2つの記憶。
「大好き・・・ルドルフ王子」
「えっ?」
微かにわたしの手が動いた。
動いたと言うより動かされたというのだろうか。
ルドルフ王子と楽しい時間を過ごしていた私は夢心地で目を覚ます。
倒れた時と同じ甘い香りに包まれてゆっくりとまぶたを開けると目の前にはさっきまで一緒に居たはずのルドルフ王子にそっくりな男の子がわたしの手を握り締めていた。
「大丈夫?」
「・・・はい?」
「なんで疑問形なの?」
男の子がわたしの手を離して口元に手を当てて笑う。
可愛い!凄く可愛い!!
この世界にこんな愛らしい生き物がいるなんて・・・って・・・えっ?!この世界?
わたし、まだ夢でも見てるのだろうか。
「貴方はルドルフ王子の弟さんですか?」
大好きなルドルフ王子の事なのにゲームの設定集、見逃したかなと思って聞くと男の子はわたしの言葉に首を傾げた。
キョトンとした顔がこれがまた愛らしい。
これがゲーム画面越しだったら間違いなくクッションに顔を突っ込んで悶えていただろう。
「えっ!?それじゃあルドルフ王子のお子さん?!」
今度は違う方向に首を傾げた。
可愛いっ!!
うーん。でも他人の空似かも・・・にしては似すぎてるけど。
「僕には子供はまだいないなぁ。・・・アリア嬢は子供欲しいの?」
えっ?今、わたしの事『ありあ』って言った?
わたしはそんな名前じゃなくて、もっと日本人らしい・・・
「アリア嬢?」
急に黙り込んだわたしを心配そうに覗き込む。
「ルイを呼んだほうがよい?今、お茶会を仕切ってるから・・・」
「るい・・・?ルイお兄様・・・」
その名前を聞いた途端に、いきなり頭が割れるように痛くなり、わたしは頭を抱えた。
いきなり呻き声を上げたわたしにびっくりして男の子がベッドに座りわたしを抱き締めた。
「大丈夫?医者は特に問題ないって言っていたけど・・・」
段々男の子の声が遠くに聞こえる。
また様々な映像が飛び交うように私の中に入り込んでくる。
そう・・・わたし・・・私は・・・
「アリア・バーキン・・・」
「アリア嬢?」
顔を上げると何度か絵姿で見た事がある美しく整った顔があった。
彼は・・・
「ルドルフ王子?」
「うん、初めましてだよね。アリア嬢。君のお兄さんの親友のルドルフだよ」
ふんわりと笑った笑顔はスチルの様に美しかった。