可愛い王子に翻弄される。
「それでアリアを今日から王宮に住・・・」
「却下です」
お兄様が間髪入れずに否定する。
「え〜」
「え〜じゃありません。公には婚約者です!」
「王太子妃教育は?」
「通わせます週2日くらい」
「お披露目は3年後なんだよ、間に合わないよ」
「週3日」
「ルイ、王族なめてるの?」
一瞬で空気が冷ややかになる。
9歳のルドルフに12歳のお兄様が押されていた。
「・・・週4日」
「週5日、無理なら王宮住まい。だってアリアも住みたいって言ってくれているのに・・・ね?」
『ね』と言った瞬間、ルドルフが私の肩に頭を乗せた。
しっかりした艶やかな髪に見えるが触れると柔らかい。
そのまま、ゴロゴロと私に頭を擦り付けた。
可愛いっっ!!
本当に可愛いんですけどっ!!
冷ややかだった空気が急に甘い雰囲気に変わる。
いや、それは私とルドルフだけだった。
お兄様は血の気がひいて倒れそうだ。
可愛いルドルフを見ながら子猫を撫でるように頭を撫でてみる。
するとルドルフは嬉しそうにふんわりと微笑んだ。
ほんと、やめてください。
死にそうなんですけど。
こんなに表情豊かとかゲームでは考えられない。
神様ありがとうございます!
ゲームをしていたわたしに言ってあげたい!
ルドルフはこんなに感情豊かで愛らしいと。
「殿下、アリアから離れてください。アリアが王宮に住みたいなんて言うわけありません!アリアは家が大好きなんです!家から出ることを嫌がるくらいなんですからね」
お兄様、恥ずかしいのでルドルフには内緒にして欲しかったのですが・・・。
私が引きこもりなんて知ったらルドルフに嫌われてしまうかもしれないではないですか!
ドキドキしながらルドルフを見た瞬間、私は今まで考えていた事を一切忘れてしまった。
「王宮に住むって言ってくれたよね?」
だって私にすがるように瞳を潤ませ背中を撫でるルドルフが可愛すぎるっ!
私がルドルフに見惚れていると「ねっ、アリア?」ともう一度私に話を振ってきた。
「はい!一時もルドルフを見逃したくありません」
しまった!
本音が出てしまった。
いや、だってずっと想っていたルドルフ王子が、目の前にいるんですよ?
スクールライフでは何回ゲームしたっていつものスチルだよ?
あの時はそれで満足、いや我慢してたけど。
今ならもれなく見たことのない王子見放題だよ?!
お兄様が若干引き気味に私を見るので私が慌てると、ルドルフが声を上げて笑った。
「ねっ?アリアも王宮に住みたいって。ダメかなぁ?」
「・・・どうやってアリアをたらし込んだんですか?純粋なアリアを」
お兄様がプルプルと震えている。
お兄様は勘違いしている。
例え花の記憶がなくてもアリアは純粋じゃない。
なんてったって、小説に囲まれたニートを目指していたのだから。
残念令嬢まっしぐらだ。




