王子VSお兄様VSエクター?!
「失礼しまーす。って本物の王子じゃん!!」
軽っ!軽いよ。エクター!
ゲームでは私の婚約者だったエクターがいた。
今度は初めて見たときのような動悸は起こらなかった。
あれはなんだったんだろう。
ホッとして息を吐くと、私に気づいたお兄様が近づいてきた。
「アリア?なんで殿下の部屋に?!・・・ってそれより大丈夫か?」
確かにまだ9歳とはいえ、異性と部屋で2人きりになることはいけないことだから、お兄様がびっくりするのは当たり前だ。
私は抱きついていた腕を離して起き上がるとルドルフは微笑んでブランケットを整えてくれた。
そしてブランケットの中でそっと私の右手を取って指を絡ませた。
頭からかぶっているのは変わらないけれど、少し視界が開けた気がする。
お兄様は私の前に膝を付きブランケットから出ていた左手をとった。
「はい、お兄様。ご心配おかけして申し訳ございません」
「いいんだよ、アリア」
お兄様が瞳に涙を浮かべて私の左手の甲を撫でる。
「じゃあ、帰ろうか」
その言葉にルドルフが反応して私の手を撫でているお兄様の手を叩いた。
「ルイ、ごめんね。アリアはもうルイのアリアじゃないんだ」
まったく謝っている態度ではない。
口だけだった。
「そこの騎士から聞きました。所詮婚約ですから。いつだって解消できますよ」
「お兄様、私達は・・・」
私の唇に人差し指を当てて、ルドルフは微笑んだ。
言ってはいけないのだろうか。
ルドルフの視線から、部外者のエクターがいるからと察して私は頷いた。
「なんか、めちゃくちゃ仲良しじゃん。俺の婚約者なのに」
エクターの言葉に私とルドルフの目があった。
ルドルフと繋いだ手・・・絡めた指がさらに深く絡まってギュッと握られる。
声を上げたのはお兄様だった。
「ウソをつくな」
「あれ?聞いてない?うちの母親がアリア嬢を見掛けて一目で気に入って、バーキン家に何度も交渉してるって聞いたけど」
いや、それ交渉段階でしょ。
全然違うから。
勘違いだから。
私が今日ルドルフと出会わなければ、ストーリー通りになっていたかもしれない。
一歩間違えたら、あの謎の断罪シーンと結びついていたかもしれないと思うと私は悪寒で身体を震わせた。
エクターの悪役令嬢アリアへの断罪シーン。
客観的な印象だ。当時のわたしは『無いわ、エクター。最低だな』と思った。
それに比べてルドルフ王子は・・・婚約者はいなかったけれどルドルフ王子にすり寄る令嬢が多々いた。
断罪する事はなく、それを優しく嗜めておさめていた。
・・・そんな所が素敵だったんだけど。




