑を頭に叩き込んだ。



息をはき、背筋を伸ばしてルドルフが差し出した手に自分の手を乗せる。

ハッとした表情を見せるもすぐ様、ルドルフは微笑んだ。

「・・・流石僕のアリアだね」

耳元で囁かれた言葉に自然と自信が湧き上がる。

そう、私は誰にも負けるわけにはいかない。

今日はルドルフを誰にも渡さないとアピールする為に来たのだから。



音楽が鳴り響き、ルドルフに促されてダンスを踊る。

まるで世界で2人しかいないように演出できるのはルドルフの手腕だと思う。



「僕だけを見て?・・・そう、上手だね」


いつの間にか私の頭の中を支配していた雑音が消える。

そのお陰で純粋にダンスを楽しむ事ができた。


私達が一曲披露した後、他の人達が踊り出す。

私はルドルフにエスコートされ国王夫妻達の元に戻ると、ニコニコと微笑んでいる国王夫妻の横でお兄様がわずかに瞳を揺らした。



それはそうだ。

引きこもりの私が、まさか人前でダンスを披露したんだから。



「アリア、綺麗だったよ」

「ありがとうございます、お兄様。殿下のおかげですわ」


にこりと微笑むと感心したようにお父様が言った。


「本当に見違えたよ。アリア」



私もです、お父様。

お父様は外ではちゃんとした侯爵だったのですね。

家でしか見たことなかったからびっくりだ。


「ありがとうございます・・・あっ」


ルドルフが私の手を握って引き寄せる。

その勢いでルドルフの胸元に倒れ込んだ。

そして、私の頭に口付ける。


「殿下?」

「あれ、もう慣れちゃったのかな。ちゃんと『殿下』になってる」


クスクス笑うルドルフに私は頬を膨らませた。

それをみた国王夫妻が笑っていた。






















「バーキン侯爵め!今までひた隠しにしてきたのはこういう事か?!」

「父上、諦めなよ。あれだけ愛らしければ寵愛を受けるのは当たり前だと思うけど?」

「うちのフェリシティの方が数百倍可愛い」

「はいはい」




どうやら悪役令嬢は敵が多いらしい。

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